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【代表インタビュー・後編】お金に働いてきてもらう。ALTERNAが目指す新しい資産分散

こんにちは、三井物産デジタル・アセットマネジメントです。社名が長いので「MDM(エム・ディー・エム)」と覚えていただければと思います。

前回は、代表の上野に金融業界に身を投じたきっかけや、J-REIT(リート)立ち上げの経緯、それらを経て考える今の”投資”について思うことを聞きました。

後編となる今回は、サービス名である「ALTERNA(オルタナ)」に込めた思いや、MDMで成し遂げたい未来について聞いていきます。


オルタナは“お金のサードプレイス”

——「オルタナ」は「眠らせている預金を安定資産に投資し、社会を支える」新しい金融サービスです。立ち上げのきっかけは何だったのでしょうか。

原点は、リーマンショック時にREITの財務を担当していた時の経験が大きかったですね。当時、本当に銀行が機能不全に陥っていて、お金を借りたくても借りられない、返す時期も来ていないのに「返せ」と言われるような混乱した状況でした。そんな環境の中でも、いくつかの企業で資金調達に成功していたのが、「個人向け社債」だったんです。

個人の方は、ご自身の価値観に基づいて、それぞれ判断があって、自分が良いと思えば厳しい経済環境でも投資して下さる。まさに“多様性”の世界で、右に倣えの金融機関とは大きな違いがあります。「ちょっと世の中の状況は悪いかもしれないけど、今この会社に100万円投資しておけば、経済的には得かもしれない」と思う人は投資する。それはリーマンショック中も、その後にも見られた光景でした。

僕は財務部にいた頃からずっと「資金調達する側」の人間だったので、お金を出したいと思う人と、会社側が資金調達したい案件を効率的にマッチングさせて、お金を出して頂いた方にはちゃんと還元もする。そういうサービスを作りたいと思ったのが、オルタナの原点です。

——「オルタナ」はこれまでの金融サービスとは何が異なるのでしょうか。

投資というと、株式投資を真っ先に思い浮かべる方が多いと思いますが、(前編でも触れたように)会社の業績と株価が必ずしも相関しないなど、少し「納得感」に欠ける部分があります。金利や為替、景況感など多くの人たちの思惑が複雑に絡み合って株価が形成されますから。

一方で、銀行に預金として置いておいても、今の金利環境で大きく増えることはない。

ほぼ0のままで終わるか、プラスを手に入れるためなら望む以上のリスクを取らなければならない、すごく両極端な状況だと思います。

「オルタナ」というサービス名をつけた理由もそこにあります。リスクを取ってお金を増やすか、安全だけどそのままか。そのふたつしか選択肢がないように思えるけど、「本当に欲しいもの」はその間にあるはず

スターバックスは、職場でも無い、自宅でも無い、居心地の良い場所を提供するという意味で「サードプレイス」という概念を生みましたが、それと似ています。ご自身のお金がどの場所にあるのが心地よいのか、資産分散のサードプレイスとしてオルタナが選ばれてくれればいいなと思っています。

——不動産クラウドファンディングと近い商品性にも感じます

個別の不動産に、小口から投資できるのは共通した特徴です。オルタナの場合、機関投資家が扱うクオリティの案件を揃え、長期投資に適した安定感のある仕組みを使い、上場REITと同様のサービスレベルでプロが運用サービスを提供することが特徴です。

「不動産」は人によってイメージに幅がありますが、駅から遠いアパートと港区の駅近・築浅マンションでは価格の動き方やテナント付けの安定性が随分と違います。賃貸経営を安定化させるには、物件そのものも大事ですし、「大家さん」が誰かの影響も大きいですね。

今はまだ発行実績が少ないので、投資したものを換金するニーズは出てきていませんが、持っているものを売却することが仕組みとして可能になれば、より大規模で長期運用を前提とした運用商品を作ることも出来るようになります。ここは、不動産クラウドファンディングと大きな違いになると思います。

今までの証券に更なる利便性と親近感を

——お金の行き場所が2極化している「間」を担い、個人が自分の考えで資産分散できるのがオルタナなんですね。

そうですね、そういう意味ではバランスの良い安心感が大事だと思います。不動産は、ある物件を誰かに借りてもらって家賃を貰い、電気代などの経費を払って、残った利益から配当が出る単純な仕組みです。

家賃は毎月のように変動するものではないですし、マンションのようにテナントが分散されていれば、いきなり誰からも家賃が入らなくなる可能性はかなり低くなります。ただ、安心感がある分だけ、投資の利回りでみると株式より低くなるケースも、もちろんあります。

都心の一等地にある案件で考えると、今の相場では年間3%ぐらいの利回りですが、10年置いておけば単純に30%増える。自分の100万円に10年働いてもらうと、130万円になって帰ってくる感じです。その働き先が、日本橋の住居でも、汐留のホテルでも、草津の温泉地でも、好きなところを選べて、小口から投資できる。ひとつひとつは、投資のプロも手がけるようなクオリティを備える。これがオルタナが目指す姿ですね。

