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クリート調整の方法について

クリート位置の調整は多くのロードバイクライダーにとって親しみがあるものの、同時に悩みの多い課題の一つです。気軽に交換ができるものの取扱説明書が付属していることもなく、ありふれた方法を参考にしながら行なっている状態だと思います。フィッターになる前の自分も、もちろん皆さんと同様に取り付けや交換を行なっていました。

フィッティングのインタッビューの現場でも、「正しいクリートの位置がわからない」といった相談を頻繁に受けます。ここでは、クリート調整の基本的な方法とその重要性について詳しく説明します。

クリート調整には大きく分けて2つのタイミングがあります。

1回目の調整はフィッティングの初期段階で行われ、クリートをシューズの中央にセットし母指球と小指球の真ん中のあたりに取り付けます。左右差は着けづに真ん中に留めます。にこの段階では、次のステップに控えているサドルやハンドルバーのポジション調整を妨げないためにニュートラルな位置にクリートを設定し、ペダリングの感覚を極力感じやすいようにします。この工程は、ペダリングの最初の感触を確認しつつ、ライダーの体の特性に合わせたフィッティングの基礎を固めるための重要なステップです。

2回目のクリート調整はフィッティングの最終段階でおこなわれ、サドルの高さやハンドルの位置が決まった後におこないます。実際のペダリング時のシューズの動きや膝の動きを観察してクリートの微調整を行います。

例えば、膝がO脚の場合には、クリートを内側に寄せる調整することで膝の動きを安定させることができます。ペダリング時のフローティング角度(クリートの可動範囲)を調整することも、ライダーの膝や足首の動きにフィットさせるために重要です。左右のペダリングフィールの差をクリートの位置合わせで調整を行いません。これにより、ライダーの自然な動きを損なわない調整が可能となり、ペダリング効率を最大化することができます。

これらの微調整は、目視や感覚だけでは限界があります。そのため、RETULFITなどのモーションキャプチャー技術を活用することが効果的です。高度な計測技術を駆使することで、ライダーの下半身の動きを詳細に捉え、最適なクリート位置を見つけ出すことが可能となります。プロライダーでも、自分の身体の動きを完全に理解しているわけではなく、客観的で科学的な分析が求められるのです。フィッターは、ライダーが気付かない体の動きを捉え、新たな視点を提供する役割を担っています。

さらに、ペダルやシューズの選択もクリート調整と同様に重要な要素です。多くのライダーは、ペダルの回転の良さや機械的な性能だけでペダルを選んでしまいがちですが、フィッティングの観点から最適なものを選ぶことが求められます。

例えば、初心者には最上級グレードのペダルではなく、体の可動範囲に適用しているモデルやブランドを選ぶことが重要です。同様に、シューズに関しても最上位モデルが必ずしも適しているとは限りません。ライダーの体力やペダリングスタイルに合った硬さのインソールやシューズの選定が、パフォーマンス向上に直結します。これはゴルフのシャフト選びに似ていて、プロが使う最高級のものがすべての人に最適とは限らないのです。

ペダルやシューズの適切な選択は、フィッティングの成功に影響します。ライダーの技術や体力に応じた機材の選定が、ライダーの快適性や効率的なペダリングをサポートし、パフォーマンスの最大化に繋がります。私の考えとしては、ライダーの技術向上や快適性を最優先に考えることが、フィッティングの本質であると信じています。

また、クリートの調整だけでなくペダリング技術も重要です。多くのライダーは、クリートやサドルの位置に注目するあまり、実際のペダリング技術の向上を見落としがちです。ペダリング技術の向上は、全身の動きの連携を良くし、クリートの微調整がもたらすメリットをさらに引き出すことができます。たとえば、適切な力を入れるタイミングや足首の角度の調整は、効率的なパワー伝達を実現し長時間のライドでも快適さを維持します。

結論として、クリート位置の調整はライダーのパフォーマンスを大きく左右する重要な要素であり、その調整にはライダー一人ひとりの身体特性やペダリングスタイルに合わせた個別対応が求められます。リアルタイムの測定データに基づくフィッティングと、ライダーの自然な動きを尊重した調整が、最適なパフォーマンスを引き出す鍵です。フィッターはライダーの潜在能力を最大限に引き出すためのパートナーとして、精密なフィッティングと的確なアドバイスを提供することが使命であり、クリート調整もその一環として欠かせないプロセスです。

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