読書:『父を撃った12の銃弾』ハンナ・ティンティ
読む前に想像していたものとはまったく違っていた。
思っていたよりもはるかに面白く。
分量のせいもあるけれどこれはじっくり読み込みたいと思い、図書館で借りていたのを返却し、購入しました。
各地を転々として生活してきた男とその娘の物語。
男(父)の体に撃ちこまれた銃弾をモチーフに、いつどのようにして撃たれたのかというエピソードを描くパートと、12歳の娘の視点から現在を描いたパートが、交互に語られる。そしてどちらのパートも面白い。小説が進むにつれ、互いのパートが影響を及ぼし合い、最後にはみごとに収束する。父親の過去が現在に襲いかかってくる。
娘思いの父親ではあるのだけど、決して「いい人間」ではない。
むしろ犯罪者側の人間だ。体に撃ちこまれた12の弾丸はそのあかし。
やってきたことからするとろくでもない男ではあるのだろうけど、とんでもない悪党というわけでもない。どちらかというと善人のようにすら思える。いい父親とも言えないようでもあるが、しかし同時に、いい父親にも思える。不思議な人物像。
この混沌が、交互に語られるパートによって絶妙にブレンドされる。
そして、この父の血をひいている娘もまた。
決して言うことをきかない。誰も彼女を抑えられない。
ミステリーという範疇にはなっているようだけど、これはミステリーではない。タフな雰囲気のロードムービー……という言い方も、あまり正確ではないのだけれど……
コーマック・マッカーシーとか。少し近い感じはした。
ハードボイルド調の文学。あるいは、文学調のハードボイルド。
絶品。
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