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幸福な蟻地獄<セルフレビュー&裏話>

 この作品は純文学ですが、かなーりセンシティブデリケートな内容を扱ってるので閲覧注意です。(本記事の事ではないですよ?)

 検索エンジン共がカクヨムにある「幸福な蟻地獄」をやたら引っ掛けるせいでAIが「お前の代表作、これだよな!」とか言ってくるので注意書きと内容の解説もかねて先に書いておきます。

 決して代表作じゃないからな?!


小説セルフレビュー

あらすじ

 とある事情で関東南東にある架空の島、南竜島みなみたつじまにやってきた主人公の男子高校生、竜端たつはし悠人ゆうと

 彼はその日、偶然出会った女子中学生5人組と運命の出会いを果たす――。

 はたして彼らを待っているのは破滅か、幸福か。

 ベーストーンはかなり重たい、ヘビーな異色作。

 明るいシーンもあるんですけどね。

見所

 所々で現れる、哲学的な問いかけを楽しんで欲しい作品ですね。

 そして青春期にあるメインキャラ達の心のやりとり。苦悩して葛藤して泣いて笑って、そんな青春群像劇ではあります。

「……そんなに知りたいのかい?
 前にも言った通りさ。
 全く同じ素材、全く同じ構造、全く同じ機能を持った身体で、同じ魂を内包した生命体――そこに、人間との違いはあるのかな?
 起源が違う――それはそうだろう。
 だが、それがどうだというんだろう? 親が違うのと、何が違うんだい?
 人の手が加わったことで人間ではなくなるというなら、人工的な生殖全てが否定される。
 ――果たして、ガラティアを『人間ではない』と断定する根拠はあると思うかい?」

「幸福な蟻地獄」第2章  第32話「ピグマリオン伝説」より

 こんな感じの哲学的問いかけが投げかけられたりします。

 貴方はガラティアを「人間」だと思いますか?
 それとも、「人間ではない」と思いますか?

 この各種の問いかけを自動筆記先生が即興執筆で書き上げていった約30万文字、ご堪能ください。

 最後にヒロインたちが選んだ「幸福」は果たして、本当に「幸福」なのだろうか?

 本編は第2章で終わっています。
 でも投げっぱなしの伏線や、オープンエンド過ぎるのもな、ということで「回答編」としてifの「第3章」もあります。

 「こんな未来も在り得るよ」という、作者からの提示ですね。

注意事項

 本作は途中で突然ジャンルが急ハンドルを切った都合で、テーマの割に主人公が男子高校生、ヒロインたちが女子中学生という若年層になってます。

 自動筆記先生が「青春! 青春!」と暴走した結果、ほんとーにとってもセンシティブな性依存や恋愛依存、その果てである妊娠問題まで扱ってます。
 その系統にトラウマがある方は読まない方が良いです。

 それでも読んでみたい方は「小説家になろう」と「カクヨム」で公開しています。くれぐれも注意。

 カクヨムにも置いたのは、作品カラーがヘビー過ぎたからですかね。
 あっちのユーザーの方が好むジャンルかな、と。


裏話(長いよ)

 実は地味に10万文字を窓から投げ捨てています()
 5日あれば書けると思えば、10万時を捨てるくらい怖くない!

 本作、第1話を書き始めた時点までは「現代ファンタジー異能バトルチートハーレム」を書こうとして設定を用意してました。

(それがなんで純文学に……?)

 ジャンルがジャンルなので、珍しく設定もあれこれメモに書きこんであります。

 南竜島みなみたつじまは南鳥島の北西くらいに、20年前に発生した大地震と共に突如として生まれた島です。
 位置的に東京都の管轄、という扱いになってます。

 ヴォーテクスグループという巨大コングロマリットが支配する人口10万人規模の実験都市、それが南竜島みなみたつじまです。

 新型感染病「ネメシス・クライシス」という、コロナっぽい病気が全世界で流行し、世界人口の3割が失われてしまった世界線。
 ヴォーテクスグループ傘下の企業、ヴォーテクス製薬が製造した特効薬が世界を救い、人類は滅亡を免れました。

 だけどこの特効薬はとんでもない副作用を持っていた。

 なんと、10代の子供に限り魔力に目覚め、異能が顕現してしまうのだ!
 あれから10年、世界には「異能を持つ者」と「異能を持たざる者」に分かれて生活を続けていた。

 というのが開始早々に明かされる設定です。
 異能者は様々な偏見の目で見られてるような、そんな世界です。
 なんせ理解不能な力を扱う人間ですし。
 中には「あいつらは人間じゃない」とかいう過激団体だっている、そんな設定です。

