[掌篇集]日常奇譚 第32話 フエルアンブレラ
傘は玄関の外に置く習慣にしていた。アパートの外廊下とでもいうのか。壁を這っているパイプや窓枠のあたりに傘の柄を引っかけて並べていた。狭いアパートなので当然のごとく玄関も狭く、そんな貴重なスペースに傘を置くと出入りするたびに邪魔になって仕方がない。それでいつのまにか外に置くのが常態化していた。
アパートまで来てわざわざ傘を盗んでいく人もいないだろうと思っていたのだが、さすがに外に並べていたのはコンビニエンスストアで購入できる安物のビニール傘ばかりだ。出先で雨に降られるたびに