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【代表インタビュー・前編】今の投資は難しすぎる。直感でもできるわかりやすい投資とは?

こんにちは、三井物産デジタル・アセットマネジメントです。社名が長いので「MDM(エム・ディー・エム)」と覚えていただければと思います。

このnoteでは、当社が運営する資産運用サービス「ALTERNA(オルタナ)」に関する話をはじめ、お金や資産運用に役立つさまざまな情報を配信していく予定です。

まずはじめに、当社代表 上野のインタビューを前後編の2回に分けてお送りします。


三井物産とLayerXなどのジョイントベンチャー「三井物産デジタル・アセットマネジメント」(以下、MDM)。そこから生まれた新しい資産運用サービスが「オルタナ」です。

2022年度から金融教育が義務化され、NISA制度の抜本的改革など、私たちを取り巻く「投資」や「金融」の世界は、変化の時代を迎えています。

上野は20年以上金融、不動産の世界でキャリアを積んできました。上野がお金の仕事に身を投じたきっかけや、J-REIT(リート)立ち上げの経緯、それらを経て考える今の”投資”について思うことなどを聞きました。

2年間で20個の新規事業を“潰した”経験から学んだ、事業を「継続させる」難しさ

——上野さんは、新卒で三井物産に入社し、以後のキャリアを金融の世界で過ごしていらっしゃいます。金融に関心を持たれたのはいつ頃でしたか。

僕が三井物産に入社したのが2000年、最初は財務部に配属されました。大学では工学部で学んでいたので、その時がはじめて「お金」に真正面から向き合った経験ですね。その中でも、リスク管理のセクション——後に金融工学といった名前がつく領域を担当していました。「君、数学に強いんでしょ?」みたいな(笑)

工学部から三井物産って、当時はすごく珍しかったんですよね。俗に言う「文系就職」というやつで。

僕は「物を作る」よりも「事業を作る」ほうがおもしろそうだと思って、三井物産を選んだんですけど、その中でも財務部でのリスク管理は当時「ロケットサイエンティスト」などと呼ばれた仕事で、理系っぽいなと感じました。当時はそんなセクションを持っている事業会社はほんの一握りしかなかったんじゃないかと思います。

——財務部での後はどのようなお仕事に携わられたのでしょうか。

第1次インターネットブームで、「ネットを使ってサービスを提供する」というビジネスが多く立ち上がった時期でした。

その中で、ITと金融は親和性が高いのではと、社内ではずっとテーマになっていたので、2年目で新規事業部隊に異動になりました。「金融×IT」だったらなんでもいいから、とにかくアイデアを出して実行する部隊に投げ込まれて。

2年間で、20個くらい投資や事業開発にチャレンジしましたが、ことごとく失敗に終わりました。

貿易の電子化に関する事業を立ち上げたときなど、初年度の売上が2,100円で。今でも覚えているのが、当時の取締役がその売上を見て「この売上の単位はなんですか?」って。もちろん「円です」と答えたんですが、場が一瞬にして凍りつきました。

——2,100円は衝撃ですね……

そのときに、事業を0→1で作る大変さを身にしみて感じましたね。極論、資金を集めることは意外とできてしまうんです。だけどそこから、事業や売上をきちんと伸ばしていくのって、当たり前ですが簡単ではない。そのことを痛烈に感じた2年間でした。今考えると、よくあんなに失敗させてくれたなと思います(笑)

綺麗に離陸できなかったけど、やめなくてよかった。J-REIT立ち上げを振り返る

——そこからJ-REITの立ち上げに?

98年のアジアショックから始まり、不良債権処理の流れのなかで、不動産ファンドが少しずつ盛り上がり始めていたころです。ITこそ少し外れますが、「新しい金融事業」は僕たちがずっとやってきたことなので、そのなかに不動産を加えてみたらどうかとお話をいただいて。そこからJ-REIT立ち上げに繋がっていきました。

正直、個人で家も買ったこともないし、不動産の知識もなかったので、話がきたときは「え!?なんで!?」と思いましたよ(笑)。ですが、日本における新しい投資カテゴリを作るんだと思ったら、おもしろそうだなって。

でも、実際はじめてみたら、もうそれはそれは大変で。テナントさんとの関係づくりにはじまり、違法建築の治癒や、土壌汚染対策など思いもしなかったことも沢山。全然綺麗に離陸はできなかったけど、あの時やめていなくてよかったと思います。いい経験も苦しい経験も、本当にいろんな経験をしたことで、力をつけられたので。

