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ピーターパンのネバーランドアドベンチャーで、私は確かに空を飛べた

ディズニーシーについにネバーランドが(も)舞台の新エリア・ファンタジースプリングスがオープンしたのももう去年の話。
ピーターパンがディズニーで最推しの私はもちろん知っていた。知っていたが「もう少し混雑が落ち着いてから行こう」と思っていたので2025年の2月11日にようやくFSに初めて行き、ずっと気になってたピーターパンのネバーランドアドベンチャーに乗った。

ピーターパンのオタクじゃない人も「泣きそうになった」と言うくらい評判が良いのは知ってて、あと映像酔いしそうと言われてたのも若干の懸念材料ではあったけどそれも確かめに行った。何せ私はランドのフィルハーマジックでほんの少し出てくるピーターパンを無限に擦ってるオタクなので、ピーターパンが主役の心アトラクションとか行くor行くの選択肢しかない。

首吊り人の木と地下の住処をモデルにしたような列の為のスペースを抜け、プレショーが始まる。無印映画のようにティンクが寝ているロストボーイズ(ここではロストキッズだが)を叩き起こし、鬱陶しがられつつもことの重大さを理解して飛び起きる。ピーターがやってきて「ジョン・ダーリングが誘拐された!助けに行こう!みんなもロストキッズとして手伝って!」と声をかけてライドに移動する、という流れ。
ニブス(うさぎの着ぐるみの子)が謎に女の子になってたり、ピーターの声が2と違う人(もっとショタっぽくなってる)とか、ジョン・ダーリングなんて彼がフルネームで言ってるところは聞いたことがないとか色々あったが許容範囲。ニブスについては一生「誰お前」って言うけどまあいい。すぐに喧嘩するロストボーイズ(頑な)に「気をつけ!」と一喝したり、ピーターの指示を敬礼して従う姿は無印映画そのもので、もうだいぶ感動していた。子どもの頃何度も繰り返し見たピーターパンそのものだったから。

映像酔いしそうという前情報の通り確かに酔いそうだった。けど、リーダーにつづけ(Following the leader)も歌詞付きで歌ってくれたり、映画のシーンさながらに行進してくれたり、タイガーリリーや彼女の村が出てきたり、ティンカーベルが妖精の粉を振りかけてくれて一緒に空を飛べたり、ウェンディにかけるのはちょっと嫌がったりしてるのに感動した。特にタイガーリリーにまた会えると思ってなくてそこで一回「え!?」って叫んだ。タイガーリリーのこともなかったことにしないでちゃんと入れてくれた。時代的に厳しいと思ってたから本当に嬉しかった。ウェンディと人魚たちがいつの間にか仲良くなっててちょっとおもろかったけどそれもIFでよかった。ちょっと性格丸くなったのかもしれない。令和なので。
迫力のバトルシーン。何がよかったって、私もロストキッズなので他の仲間と一緒に空を飛んで、海賊に攻撃をして、ジョンを無事に助け出せた。
そしてロンドンへは映画と違い船ではなく自分で飛んで帰る。ここは2っぽくて好き。そしてこのロンドンへの帰路から私の涙腺は一気に崩壊した。

まずロンドンへの帰り方が、ロンドンからネバーランドへ飛び立つシーンのオマージュだ。ほぼ再現と言ってもいい。水飛沫を立てながら水辺スレスレを飛んでみたり、変な軌道で飛んでみたり、ジョンの傘が開いてみたり、ビックベンの長針を勝手に動かしてみたり。あのワクワクするシーンをやりながらダーリング家に帰ってくる。You Can Flyの歌もあの時と同じ。あのざらついた音質の合唱。あれをVHSで何度聴いたことか。「考えてみよう 楽しいことを」は今でも気分が沈んだ時に私の脳内で流れ出して、ちょっとだけ気分を上向きにさせてくれる魔法のフレーズだ。私はずっと覚えていたから。楽しいことを考えて、信じる心と妖精の粉が揃えば空を飛べることを。
令和仕様のウェンディは、無印映画だとお母さんの代わりを努めようとしていたけれどこのアドベンチャーでは完全にロストキッズと対等で、あどけなくて、そのまま「またね」とお別れした。ここのダーリング姉弟はきっと、また何度もネバーランドを訪れるのだろう。ニブスがロストガールになっていたのもあるし、もしかしたらこの世界線はWW2なんて災厄は訪れず、ジェーンも年相応の子ども時代を過ごせるのかもしれない。ウェンディたちと同じように無邪気に「大人になりたくない」と願ってネバーランドに飛び立てたら、それはそれで素敵なことだと思う。

 
ナナのお尻も無事浮いたし(?)これでアドベンチャーも終わりかと思ったら。
「じゃあネバーランドに帰ろう」と私はピーターとティンクと再び浮き上がった。雲を突き抜け、どこまでも高く飛び、右から2番目の星に向かって真っ直ぐ飛ぶ。そこで見えたピンクと青の光を、私は知っている。見たことがある。映画でも出てくるネバーランドの入口。その光を抜けると絵本のような島の全景を見ることができる。私は、私はこの景色を知っている。英語版でも日本語吹替版でも、VHSでもDVDでも何度も何度も見て、幼稚園の頃から、大学生になっても見た。ずっと行きたかった場所。ウェンディたち越しでもなく、ジェーン越しでもなく、私自身が招待されてみたかった場所。そんな願いが叶うわけないのは分かってたし、ピーターパンもネバーランドもお話の世界の住人や場所であることも当然理解していたし、日本からあんな風に2つ輝く星なんて見えないし、サンタクロースに会いたい、と同程度の期待を持ったままやがて私は大人になり、大人ぽい思考をする度に時折「ああ、私はもうネバーランドに行けないんだ」とほんの少し寂しくなったりしていた。
だけどここFSでは私はロストキッズで、だから当然のようにネバーランドに帰ってきて、当然のようにロストボーイズたちと同じ穴蔵に帰ってきて宝物を取り合って遊んだ。
「いつまでも子どもでいてね」
無邪気にピーターは私に言った。映画公開時から随分経ったからか命令形じゃなくてお願いになってはいたけど、彼の無邪気さはちっとも変わっていなかった。
いつまでもピーターパンを好きでいていいんだ、ネバーランドに行きたいと思ってもいいんだ、空を飛びたいと夢を見ていいんだ。大人になるにつれあまり人に理解されなくなっていった「ピーターパンがディズニーで一番好き」という気持ちがこんなに丸ごと肯定されることってあるんだ。幼い頃、クマのぬいぐるみをピーターパンに見立てて一緒に遊んだことも、印象的な初めて空を飛ぶ子供部屋のシーンも、あの時のセリフも、音楽も、全部一気に蘇った。
左右に友達がいたにも関わらず、私は号泣した。私は、私が思っているよりずっとピーターパンのことが好きだったらしい。時代柄かなりエグみは取り除かれていたし、鶏の声真似は映画版の方が上手かったけど、それでも私の「好き」はここにあった。
胸を張って言える。私が一番好きなアトラクションは「ピーターパンのネバーランドアドベンチャー」だと。

ありがとうファンタジースプリングス。ありがとうディズニーシー。私の願いを叶える場所はここにあった。

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