#MTK_漂流詩 丑三つ時
丑三つ時って何時だっけ?
よく知らない、あんま意識したこともない。そもそもこんな言葉どこで知ったんだっけ。
こういう時、わたしって賢くないなって思う。よく言われる、美姫は馬鹿だねって。うっさいなと思うけど、ほんとのことだからあんま言い返せない。それに、馬鹿なわたしのことがわたしは割と好き。馬鹿なままでいたい、賢くてもいいことないもん。
後ね、自分が馬鹿だって知ってるのはいいことだと思う。これで何か得したこともないけど、それでもそんな気がする。だって損してないもん、ならいいじゃんって。自分のことたくさん知ってるのはいいことでしょ。
それと同じで、自分の外見のことを知っておくのも大事。これはもっとそう。大事で大事で大事なこと。それしか言えないけど、とにかく大事。自分がどのくらいかわいくて、どのくらいブスなのか。どこが素敵で、どこがブスなのか。どんな風にキラキラしてて、どんな風にブスなのか。
大事。
みんな結構人にブスって思うよね。しかも割と容赦ない、めちゃくちゃ言ってくる。簡単に言葉のナイフで刺してくる。ブスブスって。
うわ、ダジャレじゃん。やだやだ、おじさんみたい。
でもそういうこともあるよね。なんか、普通に言っちゃったみたいな。それで皆で笑う。楽しい。人間だもんね、笑うし泣くし、切ったら血が出る。
そう、相手は普通に笑うし泣くんだけど、それを忘れてブスとか言っちゃう。たぶん言われた方傷ついてる。人間だもん。
反対側もそうで、さっきまで普通に笑ってた友達が、ちょっとしたら誰々がブスみたいな話を始める。
さっきまで楽しそうだったのに!!
でも人間だから仕方ないね。それもきっと楽しいんだ。
だから、自分がどんな感じなのか知っておくのは大事。
だから、わたしは今日も携帯を見る。
これは、わたしの鏡みたいなものだ。それで思い出したの、昔聞いたおまじない。丑三つ時に鏡を見ると、何かが起こるみたいなやつ。何が起こるのかは覚えてないし、丑三つ時が何時かも知らないけど。夜中だよね、深夜。それで思ったの、わたし結構夜中に携帯見てるなって。これはわたしの鏡だから、たぶんどこかで丑三つ時に見てて、その時にわたしが気が付かないだけで、映っちゃいけないものが画面に映ったり、見ちゃいけないものを見ちゃってるのかもしれないなって。
怖いね。少し震えちゃった。
でも結局、この怖さを共有する相手は画面の向こうにしかいないから。私は私の鏡を触る。
べたべた。べたべた。触って向こう側にいるみんなと繋がる。
怖いことも、みんなと笑うと少しだけ怖くなくなる。人間だもん。人間って凄い。
それでもまだ、ちょっと怖い。それなのに、お手洗いに行かなくちゃいけない。でも、仕方ないよね。行きたくなっちゃう。人間だから当然そういうところには行く。ご飯を食べたら、お手洗いに行く。人間だもん。
勇気を振り絞って、お手洗いへ。用を済ませて、洗面所で手を洗う。うがいをする。吐き出す。もう一回する。吐き出す。何度も。吐き出す。うがいをする。吐き出す。お口から出てくるものが水と同じ色に戻るまで、戻っても吐き出す。お手洗いの臭い臭いにおいが消えるまで、何度も吐き出す。
鼻の中もお口の中もようやく綺麗になって顔上げたら、そこにブスがいた。
「誰だよお前」
そうかもしかして、今が丑三つ時か。
ほら、やっぱり。
賢くていいことなんてない。
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こちらの小説は、私が海月-Mitsuki-という名義で発表した楽曲『かわいいとか病む』の世界観に基づいて書かれたものです。
もしよろしければ是非曲の方もお楽しみいただければと思います。
かわいいとか病む MV
https://youtu.be/Kpcpu-2tBvE
かわいいとか病む lyric Video
https://youtu.be/-ZyxXASl1O4
Illust & Design dir. by ABYSS:
https://twitter.com/ABYSS56052854
Music production & writing. by 海月-Mitsuki-
https://twitter.com/Mitsuki_LP