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安倍氏暗殺事件によって可視化されてきたサイレントマジョリティと、その怒り
サイレントマジョリティ。物言わぬ多数派。
物言わぬがゆえにその存在は見えず、普段は、いわば概念に近いような気がする。存在しているはず、という概念。
ことに日本人はこちら側の人は多いような印象だ。大きな声でなにかを主張する人というのは少ない。
その対義にあたるのが、ノイジーマイノリティ。声の大きな少数派。
日本では近年こちらの声が取りあげられることが多かった。その結果として、ますます声が大きくなり、目立ち……ますますサイレントマジョリティの声は聴こえなくなる。
そういう状態が、とりわけここ十数年ほど続いていたように思っています。
そして、ノイジーマイノリティは自分たちの声の大きさに自分自身も騙されて仲間がたくさんいるようにもしかしたら錯覚し、一方のサイレントマジョリティのほうももしかしたら同様だったのではないでしょうか。あくまで想像ですが。
正直、ぼくもそう錯覚することがありました。ぼくは読書系文学系のクラスターにいることが多いのですが、文学系はそちら側の大声を出す人が多いですしね……
また、マスメディアももしかしたら錯覚することがあったのかもしれません。彼らは基本的には、大衆にうけるものをとりあげて提供する姿勢と思います。ノイジーマイノリティの声が大きいのでその目にはこちら側が「大衆にうける」ように見える。そこでとりあげる。場合によっては後押しする。そしてますます彼らの声が大きくなる。
しかしたとえば選挙だとか、そういう民意を問う場面になると、言うまでもなく実態が現れてきます。すると、ノイジーマイノリティはたいてい敗北側になる。その呼称のとおり、少数派ですから。
けれども普段、声の大きさを実態と錯覚していると、なぜこうなる? なにか不正操作されているのではないか? ということになる。
こういう状態でその存在がずっと見えにくかったサイレントマジョリティですが、それがこの数日でいきなり可視化されてきたように見えます。
この酷暑の中でも、連日、長い弔問の列に並ぶ人々。
テレビカメラの前で涙を見せる人々。
海外では大使館の前で崩れ落ちて嗚咽する人々もいると聞きます。
もともと安倍氏を支持していた人たちでさえ、安倍さんはこんなに人気がある人だったのか、と驚いているようなさまです。
たとえばアメリカではトランプ氏が何万人(何十万人?)の支持者を集めて演説をするようなことがありますが、安倍氏も実態は同じような状態であったのかもしれないですね。日本人の特質なのか、そういう熱狂的な様相は物理的に出現することはありませんでしたが。
安倍氏に対するノイジーマイノリティは、氏が亡くなった今でももちろん存在し、ネットを主戦場として、真偽の定まっていない情報をもとにして今なお激しく誹謗中傷を続けています。
こういったものに対し、サイレントマジョリティの大半はこれまでは黙して生暖かく見てきました。けれどもこのたびは怒りを見せて反応している人が多く見受けられます。我慢の限界を超えてしまったということかもしれません。ここでもまた、可視化されてきているのですね。
個人的には、こうした動きが、暗殺事件が起きる前にあってほしかったようにも思いますが……
最後に、誤解のないように補足のように書いておきますが、マイノリティの存在、その意見はもちろん無視していいというものではありません。
しかし、ノイジーマイノリティは、少し事情が異なるように思っています。
ノイジーマイノリティというのは声の大きな人々です。つまりその声の大きさでもって自分たちが多数派の意見であるかのように偽装する(錯覚させる)人々で、これによって世相を判断すると、ときとして社会に歪みが出てきてしまう。
わかりやすく言うと、なにかに対して難癖としか言いようのないクレームを大声で叫びたてる。それによって「なにか」はその声が望むほうに是正される。しかし実際には、それは難癖であって正しい意見ではなく、しかも大多数の人々はまったく望んでいない「是正」である、ということになりうる。つまり、少数意見によって社会が作り変えられていくことになる。
そういったようなことが、現実的によく起きてきていますよね。
おまけにノイジーマイノリティの意見がマイノリティの代表ということも必ずしもありません。むしろマイノリティを利用し、マイノリティが望んでいない方向に「声の大きさ」を武器に誘導しようする活動家も見受けられます。それがノイジーマイノリティです。
このたび安倍氏を襲った悲劇によって、サイレントマジョリティたちは、黙っていてはいけない、誤りは誤りと言わなければいけない、自分たちの存在をきちんと示し意見は言わなければならない、と気づきはじめたのかもしれません。この流れは少しだけ期待をもって見守りたいと思います。
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