#5 クラシックサックスの名盤と名演奏家
はじめに
私はジャズサックス奏者ですが、クラシックサックスにも関心があり、クラシックサックスの名手や名曲に敬意を持って聴いています。この記事では、私が聴いたことのあるクラシックサックスの名盤と名演奏家と、サキソフォン四重奏をご紹介します。 皆様にも一緒に、魅力を感じて頂ければ良いなと思います。最後までお付き合いいただけると嬉しいです。
クラシックサックスの広まり
サックスは開発された当初は、軍楽隊やオペラのために作られましたが、やがてフランスの音楽院や作曲家たちの注目を集め、フランスやヨーロッパを中心に広まっていきました。 サックスを用いた初期の有名なオーケストラの作品としては、フランスロマン派ジョルジュ・ビゼーの1872年の「アルルの女」や、フランス印象派モーリス・ラヴェルの管弦楽へ1922年に編曲した「展覧会の絵」の〈古城〉でのアルトサックス、1928年作曲の「ボレロ」の途中でのソプラノサックスとテナーサックス、フランス印象派クロード・ドビュッシーの「アルト・サクソフォンと管弦楽のための狂詩曲」などが挙げられます。 そして、近代クラッシックサックスの開祖となった奏者が二人います。一人はフランスのマルセル・ミュールで、パリ音楽院の教授として多くの弟子を育てました。彼は新しい奏法や表現法を開発し、美しい音色と優雅な演奏で称賛されました。もう一人はシーグルト・ラッシャーで、ドイツ出身の主にアメリカで活躍したサックス奏者で、マンハッタン音楽学校、ミシガン大学、イーストマン音楽学校を含む多くの学校で教えました。有名な作曲家にサックスのための作品を多く発注した事でも知られています。例えば、イベールの「室内小協奏曲」やグラズノフの「サクソフォーン協奏曲」などです。 アドルフ・サックスの夢だったのですが、現代でもオーケストラの中では、レギュラーの楽器ではなく、特定の曲で使われたり、ポップスオーケストラなどで演奏されることが多いです。吹奏楽ではレギュラーの楽器として重要な位置を占めています。
以下は、私が聴いた思い出深いクラシックサックスの奏者とアルバムを紹介させて頂きます。
クラッシックサックスのおすすめアルバム
「サクソフォーンの芸術」 この3枚組のアルバムは、近代クラッシックサキソフォーンの開祖のマルセル・ミュールの演奏をはじめ、貴重な録音がたくさん収録されています。特に、イベールの「アルト・サクソフォーンと11の楽器のための室内小協奏曲」は、クラシックサックスの難曲の一つで、ミュールの見事な演奏が聴けます。デファイエ・サクソフォーン四重奏の美しいアンサンブルも聴きどころです。現代のサックスに慣れた耳でも、このアルバムの演奏は感動的です。
「愛の喜び」
デファイエはミュールの弟子であり、フランスクラッシックサックスの伝統を受け継ぎ、世界に広めた名演奏家で教育者です。彼の演奏した「愛の喜び」は、クラシックサックスの名盤の一つです。彼の音色は温かく、表現力は豊かで、聴く者の心に響きます。
「プロヴァンスの風景」 このアルバムには、フランスの現代作品の楽曲が多く収録されています。個人的にはアルバムの題名のもなっているプロヴァンスの風景の組曲が、気に入っています。サクソフォーンの様々な音色や表現力が、南仏の自然や文化を鮮やかに描き出しています。
「タイスの瞑想曲」
アメリカの偉大なクラッシック奏者で、上記までの奏者とはまた違った魅力を感じます。厳格で難しいイメージを持ちやすいクラッシックサックスですが、彼の自由な伸びやかな演奏を聴いた時は、とても開放された気持ちになりました。
「クラシカル・ロマンス」
マルサリス一家の長男で、ジャズサックスの王道を行くブランフォードが、弟のウイントンと同様にクラッシックにも真正面から取り組んでいる印象深いアルバムの一つです。ロマン派の作曲家の曲を中心に収録されていて、クラッシックの初心者の方にも聴きややすいと思います。
