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【感想】映画『傲慢と善良』

ネタバレあり感想なので、回避したい方はすぐに閉じてくださいね!!










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映画『傲慢と善良』を観た。
言わずと知れた辻村深月さんの小説が原作である。
だから、気になって観た。

とはいえ、小説を読んだのは随分前のことだし(刊行直後の2019年くらいだろう)、だいぶ内容は忘れていた。
だからこそ、実写を観る気になれたともいえる。
余談だが、どうも実写化によい思い出がなく――つまり一種のトラウマがあり――、好きな原作であるからこそ実写化は見ないことの方が多い。
前述したように『傲慢と善良』はだいぶうろ覚えの記憶になってきたので、新鮮な気持ちで作品を味わえると思い、映画館に足を運んだ。

結論からいうと、面白かった。
自分と重なることもあり、感情移入することもあった。色々と考えてしまい頭の中がとても忙しかった。
上映後の味わいとしては、なんだか小説とは違う未来のようにも感じたがそれは気のせいだろうか。気のせいかもしれない。


記憶に残っている映画の感想をつらつら書く。

真実の人物像について、小説だと最初はうすらぼんやり、段々はっきりしていく感覚があったが、最初からしっかりと存在していた。架と並び立つ人物として、存在していた。
架が婚活相手と会うシーン、架は変わらないのに相手がころころ変わっているカメラワークが好き。
真実が植物に水やりをしているシーン。それから枯れているシーン。架が水やりをするシーン。とても印象的だった。送別の花を握りつぶすところも、みずかの苗を植え替えるところも、みずかの花が咲くシーンも、思い返すと植物が印象的に使われていた。
真実と高橋さんとの距離が徐々に徐々に近づいていくのをみて、このままここで二人で慎ましく生きるのもありかな、と勝手ながら思ってしまった。でも真実はそんな気持ちは全くなかったのだろう。ただ親切な仕事仲間の気持ちでいたように思える。いや、架と再会するまではもしかしたら少しは気持ちがあったのかもしれない。それでも真実が選ぶのは鈍感な架なのか。東京なのか。許してくれる架なのか。それでも好きな、架なのか。

ちょっと気になったこと。
パンプス(※絶対長靴ではない。スニーカーでもなかった)で畑に来る? 歩くの大変でしょう。足挫くよ?

とはいえ、帰宅後に小説をぱらぱらと捲ってみたが、ものの数ページから何もかも違っていて、脚本家の方の力に脱帽した。
小説のエッセンスを抜き出して、たしかにこれはもう一つの『傲慢と善良』であった。
鑑賞後に感じたことと読後感が異なるのは道理だ。なぜなら違うものであったから。
ただ、小説を忘れて観る映画は面白かった。小説を覚えていたら原作至上主義者の自分が煩かったかもしれない。

最後に鑑賞中につらつら思ったことを書いておく。

真実に年齢が近いのでわかる気持ち、でも自分ではないのでわからない気持ちが混在した。
ネックレスを受け取るシーンで真実がなにに期待して、落胆しているのかが分かってしまって辛かった。
ホームパーティで一人隔絶されているようなどうしようもなさ、アウェーな気持ち。
婚約者の女友達に絡まれ、婚約者が言っていた自分への評価を聞いてしまった気持ち、不信感。
失踪したくなるに決まっている。
どこにも自分の居場所などないのだから。
しがらみであるはずの仕事も辞めており、頼りになるはずの家族や家族になる人が信じられない頼り難いのであれば、どこに逃げ場所があろうか。
私は物理的な居場所(家)を求めたが、真実は自分が役に立てる場所を求めた。
慣れない作業が板につくほど過ごし、馴染んでそこに居ついて幸せになる道もあったろうに、真美はそうしなかった。
それが真実の強さ、架との運命なのかもしれない。
運命など陳腐な言葉におさめるのは違うかもしれないが、婚活というビジネス恋愛の場において、ちゃんと恋愛ができる相手がいるというのは運命だ。運命だと、私がそう思いたいだけかもしれない。

終わりに。

グッズも眺めたが、婚約指輪のキーホルダーはさすがに買えなかった。いくらグッズとはいえ、人の婚約指輪はちょっと……。

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