読書:『夏の沈黙』ルネ・ナイト
書名:夏の沈黙
著者:ルネ・ナイト
翻訳:古賀弥生
出版社:東京創元社
発行日:2015/05(文庫:2017/07)
http://www.tsogen.co.jp/np/isbn/9784488010454
http://www.tsogen.co.jp/np/isbn/9784488285050
鳴り物入りで登場した大型ミステリー。
叙述トリックというやつになるのかな。意外と油断して読んでいたので、終盤に明らかになる仕掛けには素直に引っかかりました。ストーリーがわりと退屈になりかけてきたところに、また復習するかのように回顧シーンが始まったので、「いいよもう」と少し思ってしまったのだけど。そういうことではなかった。
で、終盤からの展開はやや強引ではありつつも面白かったけれど、そこに至るまでは……やはり少し退屈でしたかねえ。読むのやめようかと何度か思ったし。
それほど複雑なストーリーでもないのに妙に読みにくくて、たぶんそれは、交互に語られるふたつの家族に特徴があまりないから。なんだか似ているんですよね。夫と妻、大切にされているひとり息子。
登場人物は少ないのに、誰のことを書いているのかときどきわからなくなることがあった。
老いた男の一人称が「わたし」なのだけど、彼の場面だとしばらく気づかず、てっきり女性が話していると思っていて、「おまえが話してたんかーい!」と思わず突っこんでしまったり。
この物語、最終的に明らかになるのは、誰も"理解"していなかった、ということ。加害者側も被害者側も。夫は妻を理解していず、息子も理解していず、妻も息子を理解していず。
それぞれがみんな自分の秘密をかかえ、沈黙していた。勝手に家族の理想像を作っていた。
そしてそのことを彼らは思い知らされる。
読み終わったあとは、ずんときました。