——上野さんにとっての大きな成功体験だったわけですね。

REITをはじめとする不動産投資がわかりやすいのは、物件を買った瞬間に家賃が入ってくることなんです。テナントさんがついていてくださる限り、ビジネスとして成立する安心感がある。何十人、何百人かけて営業して「売上2,100円です」という世界じゃない、投資をする人にとってもちゃんとお金を生むものになるんだと、強く感じられた仕事でした。

金融リテラシーは“知識”ではなく“過去の事例”から学べ

——投資の可能性を感じられたご経験がJ-REIT立ち上げとのことですが、日本社会全体で見ると、まだまだ投資は一部の人のものに思えます。その理由はなんだと思われますか。

いくつか要素はあると思いますが、投資商品が難しすぎるのは大きな要因だと思います。例えば、自分がすごく応援している会社の株を買ったとしますよね。業績も伸びている。一方で、株価が半分になったとしたらどうでしょうか。

企業努力によって業績が上がり株価が上がる場合もありますが、金融環境によって業績はよくても株価は下がるケースはたくさんあります。相関性がある時とない時があるんです。むしろ、競馬のほうがある意味わかりやすい(笑)

——たしかに、そうかもしれませんね。

投資商品の主役が「市場モノ」なので、さまざまな要素が絡みすぎてしまっているんです。それを理解するためには相当のリテラシーが必要。とはいえ、皆さんがお金に関心がないかというとそうではないですよね。

ライフサイクルのなかで、どこでお金が必要で、どうすれば負担が減るのかを、自分の立場に立って教えてくれる人が少ないのも現状です。証券会社さんは投資を勧め、生命保険会社さんは病気になったときのことをお話する。

そうではなく、全体を俯瞰して、自分はどれだけ保険に回して、どれだけ投資すればいいのかをいいのかを知りたいのに、その配分を教えてくれる人はいなくて、結局自分で考えるしかないとなると、「ま、今じゃなくていいか」「やっぱり、わからん」というマイナスの循環になっている気がします。

——金融リテラシーを高めるためにはどうすればよいのでしょうか。

身も蓋もないことを言ってしまえば、「無理」(笑)。本当は、世界経済がどうなっていて、だから自分の資産をこう配分しよう、と行動できるのがベストですが、そんなこと理解するだけでも膨大な時間が必要で、行動に移す時間も無い。そうすると、結局「無理」が結論になってしまいます。

大事なことは、自分のお金ができるだけ減らずに、少しでも増やすためにはどうするかですよね。「あまりにも上手い話には乗らない」、当たり前ですが大事な視点です。どこまでが「投資」で、このラインを超えたら「詐欺」の世界かもしれないということだけは、きちんと学んで頂くべきだと思いますね。それは、そんなに難しいことでも無いので。

——2022年度からは金融教育が義務教育化されました。お子さんと一緒に金融知識を深めていくコツは?

一番実践的にやるとすると、世の中で起きた詐欺の事例などを、一緒に見てみることだと思いますね。こんな手口で、こんな人たちが騙されて、結果こうなりました、という「事実」が一番学びが多いんです。

三井物産での新人時代に、過去の課題案件を集めた「事例集」を使う研修があり、どこがまずかったのかを話し合う機会がありました。中には本当に!?みたいな事例もあって、大きな会社でもそういう学びを積み重ねてプロになってきた経緯があります。

ですから、教科書的な知識より、過去の事例から学ぶほうが教育としては実践的だと思います。もしかしたら、子どもと一緒に勉強しながら、自分の心のなかで「ドキッ」っとする人もいるかもしれないですね(笑)

すごくシンプルに表現すると、

「この人にお金貸して大丈夫かな」と考える感覚に似ている

と思います。相場の世界でも、直感を大事にされる方はいらっしゃいます。直感というと、何か適当に物事を決めている印象を受けるかもしれませんが、人間の脳はすごく高度に、さまざまな角度からプラスとマイナスの要素を並べて判断していると思います。

ALTERNAがご提供しようとしている商品も、「直感」に近い感覚・感性を大事にしたいと考えています。

後編へつづく

上野 貴司(三井物産デジタル・アセットマネジメント株式会社 代表取締役社長)
大学時代は工学部で機械材料を学ぶも、素材の限界に縛られずに事業やサービスを作ることのできる事業会社を希望して、三井物産へ入社。主に新規事業開発を担当し、入社4年目に不動産運用の世界に飛び込み、日本初の物流REITを設立。以来、これまでに法人立ち上げを4回行い、計16年の出向を経験している。当時、まだ社内だけでなく日本国内ですら黎明期にあった不動産運用事業を立ち上げの段階から、ひとつの事業領域まで育てた経験を持つ。その後、米国シリコンバレーに駐在したのち、現在は三井物産デジタル・アセットマネジメントを立ち上げ、出向中。