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メトロン星人

昨今喫煙場面のある映画やドラマをR指定に、と取り沙汰されてますが、そんなニュースを見る度に、物語のキーがタバコであるウルトラセブンのメトロン星人初登場の回を思い出す。
この回は現在既にR18に指定されているらしい。
この回は全ウルトラシリーズの中でも個人的には最高の秀作だ。

「非暴力によって地球を征服する」というジェントルなメトロン星人の姿勢にシンパシーを感じる。
メトロン星人とダンが卓袱台で対話する演出も印象的だった。

卓袱台の場面でメトロン星人は
「我々は人類が互いにルールを守り、信頼しあって生きていることに目をつけた。地球を壊滅させるのに暴力をふるう必要はない。人間同士の信頼感をなくせばよい。人間たちは互いに敵視し傷つけあい、やがて自滅していく。どうだ、いい考えだろう」
とダンに話した。

別エピソードで再び登場したメトロン星人は
「もう攻撃しなくても俺達の手に落ちる確信をした。人間は便利なツールで退化し始めた。
自ら作り出した新しい道具で年々脳が萎縮し始めた。私はその退化の速度を、ちょっと速めようとしただけだ。」
と、あくまで非暴力。

「地球の夕焼けは美しい」と言い残して宇宙に帰った。
シブい。シブ過ぎる。

物語は「メトロン星人の地球侵略計画はこうして終わったのです。人間同士の信頼感を利用するとは恐るべき宇宙人です。
でもご安心下さい、このお話は遠い遠い未来の物語なのです。我々人類は今、宇宙人に狙われるほど、お互いを信頼してはいませんから」
とシニカルなナレーションでシメられている。

全然遠い遠い未来の話などとは思えない。
実はメトロン星人みたいな宇宙人が人間に紛れてるから世界は荒れてるんだよ、などと耳打ちされたら馬鹿な私は簡単に信じてしまうぞ。

かつて、おすぎ氏は「何年経ってもふと思い出して心の琴線に触れる作品こそ名作と呼べる」と語っていた。
ならば、放送から50年経た現在も二十歳そこそこの私の背筋をぞっとさせるこの作品は私の中では超名作だと称えたい。
むしろリアルタイム世代で子供だった人はあまり意味がわからないままやり過ごしてるんじゃないかなと思うと逆に良かったのかな、とか思ったり。


は、いいんだけど同じくウルトラセブンで、怪獣や宇宙人が全く出てこないのにものすごく怖いエピソードの回がメトロン星人の回と同じぐらい印象に残ってるんだけど、タイトルが思い出せない。
宝くじが当たったらすぐにDVDボックスを買おう。(←宝くじに対する志がとても低い上に宝くじを買った事も無い)

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