——加えて、オルタナは「デジタル証券」の技術も活用しています。

元々、証券とは自分が持っている権利を証明するためのもの。昔は、株券の裏側に名前を書いてました笑。それを単純にデジタル化しただけのものを「デジタル証券」と呼ぶケースもありますが、「それって本当におもしろいのかな」という疑問が、オルタナの出発点です。だって、今どきもう紙の株券もないじゃないですか。

金融の世界は、お金の流れと情報の流れが必ずセットになっています。デジタル証券という言葉を聞いて、皆さんが期待するところは、証券のあり方そのものも変化した上で、これまでアクセスできなかった情報に触れられたり、デジタルだからこそのユーザー体験を生み出したりすることだと思うんですよね。

僕たちが目指すことは、今までの証券にはなかったような付加的要素を積み増していって、より利便性の高い、親近感の湧くサービスを提供すること

です。たとえば、自分が持っている証券の1,000円分だけを、自分の子供にお小遣いとして簡単にあげられるようになったら面白くないですか?

——たしかに、一番実践的な金融教育ですね。

ベーシックな問いかけですが、「金利って何か」という問いに答えられる人ってあまり多くないと思うんです。でもそんなことを頭で理解しなくても、持っておいたら、いつの間にかお金が働いてくれて、1.5倍になったという経験は最善の金融教育ですよね。

もちろん、投資は100%成功するわけではありません。失敗して損が出ることも中にはあります。ですが、そういうネガティブな面も含めて、社会全体の投資のリテラシーを上げるためにも、成功・失敗の原因と結果がの関係がわかりやすい商品から入ることは大事だと感じます。

日本のお金の流れを抜本的に変えるのがMDMの目指す未来

——上野さんがオルタナやMDMで実現したい未来とはどういう世界でしょうか。

お金の流れ方を0から作り直すことですね。数年前に大河ドラマで渋沢栄一さんが取り上げられていましたが、彼が150年前に作った日本の銀行の仕組みは、蔵の中・床の下にあったお金を世の中に還流させ、資金調達ニーズに応えて経済を発展させるという意味で大成功しました。

銀行は、元本保証の預金で資金を集めますから、貸出先は安全な先に限られます。しかし、今の経済は低成長であり、VUCAと呼ばれる不確実性が高い時代。確実に収益が上がる機会は減り、金利と返済期日が決められているお金のニーズは減り、結果的にゼロ金利の時代になってしまっています。

一方で、融資ではなく、投資ならば、お金の活躍先はまだ広がる余地が大きい。日本政府が、「貯蓄から投資」を呼びかけている理由は、一つは資産形成ですが、もう一つは投資を受けたいというニーズを満たすことによる経済成長だと思います。

我々の仕事は、「ある人は出さないけど、別の人たちは出してくれる」多様な価値観を持つ個人投資家と、実際にお金を必要としている場を結びつけること。これまでは融資という立場で銀行が担っていた機能を、投資・証券会社という立場で僕たちが入り、マッチングを成立させる。そういう仕組みを作りたいと考えています。

社会インフラの整え方も、取り組み方によって変えられるところもあると思います。今は、国や地方公共団体が徴収した税金で、必要と思われるインフラ整備を進めていますが、資金配分を最適化する観点では、地域の需要に基づいた投資を進める必要があります。

「〇〇に橋を作る」という提案に対し、本当にそれを必要とし、賛同する人たちが投資して、ある程度の金額が集まればインフラ整備を実行する。投資した人は、ふるさと納税と同様に納税額を減らす。もしも、そういう仕組みを実現できれば、本当の意味での「民主化」が進むのではないかと思います。

——渋沢の『論語と算盤』を思い出させますね。彼は「利に喩らず、義に喩る」を引用しながら、私益の追求と共に公益の追求の大切さも論じています。

そうですね。僕たちが目指す姿は、資金を必要とする場所・人と、投資する案件を探している人を効率的につなぐ、「駆け橋」のような存在です。そうすることで、最終的には日本の経済の発展につながっていくはず。不動産や社会インフラへの投資を通じて人々の暮らしを便利にしながら、かつ投資による利益を得られるかもしれない。そういうふうに、お金の流れを変えていければ、良い仕事になっていくと思います。

その世界を実現するためにはオルタナが、皆さんの金融の「成功体験」を生み出す場所になることが、直近の目標ですね。

上野 貴司(三井物産デジタル・アセットマネジメント株式会社 代表取締役社長)

大学時代は機械系の学部で学ぶも、材料の限界に縛られずに事業やサービスを作ることのできる事業会社を希望して、三井物産へ入社。主に新規事業開発を担当し、入社4年目に不動産投資の世界に飛び込み、日本ロジスティクスファンド投資法人を設立。以来、これまでに法人立ち上げを4回行い、計16年の出向を経験している。当時、まだ社内だけでなく日本国内ですら黎明期にあった不動産アセットマネジメント事業を立ち上げの段階から、ひとつの事業領域まで育てた経験を持つ。その後、米国シリコンバレーに駐在したのち、現在は三井物産デジタル・アセットマネジメントを立ち上げ、出向中。