 まぁぶっちゃけ「とある」がモデルではあります。

 そんな異能者を保護し、異能を研究し有効活用しよう――それが南竜島みなみたつじまの存在意義です。

登場人物

竜端たつはし悠人ゆうと

 主人公。古武術家の生まれ。お父さんに鍛えられてます。
 2年前の試合事故で相手に大怪我をさせて以来、武術から身を引いちゃった男子。心の優しい男の子です。

 将来有望、本人も武術しか頭に詰まってないような、そんな子ですね。

 だけど彼には、誰も知らない特異体質が潜んでいた――それが本作の全ての引き金だった。

 異能は無名、精神が高ぶると周囲よりも素早く動くことで「まるで時が止まったかのような」錯覚を覚えます。元ネタはサイボーグ009の加速装置。

 そんな速度で古武術の技を叩きこむので、歩く凶器です。

 本人では制御しきれない異能を持て余し、彼は武術界から去る決意をします。

ガラティア・ストームブリンガー

 メインヒロイン(?)。中学1年生。
 プロメテウスが製造した人口有機生命体。ただし人間と等価。
 心があり感情があり魂があり生殖可能です。

 一番最初に悠人に惹かれ、近づいて行った子。
 天真爛漫で明るい子。――そして人の原罪を持たない存在。

冴月さえづき瑠那るな

 メインヒロイン。私立海燕うみつばめ学院の名物グループ、「花鳥風月」の一人です。中学2年生。
 お父さんは警察官。
 両親とは離れて島で寮生活してます。

 フルコンタクト空手をやっている辺りはもろに「とある」の影響を受けてます。だって好きなんだもん、拳で語れる少女。

 異能は「煌光回廊レーザー・サーキット」。
 口からレーザービームを放てます。
 この技は「霧の国へようこそ」が初出、つまり竜の魔術です。

 主にグループのリーダーで、みんなを統率する役割です。

 現役時代の悠人ゆうとのファンで、憧れの人。
 自分より強い男子に弱いタイプですね。

小鳥遊たかなし優衣ゆい

 サブヒロイン。「花鳥風月」の一人。
 嘘が大嫌いな中学3年生。

 グループの中で調停者を務めます。本来はね!

 異能は「真実探求フェイス・クッキング」。
 嘘を聞くと「嘘の味」がします。
 彼女は「嘘の味」が大嫌いなので、嘘つきが嫌いになりました。

 普段は大人びた静かな少女ですが、恋愛には燃え上がるタイプ。

花咲はなさき美雪みゆき

 サブヒロイン。「花鳥風月」の一人。
 グループのムードメーカーを務める中学2年生。

 「クラスで中の上」という外見の、平凡な女子。
 趣味は映画観賞です。

 自分に取り得がないことで密かに劣等感を抱いています。
 まぁ周囲が個性的だしね。

 異能は「幻想友人イマジナリー・フレンド」。
 人間の影を動かして相手を縛り付けたりできます。
 でも影が薄いと陰の力も弱まるので、屋内ではあんまり強くないです。

風祭かざまつり由香里ゆかり

 サブヒロイン。中学1年生。「花鳥風月」の一人。

 グループの妹分みたいなポジションですが世話焼きタイプ。
 由香里の異能は瑠那の異能と相性が良いので、よくコンビで行動します。

 異能は「音響調律サウンド・エンジニア」。
 有効射程距離10mで音を操れます。
 周囲に無音の空間を作ったり、とかね。
 奥の手として「悲鳴を音波砲にして敵に放つ」という技があります。

 幼児体型がコンプレックス。女性らしい女子に憧れてます。美幸とか。

霧上きりがみ狼也ろうや

 こちら、名前そのままで「霧の国へようこそ」からのスターシステム。
 若返って孫の属性を得た「銀髪と赤い目を持つ男子」。
 髪の毛は染めようとしても染まりません。

 彼の能力や素性は「霧の国へようこそ」を読むとなんとなくわかります。

烏頭目うずめ美言みこと

 悠人ゆうとのクラス担任。

 口癖は「~です!」とか「一言で言えば、~です!」。

 この子も「霧の国へようこそ」からの出張です。
 あちらでは「ウズメ」でしたが。

 元ネタは名前の通り「ウズメノミコト」です。
 五伴緒神(いつとものお)が元ネタです。

湖八音こやね一葉かずは
湖八音こやね二葉ふたば
湖八音こやね三葉みつば

 ヴォーテクスグループが経営する湖八音こやね学習塾の名物講師。
 三つ子です。

 口癖は「簡単に言えば、~です!」。

 この子も「霧の国へようこそ」からの出張。
 元ネタは「アメノコヤネ」です。
 五伴緒神(いつとものお)が元ネタです。

 公開している「霧の国へようこそ」では一人しか居ませんが、50万文字ある未公開原稿(第2部)で出てきた「コヤネ・ツヴァイ」、「コヤネ・ドライ」のキャラが好きだったので連れてきました。読者誰も知らんがな

