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選択的夫婦別姓の問題点、氏と家、江戸時代の夫婦別氏は女性蔑視だったのか?【井戸田博史氏「江戸時代の妻の氏一夫婦別氏一」を読む】(2021年11月7日)

*井戸田博史氏「江戸時代の妻の氏一夫婦別氏一」(『奈良法学会雑誌第12巻3・4号、2000年)はこちら


*今回の動画の内容

■江戸時代
武士の家は、夫婦別氏。
(*今風に言えば、夫婦別姓)

■今回のテーマ
江戸時代の夫婦別氏をどのように見るべきか?

■井戸田博史氏「江戸時代の妻の氏―夫婦別氏―」の内容①
(*以下、井戸田論説)
論説の結論:
江戸時代の夫婦別氏は、妻の、夫の家への従属、劣位をあらわすものであった。

■井戸田論説について考える①
・むしろ、夫の血族である兄弟姉妹が「厄介」もの扱いされていた

*井戸田論説引用(1)(77ページ)
…妻は「厄介」とはされないで家族の一員であった。当主の兄弟姉妹、伯叔父母、甥姪の傍系親族が、たとえ血族であっても「厄介」とされたのとは異なるのである。

■井戸田論説について考える②
・はたして妻は夫の家のなかで従属的、劣位であったのか?

*「姓は個人のものではない」いただいたコメント
(コメントもとはページ下)

キャプチャ9

■井戸田論説について考える③
・そもそも氏や姓、「家」は個人の所有物だったのか?

男女の優劣という問題設定そのものが…、
氏、姓や「家」を個人の所有物とする考えが前提になっている

■井戸田論説の内容②

*井戸田論説引用(2)(77~78ページ)
…この妻の従属・劣位の地位を表すものが、妻の氏であった。しかし、留意すべきことは、妻が夫家で生家の氏を称することが妻の従属的地位を表す機能を持っていたとしても、夫家で妻が生家の氏を称することが妻の夫家での従属的地位をもたらしたのではないこ(と)である。
(*(と)はチェンネル主が補足)

■井戸田論説について考える④
・井戸田論説によれば、
 江戸以前の財産相続、家の継承(父子継承)などの事情が先にあって、そこで江戸時代の夫婦別氏につながった

…と言うが。

そもそも妻が従属的・劣位であるかどうかは…、
夫婦別氏の議論と関係なかったということになる。

■井戸田論説について考える⑤
・そうであるならば…

1. 夫婦別氏という制度
2. 妻への蔑視(妻が従属的で劣位である)

無関係な2つの話を結びつけることに、意味があるのか?

■井戸田論説について考える⑥
・たしかに、氏や家は、父子(男子)で継承するものではあるが…、
・男子もまた、氏や家に従属している

■井戸田論説の問題点①
氏や「家」の問題に、以下の2つの見方(悪く言えば先入観)を取り入れている。

(1)女性史によって見ている
*女性史とは、歴史を男女という個人間の対立として理解しようとする歴史観
(2)個人主義、氏や家を個人の所有物として見ている
*個人の所有物だからこそ、男性(夫)が優位で、女性(妻)が劣位であったという見方になってしまう。

→家族、夫婦といった、個人を超えた概念を無視している。

■井戸田論説の問題点②
・氏や姓の分析が、女性史研究の見方に引きずられてしまっており、議論として意味があるのか疑問
*女性史とは…
→「女性」全体を、「男性」に虐げられた歴史的弱者として分類する歴史観。

*動画内引用コメントはこちらから

今回の論説を紹介してくださった選択的夫婦別姓推進論の方のツイート(*こちらの参考文献ツイートは、立場とか関係なく、氏や姓の勉強になるので、ぜひ参考にしてください。)


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