マンガ史上、最も不遇、かつ恵まれた作品?『シャーマンキング』の本棚
『シャーマンキング』について
武井宏之『シャーマンキング』は、週刊少年ジャンプで1998年~2004年に連載されたマンガです。
2001年にはテレビアニメ化もされました。
主人公、麻倉葉(あさくら よう)をはじめとする「シャーマン」が「シャーマン・ファイト」を通じて「シャーマン・キング」を目指す物語です。
※上記は2001年に放送されたテレビアニメ「シャーマンキング」第1話のYoutube動画です。期間限定とされているため視聴できなくなる可能性があります。
『週刊少年ジャンプ』(集英社)での打ち切り
この『シャーマンキング』ですが、長期間の連載を経て、いわゆる「ラスボス」に向かう段階で、まさかの「打ち切り終了」となってしまいます。
「完全版」(集英社)での大量加筆と完結
『シャーマンキング』は打ち切りでの連載終了になったにも関わらずコミックス『完全版』が刊行された珍しい作品です。
この際、なんと「380ページもの加筆」がされ、見事に完結しました。
『完全版』最終巻の27巻は272ページですので、26巻の途中~27巻のすべてが書き下ろし加筆ということになります。
これで一旦、『シャーマンキング』の物語は幕を下ろします。
『シャーマンキング0(ゼロ)』(集英社)と続編『シャーマンキングFLOWERS』(集英社)
1990年代の人気マンガが、2010年代に続編などで再開するのは、この時期の特徴です。
代表的なものには『ドラゴンボール』『NARUTO』『るろうに剣心』などありますが、ここでは深く触れません。
なんにせよ『シャーマンキング』も、2011年に『ジャンプ改』にて2つの続編の連載がはじまります。
1つは『シャーマンキング』の登場キャラクターの前日譚を描いた『シャーマンキング0(ゼロ)』です。
※以下は現在は書店では流通していない「集英社版」ですのでご注意ください。
もう1つは『シャーマンキング』の主人公、麻倉葉たちの子ども世代を主人公とした『シャーマンキングFLOWERS』です。
※以下は現在は書店では流通していない「集英社版」ですのでご注意ください
連載雑誌の廃刊でまさかの中断
ところが、2014年に連載雑誌である『ジャンプ改』が廃刊となります。
それに伴い、『シャーマンキング0』『シャーマンキングFLOWERS』とも途中で放り出された格好となってしまいます。
ここまで不遇なマンガも珍しいのではないのでしょうか。
ところが、『シャーマンキング』はこの後、むしろ「恵まれた作品」といえるような展開を見せます。
講談社で復活
『シャーマンキングTHE SURPER STAR』(講談社)
2018年、講談社の雑誌『少年マガジンEdge』にて、『シャーマンキングTHE SURPWER STAR』の連載が開始されます。
本作では中断した『シャーマンキングFLOWERS』の補完を中心としつつも、作者の武井宏之の過去作品の登場人物や、後述するスピンアウト作品のキャラクターも登場する「武井宏之作品オールスター」的な側面も垣間見えます。
『シャーマンキング』(講談社)
その後の2021年、『シャーマンキング』の再アニメ化が決定します。
そのタイミングに合わせ、コミックスも講談社より再度刊行され、集英社の『完全版』にさらに加筆する形で全35巻で完結しています。
凝っているのは、集英社版の表紙イラスト(左)を講談社版(右)で再筆しているだけでなく、講談社版のカバー下に集英社版のカバーがついていることです。
これにより、約25年前との画風の変化も楽しむことができます。
『シャーマンキング FLOWERS』(講談社)
さらに集英社で再開の目途が立っていなかった『シャーマンキングFLOWERS』も講談社に移籍する形で刊行されました。
こちらは集英社で刊行された6巻までをもって完結とされています。
待望のペーパー版『シャーマンキング0(ゼロ) 2巻』(講談社)
また、ファンにとってうれしいのは講談社でも電子書籍でしか刊行されていなかった『シャーマンキング0』の2巻がペーパー版でも刊行されたことです。
ただし、背表紙のデザインの関係で、並べると若干のズレが。
豊富なスピンアウト作品群
さらにシャーマンキングが恵まれているのは、他作家によるスピンアウト作品が豊富に刊行されていることです。
まとめ
連載打切や連載雑誌の廃刊という不遇に遭いながらも、完全版で見事に完結、再アニメ化、講談社での再連載などが叶い、大量のスピンアウト作品が生まれたのも、作者の努力と作品への評価、そしてファンの声によるところが大きかったに違いありません。
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