くれない厳一郎げんいちろう

 悠人の学校の校長。
 正体は処女作「竜の巫女は拳で語る」でも出てきた赤竜です。
 真っ赤なスーツを身にまとう壮年(30代中盤)の男性の姿をしています。

 普段は陽気ですが、怒った時は恐ろしく狂暴になります。この辺りは赤竜なので仕方ないですねー。

プロメテウス・ストームブリンガー

 ヴォーテクスグループの会長。謎の人物。
 十代後半の青年に見え、オレンジに染まった髪色がトレードマーク。

 いわゆるジョーカー的な存在で、態度は挑発的。

 口癖は「スパイシー」。

デュカリオン

 ヴォーテクス製薬の開発部主任。
 十代後半に見える穏やかな青年。
 白髪がトレードマーク。

 今回はあれやこれやと暗躍サポートに走り回り、あれやこれやと怪しい薬を作りまくる人。苦労人。
 特効薬もデュカリオンが作ってます。

他にも設定だけされて居て出てこない方々

 たーくさん居ます()
 ヴォーテクスグループのCEOとかな!()

 デュカリオンやプロメテウスで分かると思いますが、ギリシャ神話由来です。
 人類創造の逸話を持つプロメテウスがガラティアを作るとか。
 人口有機生命体の名前がガラティアだとか。
 色々考えながら名前を当てはめていきました。

 本作は扱うモチーフがデリケートなので、さすがに10回くらい推敲しました。結果として、第1章の第20話「水曜日:エクストララウンド」が微調整されました。
 でもそのぐらいかな? 他は誤字脱字の修正くらいだと思う。


ここからは本編を読んでから読んでね!







 余白はこれぐらいで良いかな?

 「異世界事実婚奇譚」を読むといくらか明らかになりますが、本作も共有神話体系を引き継いでます。

 デュカリオンは創竜神だし、プロメテウスはロキ(古き神々)だし、赤竜たち上位4位の竜が4つの学校で校長してるし。
 設定だけならだけならミネルヴァ(「霧の国へようこそ」の未公開第2部から出張。創竜神のお母さん)とかも居ますな!

 ミネルヴァの起源は「愛の魔物」の飛竜です。フクロウに変身できる子。
 あの子が育ち、産んだ眷属が神竜となり、子供が昇格したことにより「神の母」という概念と共に神格を持った存在。それがミネルヴァです。

 作中で出てくる新薬は、ミネルヴァの血が原料になってます。
 特効薬はデュカリオンの血が原料です。

 「愛の魔物」を読めばわかりますが、ミネルヴァは「聖竜」と「魔竜」の属性を併せ持つ、世界で唯一の個体です。これは「愛の魔物」の主人公、リーゼロッテの影響です。
 彼女の血で出来たアーティファクトが、処女作「竜の巫女は拳で語る」で出てきた「魔竜の血石デモン・ブラッド」と「聖竜の血石ドラゴン・ブラッド」となります。
 つまり、存在自体は初期から頭の中にずっと居た子です。
 今回も出番が無くなったがな!
 「霧の国へようこそ」の第2部、公開しようかなぁ?!

 設定だけなら創世神も居ます。出番がなくなりましたが。

 どういうことかというと、まぁつまり「今までは中世ヨーロッパ風の舞台だったけど、現代日本風の舞台だっていいじゃない」というのがすべての始まり。

 そこからアイデアが湧いて出て行って、メモしていったら登場人物の設定が膨れ上がりました。

 それで「さーて、異能バトルやるぞー!」って始めたら……主人公と出会ったヒロインたち(主にガラティア)が暴走を始め、ヒロインたちがそれに釣られ、「共有する愛」なんて新興宗教みたいな概念に取りつかれ、泥沼の愛憎劇が始まり、恋愛依存の性依存に陥っていき、最終的に第2章最終回に至ります。

 第3章で明らかになりますが、主人公である悠人はブラックホールみたいな吸引力を持っています。

 特定の女子を重力で引きずりこんじゃう特性、それが悠人が持つ本当の異能。体質、かもしれませんがね。

 倫理観や社会規範というシュワルツシルト半径を踏み越えて近づいて行くと「原罪」という質量をもつ少女たちは、重力に耐え切れずに崩壊し破滅していく。
 しかし「原罪を持たない」ガラティアだけは、悠人にいくら近づいても無事です。彼女は「イデア」、「理想の愛」を体現する存在なので。
 ガラティア一人がイデアを体現しながら、いつまでも悠人の傍で笑っていられるんです。

 舞台裏から物語を見るとそんなお話になってます。

 「破滅するとわかっていても、自分が信じる幸福を信じて前に進む」という選択をした彼女たち。はたして彼女たちは幸福なのか、不幸なのか。

 自分が信じる限り、自分は幸福なのだ――そう信じても、客観的に見れば破滅してます。

 幸福って何だろう? 人が追い求める幸福って、なんだろう?
 そもそも「人間」とは、なんだろう?

 そんな問いかけがされている本作です。

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