「サクソフォン協奏曲集 」
フィンランドのサックス奏者ペッカ・サヴィヨキがラーション、グラズノフ、パヌラのサクソフォン協奏曲をオーケストラと共演しています。私が高校生の頃、コンクールの自由曲でグラズノフの「四季 」より〈秋 〉を演奏したことが印象深く思い出に残っていて、同じ頃、その作曲家グラズノフのサキソフォンコンチェルトにも興味を持ち、音源を探している時に出会ったアルバムです。彼の演奏は、クラシック音楽の伝統に忠実で、優雅で力強いです。
「ザフレンチサキソフォン」
上記のアルバムとアーティストが気に入り購入した、こちらは、ピアノとのデュオのアルバムで、フランスのミヨーやブートリ、イベールなどの楽曲を演奏しています。粋な感じがします。
「ナイマン/ブライアーズ:ウエストブルック、サクソフォンワークス」
イギリスを代表する奏者で、クラシックを中心に幅広い活動をしています。この作品では、ナイマンや、ブライアーズといった現代の作曲家の作品を演奏しています。
サックス四重奏の魅力
サックス四重奏は、ソプラノ、アルト、テナー、バリトンの4種類のサクソフォーンで構成されるアンサンブルのことです。同じ属性の単音楽器が4人集まって出来る究極の形態の一つと言えます。現在では、クラシックだけでなく、ジャズやポップスなど、さまざまなジャンルの音楽を表現するサクソフォーン四重奏もあります。呼吸や仕草やのちょっとした間でタイミングを合わせたりしながら、音楽を作り出していくサクソフォーン四重奏が私は好きです。
以下では、聴いてきたお勧めのサクソフォーン四重奏のグループをいくつかご紹介させていただきます。
「ファースト&フォーモースト」
アポロサキソフォンカルテットは、イギリスの有名なサクソフォン四重奏団です。1994年発売のこのアルバムは、私が20才の頃の思い出の一枚で、このアルバムではチックコリアのチルドレンソングを演奏しているので興味を持ち購入しました。
「ブレシングレッスンズ」
1987年に結成されたアメリカのサックス四重奏団です。力強く繊細なアンサンブルグループだと思います。このアルバムでは現代作曲家たちに委嘱した5つの作品が収録されており、全て世界初録音です。
「サクソフォーン四重奏のためのクラシック・アレンジ曲集」
日本のサックスカルテットの先駆け的な存在で1991年(私が17才)のころに買った思い出のアルバムで、クラシックの有名なカルテットで取り上げられる曲を演奏しています。
「プレイズデュークエリントン」
アメリカの個性的で実力のあるジャズサックス奏者たちが結成したサクソフォーン四重奏団です。ジャズのスタンダードやオリジナルの作品を演奏し、即興やアレンジによって、サクソフォーン四重奏の可能性を広げました。彼らの演奏は、自由でエネルギッシュで、刺激的です。
「オールザサックスユーヴエヴァードリームドオブ」
アメリカのサックスカルテットの一つです。このアルバムではクラシックやジャズ、ラテンなどの様々なジャンルの曲をサクソフォンでアレンジして演奏しています。
「ライブ」
イギリスのサキソフォンカッルテットのライブアルバムです。
ジャズ志向の強いオリジナル曲や、スタンダード曲をパワフルでテクニカルに聴かせてくれます。私がバークリーに行っていた当時に、サックスのシャノン・レクレア先生のアンサンブルクラスで彼らの曲を取り上げて演奏したのが楽しい思い出です。
あとがき
この記事では、私の好きなクラシックサックスの名盤と名演奏家を紹介しました。私はクラシックサックスやカルテットの情報は、現代の事はあまり詳しくは無いのですが、今も素晴らしい演奏家が活動していると思うので、皆様も是非チェックして、作品を聴いたり、演奏会に足を運んでみてください。 皆様にも、楽しんでいただければ幸いです。最後までお読みいただき、ありがとうございました。