ロングロング ア ボウズ
先日、おばさま方が美容室の話をされていた。
店長がイケメンで癒し系でさぁ、とか、
ついおしゃべりに夢中になっちゃった~とか云々。
それを聞くともなく聞きながら、
女性って、やっぱりこうだよなぁと思った。
私はやっぱり、らしくないのだ。
私は美容室が大の苦手。
まず、自分のしたい髪型がよくわからない。
どんな髪型が似合うのかもわからないので
清潔感のあるストレートのロングを
ここ数十年、ずっと続けている。
パーマもかけないので
未だに天使の輪があったりする。
だから、切るとなるとどうしていいかわからない。
髪型がずらっと並んだ雑誌を見ると、
好きなモデルの顔で髪型を選んでしまう。
自分とまったく似ていないのに、
この雰囲気いいな、で決めてしまう。
案の定、でき上がりはモデルとはかけ離れた感じになる。
髪型が決まったら、それを美容師さんに
正確に伝えるというミッションがあるが
それが本当のミッションインポッシブルで
うまくいった試しはない。
超、超、苦手。
それでも思い切って、「こうしてください」と言うと、
「それだったら、段が入りますけどいいですか」とか
「それはおっしゃる髪型とは違う感じになりますけど大丈夫ですか」
とか言われる。
つまりこれはある程度、カットや髪型の知識がないと、
正確に伝えることなんて到底無理じゃないのか?
そのぐらい、伝わらないのだ。
だから、「何センチ切りますか」と聞かれても
さっぱりわからない。
その髪型にするために、何センチ切るのかを判断するのは
美容師さんの方じゃ? とか思ってしまう。
メンドクサイですね、こんな理屈っぽいお客(笑)
そこで近年は髪型の写真を持っていくことにしている。
ところが、だ。
たいていの美容師さんはきちんと写真を見ないではないか。
なんで?
「あーはいはい、こういう感じですね。でも髪質がどうかなあ」
とか言いながら、チラ見するだけ。
結果は大抵、写真と似ても似つかない髪型になる。撃沈。
美容師さんとの会話も苦手だ。
「今日はこれからお出かけですか?」という
私的な質問に答えなくてはならないし、
「はい」と言ったところで、
向こうが知りたくもない話を無理やりするはめになる。
店舗によっては、アンケートを書かされる。
「スタッフと会話を楽しみたい」とか
「ヘアケアの相談にのってほしい」とか書かれていて、
ボックスにチェックマークを入れる。
私がチェックするのはいつも
「極力話しかけないでほしい」という項目。
どんだけいやなやつやと思われるだろうなあ。
でも、このアンケートは有益で
こうしておくと、必要最低限の会話しかされない。
スタッフさんも余計な気を遣わず、
カットに集中してもらえる。
そう、私は、心を無にして
カットの技術に集中してほしい。
ただそれだけを願っているのです。
病気を治してほしい患者と同じです。
治療に専念してください。
美容師さんと鏡の中で目が合うのも恥ずかしいので
切られている間は、目を閉じて寝たふりをする。
ときどき、どんなふうになっているのか、
片目を開けてそっと確かめるけど、
美容師さんが鏡を向いていない一瞬を狙わなければならないから
結構、技術がいる。
カットの前後のシャンプーは好き。
だけど、ほとんどは洗う指が優しすぎて、洗った感じがしない。
私は、マッサージさながら
ガシガシと地肌を洗ってほしい散髪屋のおやじタイプなのだ。
「強さこのくらいですか?」と聞かれて、
「かなり強くても大丈夫です!」と期待値ゼロで言ってはみるけど、
予想通り、強くはならない。
「これぐらいの強さで大丈夫ですか?」と洗いながら聞かれる強さが
さっきとほとんど変わらん的弱さなので、
「はい、ありがとうございます!」と感じよく言って強さ指示をあきらめる。
おそらく地肌を痛めるなどの、美容的配慮からでしょうが。
「かゆいところございませんか?」も同様。
どうせかゆみはおさまらないので、「はぁーい」と可愛い作り声であきらめる。
美容室は、私にとって、
「挫折」と「諦め」と「現実との折り合いをつける場所」だ。
それでも、
仕上がって、鏡の前で後ろ姿を見せられるとき、
「わぁ、綺麗になりました。ありがとう」は、
必ず笑顔で言うことにしている。
これは一生懸命、仕事をしてくれた美容師さんに対する、
最低限の礼儀な気がするのだ。
(いや、心の中は違うって言ってるくせに、この偽善者)
ちなみに、クレームはこれまで一度も言ったことはないです。
そういうことがありながら、
夏の初め、髪を洗う頻度が増えたので
ロングからボブまで髪をバッサリ切った。
そうすると、切ったはずなのに、
美容院に行く回数が増えてしまった。
髪型を維持しなくてはならないからだ。
これはやっかいだぞ。
それで今は、密かに
ボウズはどうかと思案中。
けど、周囲はアハハと笑うばかり。
「出家するんですか」とも言われた。
つまり、皆、まともに受け止めてはくれない。
どうせ私が本気でボウスにできるはずがないと
高をくくっているんだ。
だからいつかみんなを
あっと驚かせようと思っています。