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日常奇譚(ショートストーリー集)

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日常に存在する奇妙な謎や出来事などを題材にしたショートストーリー集。
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#小説

[掌篇集]日常奇譚 ―― 目次 ――

前書き 第1話 幽虫   晴れた日のほうがよく見えるようです。 第2話 いつか勝利する日  こ…

[掌篇集]日常奇譚 第44話 たまたま、ねこ

 今のアパートに引っ越したときの話をしよう。  その当時は一時的に遠方に住んでいて、そし…

[掌篇集]日常奇譚 第43話 いつなんどきでも

 夕刻、仕事帰りの電車の中だった。  この時間、シートに座れることは稀なのだが、この日は…

[掌篇集]日常奇譚 第42話 ついていった

 猫に対するよくある誤解として、クールであるとか、自分中心で人にそれほどはなつかない、と…

[掌篇集]日常奇譚 第41話 纏顔

 せっかくのことなら顔は小さいほうがいい、というのは、ひょっとしたらどの時代や国でもある…

[掌篇集]日常奇譚 第40話 安堵の過程

 ある日、コーヒーを飲もうとして、ドリッパーがないことに気づいた。  洗い場のあたりを目…

[掌篇集]日常奇譚 第39話 商品が先か、清算が先か?

 ごく小さなことであるにもかかわらず棘のように神経にさわる出来事がたまにある。  そうした事柄はいくらでもあって、ひとつひとつ挙げていくときりがないことになってしまうのだが、ついさきほど出くわした事例については書き留めておきたい。  というのも、それは遭遇する頻度の高い出来事で、もし機会があるものならぜひとも改善を願いたいとかねてから思っていることだからだ。  仕事からの帰り、ぼくはコンビニエンスストアに立ち寄って買い物をしていた。  問題が発生したのはレジ清算のときのこと

[掌篇集]日常奇譚 第38話 黒子(ホクロ)

 ホクロを数えるとホクロの数が増えてしまう、という話を聞いたことがありますか? 「数える…

[掌篇集]日常奇譚 第37話 活字欠乏症

 ある日の昼間、仕事の関係で電車移動していたときのことだ。電車はポツリポツリと立っている…

[掌篇集]日常奇譚 第36話 蝉の恩返し

 蝉が嫌い、怖い、という人はけっこう多くて、理由をたずねると、やつら、ひっくり返って死ん…

[掌篇集]日常奇譚 第35話 金縛り自在マン

 子供の頃、金縛りに凝っていたことがある。 "凝る"ってなんだそれ? 金縛りなんて凝るよう…

[掌篇集]日常奇譚 第34話 ネームプレート社員

 ある意味ではフリーランスの特典と言おうか、大手の企業から小さな会社まで、ずいぶんいろい…

[掌篇集]日常奇譚 第33話 高速エスカレーター

 とある田舎町に住んでいたときの話である。町の名前は一応伏せるが、ニュースで流れたことも…

[掌篇集]日常奇譚 第32話 フエルアンブレラ

 傘は玄関の外に置く習慣にしていた。アパートの外廊下とでもいうのか。壁を這っているパイプや窓枠のあたりに傘の柄を引っかけて並べていた。狭いアパートなので当然のごとく玄関も狭く、そんな貴重なスペースに傘を置くと出入りするたびに邪魔になって仕方がない。それでいつのまにか外に置くのが常態化していた。  アパートまで来てわざわざ傘を盗んでいく人もいないだろうと思っていたのだが、さすがに外に並べていたのはコンビニエンスストアで購入できる安物のビニール傘ばかりだ。出先で雨に降られるたびに