「好きなことに没頭している人たちを集めて、そんな人たちの持つ価値が適切な誰かに届くような仕組みづくりをしたいです。そうすれば、楽しく生きる人が世の中に増えると思うんです」── そう語るのは、科学でつながるオンラインコミュニティ「理系とーくラボ」を主催するともよしさんだ。
理系とーくラボ(略称 : RTL)とは、高校生や大学生、大学教員、企業の研究開発員、エンジニアなど、さまざまな立場の人たちが「科学」というキーワードのもと集まって、世代や分野の垣根を超えてつながりを持てるオンラインコミュニティだ。コミュニティ内ではフリートークや情報交換を楽しんだり、勉強会や交流会などのイベントに参加したり、受験勉強や研究、仕事などの悩みを誰かに相談をしたりなど、さまざまな交流をすることができる。
メンバーは必ずしも理系の人だけには限らない。「仕事とは直接関係ないけど、知らない分野について学ぶこと自体が好きだ」「色々な業界の人とつながりを持って、知見を広げたい」などさまざまな理由で、科学とは一見関係のない文系研究者や事務職、ライターなどといった人たちも理系とーくラボに参加している。
人とのつながりが希薄になりつつあるwithコロナの昨今。「科学」という切り口から独自の価値を生み出しているコミュニティ「理系とーくラボ」について、活動内容やその魅力を代表のともよしさんから伺った。
取材・文・写真 : 充紀
科学でつながるオンラインコミュニティ「理系とーくラボ」とは?
理系とーくラボは、学生から社会人まで、さまざまなバックグラウンドを持ったメンバーが「科学」をキーワードに集まる科学系オンラインコミュニティだ。主な活動の場としては、オンラインチャットサービスの「Slack」を使用している。
Slackとは「メンバーだけがログインできるクローズドな掲示板」のようなもので、このツールを通してテキストによる交流が日々活発に行われている。トークテーマはさまざまで、誰かが発表した科学論文について盛り上がることもあれば、世間で話題のニュースについて議論することもある。慣れ親しんだメンバーと、日々の何気ない雑談を楽しむ人も多い。
Slackよりも自由な交流ができる場所としてバーチャルバーも用意されている。通称「ラボバー」だ。オンライン上のバー空間で自分のアイコンを自由に動かし、近くにいる人と音声で直接話すことができる。複数人での会話も可能だ。
イベントも高頻度で開催!分野を超えてさまざまな人たちと交流できる
理系とーくラボでは、ラボバーやZoomを使ったオンラインイベントも月35〜40回ほどと高頻度で行われている。メンバーなら誰でも自由に参加可能なだけでなく、イベントを主催することもできる。
イベントの内容は幅広い。「医学・免疫学に関する勉強会(炎症について)」などといった、誰かが専門分野について詳しく解説してくれる学びの多いイベントもあれば、「今月読んだ本について語る会」や「大好きなゲームの感想&布教の会」などといった科学とは関係なさそうなものもある。
ほかにも、新たに加入したメンバーの希望があれば、互いに自己紹介し合える「ウェルカムトーク」イベントをともよしさんが主催してくれるなど、理系とーくラボにはメンバー同士がつながりをつくって交流しあえる仕組みが整っている。同じ「科学」という共通項を持っていながらも、分野や立場が異なる人たちが集まることで、さまざまな関係性やメリットを生み出している。そんなコミュニティが、理系とーくラボだ。
フラットな関係性がそれぞれの持つ価値を引き出し、互いにメリットを生んでいく ── 理系とーくラボが持つ魅力
前述の通り、理系とーくラボの参加者には高校生、大学生、大学院生といった学生も多い。そんな学生メンバーにとって、理系とーくラボは自身の研究内容や進学・就職などについて、先輩たちの意見をもらえる貴重な場所となっている。
もちろん、加入するメリットがあるのは学生だけではない。
「楽しく生きる人を増やしたい。研究でつらい想いをしている人を減らしたい」 ── 立ち上げのきっかけとRTLに懸ける想い
「人と人との良いつながりをつくること」を重要視しているともよしさん。そう思うようになったのは、大学院生時代の経験がきっかけだったと話す。
さらに、ともよしさんはこう続ける。
そんなともよしさんの想いは、理系とーくラボが掲げるビジョンなどに反映されている。それぞれが自分の興味に没頭できて、それを価値として活かしあえるコミュニティであれるように、以下のような理念を掲げてメンバーとともにアップデートし続けているという。
「もっと大きな価値を提供できるコミュニティにしていきたい」― 今後の目標や展望
理系とーくラボに所属しているメンバーの数は、2022年3月現在で約80名ほどだ。しかし、「もっともっとメンバーを増やして、大きな組織にしていきたい」と、ともよしさんは語る。
「つらいときほど、『人と話すこと』を大切にして欲しい」
理系とーくラボをもっともっと大きなコミュニティに育てることで、みんなが自分らしく、ありのままでいながら自分の価値に気付き、自分の価値を発揮できる場所にしていきたい。 ── そんな想いを掲げるともよしさんは、自分自身がつらかったときのことを振り返り、次のように語っている。
理系とーくラボには、いろいろなキャリアや生き方をしている先輩たちがたくさんいる。そして、ともよしさんと同じように「つながりの大切さ」や「研究のつらさと楽しさ」を知る人たちがたくさんいて、みんながもっと楽しく生きられるような場所をつくりたいと集まっている。
「あなたにとってのアタリマエも、誰かにとってはタカラモノ」── “科学”という切り口から「ひとりひとりの好き」を「みんなの価値」へと変えていこうというともよしさんの挑戦は、いまやコミュニティメンバーみんなの挑戦へと広がりを見せている。
新型コロナウイルスの蔓延によって、人々の生活様式も価値観も変化しつつある令和の現代。人と人とのつながりの大切さを改めて感じている人は多いはずだ。この輪がもっともっと大きく広がって、自分の興味に没頭して楽しく生きられる人が増えて欲しいと願う。
取材・文・写真 : 充紀