読書:『ポクスル・ウェスト最後の飛行』ダニエル・トーデイ
書名:ポクスル・ウェスト最後の飛行
著者:ダニエル・トーデイ
翻訳:武藤陽生
出版社:早川書房
発行日:2017/03
http://www.hayakawa-online.co.jp/shopdetail/000000013487/
半分あたりまではどうも進展が遅く先が読めない感じだったのだけど、後半に入ると一気に面白くなりました。
ポクスルが軍隊に入るあたりから。
時は第二次世界大戦期。軍隊に入ったポクスルはドイツを空爆する爆撃機のパイロットになる。同じ部隊にポクスルを目のかたきにする嫌な奴がいたりもするのだが、ポクスルたちは爆撃作戦で大成功を収めたりもし……
というような話が軸で、しかしこれは、ポクスルが書いた自伝の中の物語。
この自伝を入れ子にして、イライジャの語りが入る。ずっとポクスルおじさんを尊敬していた少年イライジャ。
ポクスルはこの自伝でベストセラー作家になるのだが、真実の話ではないのではないか、と世間から疑惑をもたれるようになり、姿を消してしまう。イライジャの前からも。
ポクスルへの尊敬と裏切られた気持に挟まれる少年イライジャ。
一方、ドイツ爆撃のあと、自分たちがやったことの恐ろしさを感じ取るようになり、また自分が捨てた人々、戦争で傷ついた親しい人たちのことを思って苦しむポクスル。
戦争物語のようであり、少年物語のようであるのだけど、実は「語り=騙り」の作品なのかな。作者がいちばんこだわったのは。
物語ることについては、シェイクスピアを通じて作品の中にはっきりと書かれている。他人の作品を自分のものとして、ただしもっと優れた作品にしあげたシェイクスピア。他人の体験を自分に取り込んで語って何が悪いのか。すばらしい物語になるのならそれでいいではないか。そんなようなこと。
これは、賛否あるだろう。
ぼくは正直、温度が少し覚めたけれど。開き直ったようにそういうことを言い出したあとにも続いている物語を読むのには、少し白々とした気分になってしまった。
ポクスルの話は完全ノンフィクション、ということにしてもよかったと思うけれど……。そうしてはいけない(と作者が決めた)理由がいまいちよくわからず。
ここ以外は、よい小説だったので、惜しい気がしました。
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