【意志あるところに道はある】ケイイチ ちゃり旅20年の道のりVol.24 3つの0から始める挑戦①
目をつぶるとエベレストの山影が浮かぶ。
それほどに、ケイイチの行く場所ははっきりしていた。
しかし、どうやってそこまで行くのかについては、全くどうしたら良いかわからなかった。
情報を集めなければ、と思いながら決めたこともある。
それは、3つの0。
インドの最南端、海抜0mのこの地点から。
所持金0円で。
燃料0の人力のみで。
世界最高峰8,849mを目指す。
どうせ高い山に登るなら海抜0mから目指したかった。
バスを使ったり、飛行機を使って途中まで行けば、海抜0mから始める意味がない。
だから、人力のみにこだわる。
お金をたくさん持っていたら、簡単に登れる気がしたので、所持金も0に。
我ながら途方もない、とケイイチは苦笑いする。
登山は初心者だ。
日本では、地元の赤城山に登ったことがあったが、それが過去最高。
赤城山1828mからいきなりエベレスト8848mだ。
必要な装備も知らない。もちろん、ノウハウもない。
そんな自分がエベレストに登ろうと言うのだから、面白いじゃないか。
チベットを走りながら、エベレストを見てしまったのだ。
地球上で一番高い場所。
もしも頂上に立つことができたなら、何が変わるだろうか。
誰もが見れるわけじゃない。
わかっている。
それでも、見たくて仕方ないのだ。
聖地・カニャクマリの浜辺で、サンセットを見て、サンライズを見た。
日が沈む海から、日が昇る。
それを見るためにたくさんの人が集まる。
静かな、神聖な時間だった。
気持ちが改まる。
そんな気がした。
ポケットの中にあった財布をひっくり返す。
中には銀色の硬貨が何枚か入っていた。
その光景を見ていた物乞いの女の子が手を差し出してきたので、持っていた硬貨を全てあげた。
インドで持ち金が0になる。
不思議と怖さはなかった。
新宿の時とは違う。
ケイイチには手品があった。
手品をすることで、コインを稼ぐことができる。
お財布の中身をからにすることで、覚悟が決まった。
始めよう。
新しい挑戦を。
進むしかないのだ。
意志のあるかぎり、そこに続く道があるはずだ。