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治安について 南北アメリカ自転車縦断 グアテマラ(2)

12月26日朝、リオ・ドゥルセを出発。この日は70㎞ほど走って、マヤ文明の遺跡の1つで世界遺産になっているキリグア遺跡まで走る。

国道13号線から国道9号線に入り、西へ。国道13号線は非常にのんびりした田舎道で、その分走りやすかったが、国道9号線に入った途端にトラックが沢山通るようになる。国道9号線はカリブ海に面する港から首都グアテマラシティに通じる道なので、まあ交通量が多いのも仕方ないけど。

キリグアまで残り30㎞のところで雨が降り始め、更に残り10㎞のところでパンクする。連日のパンク。もうタイヤもチューブもボロボロでだましだまし走っている感じ。グアテマラシティの少し先のアンティグアという町に日本人宿があるので、そこでしばらく滞在する間に日本から装備を送ってもらう予定なので、もう少しの辛抱。

午後1時過ぎにキリグアの村に着いて、まずは宿にチェックイン。1泊40ケツァル(600円)。超ベーシック、かつ部屋に窓があるのだが、その窓が宿主家族が使う廊下に面しているのでプライバシーもあまりない部屋だった。

宿から遺跡へは広大なバナナプランテーションの中を歩いて行く。大体どの木も下の方は刈り取られていて、上の方にまだ刈り取っていない実がある。不思議なのは、どの木もなぜか下の方に1本だけバナナが刈り取られずに残っているのである。なぜ全部刈り取らずに、1本だけ実を残すのか。何か理由があるのだろうが、よく分からない。

遺跡の入場料は25ケツァル。ただしグアテマラ人はたったの2ケツァル。外国人は12.5倍の料金だがこれはまあ仕方ないだろう。

この遺跡は建物よりも石版が有名で、複雑な彫刻が彫られているかなり大きな石版を見てまわる。石板の彫刻は確かに「昔の人がよくまあここまで、、、」と思えるくらいに良かったが、それよりも印象に残っているのは、なぜか私に付いてきて一緒にまわった男の子二人組。特に話をしたわけでもなく、顔を合わせるたびにお互いにこっと笑うだけの静かな交流だったがこれはこれで良かった。(、、、と思うその一方で、こういうときこそスペイン語が出来ればよいのに、とも思う。)

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翌日も国道9号線を西へ向かう。いつも食事はスーパーで買ったもので済ませてしまうのだが、この日は道路沿いの食堂に入ってみた。建物がいかにもオンボロで、だからきっと安いだろうと思ったのである。(私は貧乏性なので、一人で外食する場合に立派な建物の食堂とボロい建物の食堂があったら必ず後者を選びます(笑)。)

タコス2つで5ケツァルだったので、4つ注文する。飲み物入れて計13.5ケツァル(約200円)。タコスはロール状になっていて、中に肉が巻かれている。その上に野菜がドッサリ乗っている。美味しかったし、何よりもボリュームがあって大満足。タコスの本場メキシコで食べたどのタコスよりも良かった。(←メキシコで一体どんなしょぼいタコスを食べていたんだ?)

満足して出発するも、しばらくして3日連続のパンク。修理して再度走り出すが10㎞ほど走ってまたパンク。さすがにこれだけパンクが続くと走るのが嫌になってくる、、、。

西に向かうにつれて、景色の方はこれまでのジャングル地帯から半乾燥地帯のそれに変わった。カリブ海側と太平洋側でこんなにも景色が変わるのが面白い。今までは無かった比較的大きな山も見えるようになる。

4時半ごろ、街に入ると立派な大聖堂が見えてきた。時間も良いころ合いなので、この町で宿を探すことにする。この町はサン・クリストバル・アカサグアスティアンという町で、首都グアテマラシティからちょうど100kmのところにある。宿はすぐに見つかった。1泊60ケツァル(900円)でバストイレ、更にはテレビ付きの部屋だった。

早速街をぶらついてみる。ここの大聖堂は今まで見たどの大聖堂とも違っていた。建物自体は白いのだが、正面の壁の中央に赤で人の顔が描かれていて、その顔から赤い炎のようなものが四方八方に出ている。キリストというより、マヤの太陽神のようだ。これは私の勝手な想像だが、宣教師がマヤの人々をキリスト教に取り込むためにこのようにしたのかもしれない。

大聖堂の背後の山々に夕日が当たり、赤で染まるのがきれいだった。

帰りに飲み物を買おうとして店の中にいたら、突然男女の警察官が入って来て、私に向かって外を指さし「こちらに来い」と合図をする。店には客は私しかいなかった。彼らの顔が険しい。

えっ、何??
こちらは何もやましいことはしていない。

彼らと一緒に店の外に出ると、男の警官に「ドンデ・ナントカ」と聞かれる。「ドンデ」は「どこ」という意味であることは知っていたが、その後は聞き取れなかったので、「ハポン(日本)」と答え、そして英語と身振りを使ってこの町のホテルに泊まっていることを伝えると、なんだそうか、という顔をして行ってしまった。(しかしこちらに対しては無言だった。)

そばに停車していたパトカーに戻ったところを見ると、どうやら彼らは私が店に入るのを見て、パトカーを停めて追って来たらしい。きっと人違いか何かだと思うが、わざわざ店の中を覗いて私に声を掛けるのは尋常ではない。

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翌日は延々と続く坂を登って、首都グアテマラシティへ。交通量はもちろん多く、走っていてもあまり楽しくなかったが、前方に富士山のような美しい山がずっと見えていた。

グアテマラシティは標高が1533mある。標高が高いだけあって朝晩は冷える。ジャングル地帯を走っていたときはずっとTシャツと短パンだったのだが、久々にトレーナーを着た。

グアテマラシティは当然のことながら大都会で、マックもバーガーキングもあったが、夕食はせっかくなのでタコスにしようと思い、街をぶらぶら歩いていると、安食堂の看板に「タコス・チーノ」とあるのを見つける。安かったこともあり、買ってみたら実は春巻きだった。なるほど。

グアテマラシティのホステルで一緒になった韓国人バックパッカーが数日前に強盗にあったときの話をしてくれた。ズボンのポケットに財布を入れていたが、後ろから思いっきり押されて、その隙に取られたとのことだった。

中南米は残念ながら犯罪率が高い国が多い。実際、「地球の歩き方」を始めとするガイドブックにもかなりおっかないことが書かれていたりする。

私は実はかなりいい加減な人間なので、貴重品の管理のような面倒なことは嫌いである。実際、貴重品を自転車バックに入れたまま平気で店や食堂に入るし、自転車にカギをかけることもしない。(そもそもカギは最初から持っていない。まあ、こんな荷物満載の自転車なんて誰も盗らないだろ、と思っている。)

今回の旅行では今のところ危険な目には全く会っていないし、何も取られていない(たぶん)。むしろ現地の人々の親切に触れてばかりだ。

それでも多少は気を付けなければ、と思った。

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12月29日、グアテマラシティから45㎞離れたアンティグアに到着。この町には有名な日本人宿「ペンション田代」がある。そして私はそこで「沈没」することになる。(「沈没」とは、バックパッカー用語で1ヵ所に長期滞在することです。)


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