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翠月瞳の考察【開幕と終演】

とてつもない喪失感。

なんて書くとまた「悲しみ」を思わせてしまうだろうか。私の、生きるための考察はきっとこれからも続いていく。

理科の授業に『考察』ってあったのをよく覚えている。私は上手に書けなかった。自分の意見を言うのが怖かったから。間違っていたらどうしようと思ったから。AからDまでの評価があったから。先生たちはよく私の目線を笑ったから。友達に話しても全く違う話になってしまったから。

開演前に、役者たちが私の「悲しみにまつわる考察」という文章を読む時間があった。
皆んなが声に出して読みたいと言ってくれて、お願いすることにした。本当は、iPhoneのメモ書きにバラバラと連ねただけの日記みたいなものだった。誰にも見せるつもりなんてなかった。

開幕が迫るにつれ、私は自分が臆病であることを忘れなければならなかった。終演が迫るにつれ、私は自分に自信がないことを忘れなければならなかった。柱時計が鳴り、開幕したかと思えばあっという間に終わってしまう。音楽の甘い囁きは、スタジオを出てゆく人々のつぶやきに、小さな明かりたちは瞼に重なってゆく。目一杯並べられた椅子たちが、一人一人の名残を感じさせる。私はスタジオを後にする。

眠って、目覚めて、現実に戻る。好きなことをまた少しずつ思い出す。生活にゆったりと侵攻する。小さな失敗や顔を覆いたくなる失敗が、突然燃え上がって私の部屋が奪われそうになる。でもこう唱えて、また明日からも生きちゃってみる。ま、いいか。今は、ま、いいか。

本当は「ま、いいか」なんて思えない。
創作には果てがない。出来上がる作品には完成がない。いつまでもいつまでも、やっぱり私は考察を続けて、
またなんの気なしにそれを誰かにちらと見せたりするのかもしれない。

開幕して、終演する。こんなに寂しくなるのならずっと始まらなければよいのに。なんて思ったけれど、私たちってそういうふうにできている。もっと全てを愛してみなくちゃね。次の「開幕」は確かにこの心を慰めながら強いものにしてくれると思うから。それまでもっと、
全てを受け止めてみよう。

またいつかお会いできたなら幸せ。
柱時計の音が、遠くで時間を告げたような気がした。


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