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「《パラグアイ》旧統一教会敷地内の麻薬輸送滑走路を爆破=国際犯罪組織が利用、教会関与の疑い」記事についての感想


1,《パラグアイ》旧統一教会敷地内の麻薬輸送滑走路を爆破=国際犯罪組織が利用、教会関与の疑い


日本大学アメフト部・乾燥大麻事件の記憶も新しい8月12日、ある日本語記事が配信されました。
ブラジル日報「《パラグアイ》旧統一教会敷地内の麻薬輸送滑走路を爆破=国際犯罪組織が利用、教会関与の疑い」です。

内容は、昨年の7月6日、南米パラグアイの統一教会が所有する土地で、麻薬輸送に使われたと思しき飛行場が発見、当局によって破壊されたという話です。

ただし、記事の結論としては、

今までのところ、旧統一教会やそのメンバーが麻薬密売に関与している証拠は見つかっていない。麻薬密売組織は、同教会が非常に大きな力を持つ地域の秘密の滑走路に飛行機を着陸させるが、表面上、森の真ん中の小道にすぎない。

《パラグアイ》旧統一教会敷地内の麻薬輸送滑走路を爆破=国際犯罪組織が利用、教会関与の疑い

とあるように、統一教会との関係をいちおう否定しています。
とはいえ、教会所有の土地が現場となっているため、その関係が論じられることは当然と言えば当然です。そして、記事のタイトルでもわかるように統一教会にとって不利な記事と言えます。

統一教会にとって不利になる記事ということは、もちろん教団を批判する側の材料となります。
たとえば統一教会批判の急先鋒である紀藤正樹弁護士は、早速X(旧ツイッター)で紹介しています。

なるほど、たしかに記事のタイトルや、おおよその内容を見る限り、すくなくともブラジル日報の編集者が、統一教会と麻薬取引との関係を疑っていることは間違いありません。

ですから、たとえば紀藤弁護士のように、統一教会を批判するために無批判に記事を引用する方がおられるのもやむを得ません。
ですが、ここで注意点があります。

繰り返しますが、記事はあくまでも〈統一教会と麻薬取引との関係を示す証拠はない〉と結論づけているという点です。

2,「警察の捜査に全面協力している」


ここであらためて、記事の内容を確認しておきましょう。

記事は、以下の内容で構成されています。
(1)国際的犯罪組織がパラグアイのチャコ地域で勢力を拡大している。
(2)統一教会が所有する土地で麻薬輸送のための飛行場が見つかった。
(3)チャコ地域は、文鮮明氏が土地を購入して以降トラブルが増加。
(4)飛行場は破壊されたが、麻薬や飛行機など証拠は発見できず。
(5)統一教会が関わった証拠はない。

ここで結論部分の中でも重要な箇所を紹介しておきます。
それは、統一教会側の弁護士(ミシェリ・ビュン)が「警察の捜査に全面協力している」と述べている箇所です。

同教会の弁護士ミシェリ・ビュン氏は声明の中で、チャコ地域で繰り広げられている違法行為を認識しており、警察の捜査に全面協力していると述べた上で、「我々は違法行為には一切関与していない」と強調していると報じられている。

ここでブラジル日報は、この箇所を弁護士の簡単な一言のようにすませています。
ですが、この記事の元ネタとなっているCNNブラジル、そしてさらにその元ネタであるロイターの記事を見ると、かなり印象が変わってきます。

ブラジル日報の記事では紹介されていませんが、実際には事前に統一教会側が情報提供を行っているのです。

*CNNブラジル(ブラジル日報の元ネタ)

*ロイター(今回のニュースの本当の元ネタ)


3,ロイターの記事


さて、ブラジル日報の元ネタはCNNブラジル記事です。
ですが、CNNブラジル記事をよくよく見ていくと実際にはロイター通信の記事が元ネタであることがわかります。
ですから、今回のパラグアイによるチャコ地域の飛行場捜査・破壊作戦をめぐる報道を知るには、ロイターの記事を見ていく必要があります。

