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第5回「転機を考える」

みなさん、こんにちは。
キャリアコンサルタントの糸井です。
 
「転機」と聞きますと、何となくポジティブに変化することからイメージする方が多いのではないでしょうか。
 


「いや~あの時の出来事や出会いが人生の転機になりましてね、今の成功に繋がってるんですよ~。」
 
みたいな。
 
ですが、実際に人生における転機とは「良くも、悪くも」の双方があって、どちらにも目を向けていく必要があります。このコラムでは職業キャリアに軸を置いていることから、仕事という視点で転機を見ると、例えば就職活動をしている学生の皆さん、転職を志す方、双方それぞれ人生における転機を経験されていることになります。
 
余談ながら、殊、転職の点で考えますと、手前の話で恐縮ですが、採用活動をしていて候補者の方のレジュメに目を通せば大卒2年目、3年目・・・といった方も少なくなく、仕事における転機早いなあ~と思ったりします。転機はまあ転機なのでしょうけれども、なんとなく「今の環境は違う。きっと転職すればバラ色さ!」な方も多く見受けられるのが実態です。いや~。そうなんですかねえ~?
 

バラ色さ!


お話を戻しますと、転機とはいつ、誰にでもいろいろな形で訪れます。それは、他人から見たら大したことないと思われるようなことであっても、個人に影響してきます。では、どんなものが転機として挙げられるのでしょうか。
 
①   予期していたこと
→ある程度自分で選択ができたことで、不安はあってもあまり驚かない。
  例:結婚、就職、引っ越し、出産 など
 
②   予期していなかったこと
→自分でコントロールできなかった(予期していたことの対比でもあります)
 例:親族等との死別、天災、事故 など
 
③   期待していたことがおきなかったこと
 →きっとこういうことが起きる!と思ったら起きなかった
 例:昇進すると思ったらしない、希望の配属先ではない、結婚しようとしてできない など
 
上記のように期待していたことが起ころうが起こるまいが、全て「転機」であって、これらは個人の人生に変化をもたらす、と言われています。
 
では、もたらす変化ってなーに?というところですが、大きく4つあります。↓
 
・人生における自分自身の役割の変化
・人間関係の変化
・日常の生活の変化
・自分に対する見方の変化
 
仕事(社会人)の視点でなくても、学生時代その他、皆さんの人生には何らかの転機があり、それによって上記4つのような変化を(大なり小なり)もたらしたりしませんでしたか?「生活どうなっちゃうんだろう」「役割はどうなるのだろうか」「人間関係は・・・」といった具合です。


ネガティブ(不安、迷いなど)な転機に遭遇すると、人はうろたえたり、思考停止状態になったり、行動を制限したりしますが、それでは、いつまで経っても状況を好転できません。
 
そこで以前のコラムでご紹介したプランドハプンスタンスの考え方も一つですが、ここでは転機を乗り切るために必要な「4Sを点検してみる」を考えてみましょう。
 
 
☆第1のS☆ ~状況を見てみる(Situation)~
転機が自分にとってどういったものかを評価します、つまり起こっている状況をあなたがどのように見るのかという視点のことです(転機をポジティブとしてとらえるのか、ネガティブとしてとらえるか)
例えば、美味しいものを食べている時に、残りを見てあと「まだこんなにある!」と見るか、「これしかない・・・」と見るのかでは全く視点が異なります。
当然ながら、転機(変化)をポジティブなものとしてとらえるようにすると、乗り越えやすくなります。
 
 
☆第2のS☆ ~自分を見てみる(Self)~
自分の性格など、内面的な特性を把握します。
例えば、打たれ強く負けん気の強い性格か、それとも繊細で傷つきやすい性格かといった違いにより、転機への対処の仕方は変わってきます。
加えて、自身の過去の経験において似たような転機がなかったかを振り返りましょう。そういった経験は今回の転機を乗り越えるヒントになる可能性があります。
 
☆第3のS☆ ~自分を支援してくれる人を見てみる(Support)~
家族、友人、知人、キャリアコンサルタント、キャリアセンター、人材紹介エージェント・・・などなど、
転機が発生した際に、自分をサポートしてくれる人(「リソース」と言います)がいるのかどうかを考えてみましょう。
ただ、必ずしも身近な人が助けになるとは限りません。例えば、転職という職業キャリアにおける転機の場合、家族、友人、知人といった近い関係の人からのアドバイスは、案外役に立たない場合があり、第三者的な立ち位置(キャリアコンサルタント、キャリアセンター、人材紹介エージェントなど)からの客観的な視点と専門家からのアドバイスが役に立つことが多い、等といったケースです。
転機を乗り越えるためには、自分だけで何とかしようとするのではなく、外部のリソースにも目を向け、適切に利用することが大切です。
 
☆第4のS☆ ~戦略を考える(Strategies)~
第1~3のSを把握した上で、転機を乗り越えるために有効な手段は何かを考えていきます。戦略のパターンとして、

①   転機を作り替える
例)望ましくない転勤辞令に対して、会社側と交渉したり、納得できる条件を引き出す など

②   転機の意味付けを変える
例)再度早期に転職を余儀なくされたが、自分にとってより良い仕事が何かを考えるきっかけと考えている など
 
戦略を考える上で、組織の決定や相手の姿勢を変えようとする戦略は、結構な労力や重荷になることが大半です。
従って、むしろ自分を変えていく戦略を取っても良いかもしれません。たとえば上記②の例のように意図せず再度の転職に踏み切ることが、より興味のある業界を考えるきっかけになった、仕事とプライベ―トのバランスを考えるきっかけなどに通ずる可能性がある訳で、これも立派な、「戦略」である
と言えます。
 
最後に、これら4つのSを点検する過程で、リソースとして不足していたものを見直し、それらを活用するための具体的な計画を考えて、行動へと移していきます。
例えば、転職を行うに際して、友人や知人に相談するだけでなく、キャリアコンサルタントを活用するといった戦略をとろうと決めたならば、相談に出向き、一緒にキャリアプランを考えてもらうといった具合です。


みなさんいかがでしょうか。
私たちは人生において、多くの転機に直面します。
転機が生じると私たちは心身共にダメージを受けることになります。重荷、ストレス・・・そういったものを目の前にして途方に暮れるかもしれません。そして、そこから逃げたり、何もしない、という選択肢を取ってしまうと前に進めなくなってしまいます。誰も責任を取ってくれません。責任をとるのは自分しかいないのです。


そこで、上記のような4つのSを点検し、転機をポジティブに見据えることにより、それらの転機を乗り越えることができ、その経験を繰り返していくことで、物事に対応する力、克服する力をどの程度持っているのか徐々に自覚していくことができます。
それが延いては、変化の激しい時代や社会をうまく乗り越えることへつながり、「変化を活かす」人間へと成長していくことになるでしょう。

~Profile~
キャリアコンサルタント/ミツイワ株式会社 人財開発部 人財開発課長
糸井 圭吾(Keigo Itoi)
学習院大学 経済学部卒。外資系IT企業入社後、大手銀行向けSEを経験。
その後、外資系並びに国内系IT企業において人事職に転身し、企業制度
設計、評価システム導入、採用、人材教育等、人事業務全般に携わる。
2016年7月ミツイワ株式会社入社。人財開発部にて採用並びに教育責任者として現在に至る。
主な有資格は国家資格キャリアコンサルタント、キャリアデベロップメントアドバイザー、行動心理士、メンタルヘルスマネジメント など。