*あらためてロイターの記事

さて、ロイターの記事を確認すると、統一教会の紹介、麻薬組織の動き、統一教会と今回の事件との関連の疑い、統一教会と地元との関係の話が錯綜する長文でやや難解な内容です。
そこで本ノートでは、今回のパラグアイ当局による飛行場捜査・破壊作戦と統一教会との関係に絞って記事の内容を整理していきます。

【事件、捜査の概要】

  1. 7月6日、パラグアイ当局がチャコ地域の5つの飛行場を急襲、捜査、破壊した。

  2. 5つの飛行場のうち、4つが統一教会の所有地にあった(ロイターの分析で発見!)。

  3. 今回の事件で麻薬取引の証拠は見つからなかった。

  4. 統一教会との関係を示す証拠も見つからなかった。

  5. パラグアイ・チャコは広大な森林地帯で、レーダー追跡も行われていない。また、上から見ても滑走路と、森を切り拓いただけの場所との見分けがつかない。

  6. 2022年4月に統一教会側がパラグアイ当局に該当地域の調査を促した。(パラグアイ当局も確認済み)


さて、今回のパラグアイ当局による捜査・破壊作戦は、2021年に捕まった麻薬組織のリーダー(セルビン)の捜査の一環として行われたものです。

ここで気になることがあります。
この現場となった地域が、
「5.パラグアイ・チャコは広大な森林地帯で、レーダー追跡も行われていない。また、上から見ても滑走路と、森を切り拓いただけの場所との見分けがつかない。」
という点です。

では、パラグアイ当局は、どのようにして今回の現場にたどり着いたのか?という話になってきます。
ちなみに、セルビン自身は無実を主張しています。
ですから、ロイターの記事を見る限り、すくなくともセルビンが具体的な現場を当局に説明した可能性は低い、と言えます。

ここで重要になってくるのが、先ほど紹介した統一教会側の弁護士ミシェリ・ビュンの証言です。


4,統一教会側の捜査協力


さて、まずは以下の①、②ロイター記事文に目を通すことにしましょう。


セルビン事件の主任検事であるエルバ・カセレス
は、ロイターの取材に対し、2022年7月に家宅捜索を受けた着陸帯の一部が教会の土地にあったことを認めた。彼女は、教会やその関係者が麻薬取引に関与しているという認識はないと述べた。
(Elva Cáceres, the lead prosecutor in the Servín case, confirmed to Reuters that some of the landing strips raided in July 2022 were located on church land. She said she was not aware of the church or any of its officials being involved in drug trafficking.


統一教会の弁護士であるビュン氏は、2022年4月に同教会がパラグアイの反麻薬検察当局に送った文書をロイターに提供し、潜在的な違法行為に関する調査を促した。
この文書には、2021年5月に同教会の土地で449キロのコカインが押収されたことが記されており、また、同教会の境界内に麻薬の滑走路が存在する可能性があることも指摘されている。

先週引退するまで、パラグアイの麻薬対策担当検察官のトップだったマルコ・アルカラスは、この文書を受け取ったことを確認し、さらなる調査のためにSENADに渡した。
(Byun, the Unification Church lawyer, provided Reuters with an April 2022 document the church sent to Paraguayan anti-narcotics prosecutors, urging an investigation into potential illicit activity. The document mentioned a May 2021 seizure of 449 kilos of cocaine on its land and also flagged the likely existence of narco runways within its boundaries.

Marco Alcaraz, one of Paraguay’s top anti-narcotics prosecutors until his retirement last week, confirmed he had received the document and passed it on to SENAD for further investigation.)

さて、この①、②の記事文はつまり、以下のようなことを述べているわけです。

①今回の捜査のきっかけとなったセルビン事件の担当検事側からすれば、事件と統一教会との間に関係があるという認識はない。

②統一教会側は、確たる情報を用意してパラグアイ当局に通報した(パラグアイ当局も確認済み)。

先ほども紹介したように、このチャコ地域の森林地帯にパラグアイの管理が行き届いていない、というよりも監視が極めて困難ということはロイターだけでなく、ブラジル日報記事でも明記されています。

そのなかで統一教会側が、確たる情報をもって当局に通報した、つまり、より確実に捜査が行われるように動いたという事実は重要です。

5,チャコ地域の混乱の原因は誰にあるのか?


さて、今回の飛行場捜査をめぐる情勢を見ていくと、そもそもの話として、文鮮明氏がなぜこの土地を購入したのかは、議論の余地があるかも知れません。

ただ、ブラジル日報・CNNブラジル・ロイターの記事タイトルや内容が与えかねない印象は問題です。
あたかも統一教会だけが地域の混乱を招いているかのように論じているからです。

ロイター記事は、記事の後半部分で統一教会と地元住民の対立に言及していますが、そのなかで以下の話に言及しています。

教会のチャコ地形所有に抗議する一人がアルベルト・ダビド・ガウトで、彼は現在、文氏が所有する土地に不法侵入し占拠した容疑で当局の捜査を受けており、刑務所にいる

ロイター通信が入手した警察の情報報告書によると、ガウトはパラグアイ北部全域でコカイン、マリファナ、爆発物を移動させている容疑もかけられており、これも教会の土地で麻薬取引が拡大している兆候である。
(One protester of the church’s ownership of the Chaco terrain is Alberto David Gauto, who is currently in jail as authorities investigate him on accusations of illegally invading and occupying Moon-owned land.
A police intelligence report obtained by Reuters shows Gauto is also suspected of moving cocaine, marijuana and explosives across northern Paraguay, another sign of the growing drug trade on church land.)

ここで重要な点は、現地の統一教会に抗議する側に、むしろ麻薬売買に関わった人物が紛れ込んでいる可能性が示唆されているということです。

もちろん、統一教会の所有する土地が現場となっていることは事実なのでしょうが、実際にロイターの記事を読み込んでいくと
むしろ混沌とする南米の麻薬情勢と自然環境によって、統一教会が巻き込まれた側(今回の事態については「被害者」側であるとすら言える)と結論づけるのが妥当です。

まとめ


簡潔に言えば、このノートの結論は以下の2点にまとめることができます。

①統一教会は土地を利用された被害者側とすら言える。
②統一教会側は、より確実に当局の捜査が行われるように尽力している。

さて、ここまでが今回のまとめです。

ここからは余談ですが、先述したようにロイター記事は、統一教会の紹介、麻薬組織の動き、統一教会と今回の事件との関連の疑い、統一教会と地元との関係の話が錯綜する長文で難解な内容です。

そして今回、紀藤弁護士をはじめ統一教会を批判する側のX(旧ツイッター)を見ていて思ったのが、なぜ元ネタのCNNブラジルやロイター記事に触れないのか、という疑問です。

また、立場は不明ながら、これらの記事をそのまま日本語訳したノートやXを見かけることはあるのですが、具体的な記事の検証、読み込みを行っているものは見かけません。

まあ、私もたまたまYouTubeのコメントをいただかなければロイターの記事までたどりつきませんでしたが、それにしても、今回の飛行場捜査と統一教会との関連性を議論する際にロイター記事の検証が抜けているのは問題です。

なぜこんな話をするのかというと、
今回のロイター記事には、飛行場捜査そのものよりも、より注目しなければならないことがあるからです。
それは、シンシア・タラゴ(統一教会の関連団体世界平和国会議員連合(IAPP)のもとパラグアイ支部会長)に言及しているという点です。

このシンシア・タラゴと飛行場捜査をめぐる話を、ロイター記事がどのように関連付けているのかは、かなり重要な議論になってきます。

この点については、また別にノート記事を用意しようと思います。
ひとまず今回はここまでです。

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