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娘に最強のケンカ方法を伝授する。|エッセイ

今日娘とお風呂に入りながら「ケンカ」の話になった。

私の娘は、私の娘なのでとても激しい。

激情型の人間が2人で生活をしていると、ぶつかり合うことも多いが、娘は私とだけでなく、学校にいる天敵ともトラブルになっている。

最初はケンカをしないよう止めてみたりなだめてみたり、先生に相談したりしていたが、冬休みに入って距離ができたことで、少しおさまっていたのだった。

ところが今日またトラブルになりかけたという。

それもまたいつものパターンで、天敵のT君が娘にちょっかいをかけて、それに怒った娘が手を出したが、先生が止めてくれて攻撃をするに至らなかったということらしい。

逆ももちろんある。

何かしらで娘が近づいていって、ちょっかいを出し、T君が怒って手をだす。

先生も「お互い近づかなければいいのに、なぜか気になっちゃうんでしょうね。」と話していた。

そんなことがもう10ヶ月以上続いている。

そこで止めてもダメなら、正しいケンカ方を伝えた方がいいのではと思うに至ったのだ。

思い返せば、私も小学生のころ、よくわからない理由でよく男の子とケンカをしていた。

記憶の中では何もしてないのにやられた、というイメージだが、そんなわけはないのだ。

私のことだから、なにかしらぜったい仕掛けている。いまならわかる。

記憶はないが、とにかく難癖をつけられてたことに過剰反応していたのだろう。

私が大げさに反応するのが面白くて、からかっているうちに、叩かれたのが痛いとか、反撃されてプライドが傷ついたとかで、相手の憎悪も増し、こちらも怒りが止められず、問題が広がっていったことが推測される。

この手の問題は「自分が変わらなければ、相手は変わらない」という事を、いいだけ大人になってからやっと知った。

結局自分を変える方が手っ取り早いし、確実なのだ。

そこで娘に聞いてみた。

「どうせケンカするなら、負けたくないでしょ?確実に勝つための方法を伝授するからやってみない?」

いつもケンカをやめるよう説得する話になると、上の空になる娘が興味を持って話を聞いてくる。

「まず、大前提として、ケンカは先に手を出した方が負けだから。
正当防衛という言葉があって、自分が危険な目に遭った時、やむ得ない事情なら反撃しても良いとされているんだ。
だから負けたくないなら絶対先に手を出してはいけないよ。」

その言葉を聞いて負けず嫌いの娘は「ぜった負けたくないから、先に出を出さない!」と言い出した。

そこで、さらに調子にのって続けてみた。

「1番いいのは、弱い奴らを相手にしないこと。弱い奴ほどよく吠えるから、ピーピーなんか言ってくる奴は全員弱いやつだと頭に置いて。

弱いのに強いあなたにケンカをふっかけてきて、やり返したらみんな泣いちゃったり、先生にチクられたりするでしょ?

だから、弱い奴らは無視する。弱い奴がなんか吠えてんなって思って無視しとけばいい。

相手も強くて先に手を出してくるなら、こっちのもんだよ。正当防衛でやり返せばいい。」

やり返す時はどこをやればいいかと聞かれたので、尻を蹴るのが1番お互いのダメージが少ないが、やられた方は屈辱的なので良い、と伝えた。

これは激情型の小学生の私が編み出した方法である。

1人で本を読んでいるのが好きなくせに、曲がったことが大嫌いで、キレたら手がつけられなかった激情タイプの私のミニチュアの娘。

違うところはいっぱいあるけど、自分で自分を許せていなかったこんな困ったぶぶんは、遠慮なく目についてしまう。

だからこそ、今までケンカはしてはいけません。みんなに優しく。みたいなぜんぜん娘に響かない話をしていたのだった。自分もそんなこと納得できていなかったのに。

ケンカの方法を話したら、暗くなっていた顔が明るくなったのでひとまずはよしとしよう。

「ママもケンカしてたんだね!」とニコニコになったことも書いておく。

「ママもケンカなんかしたくなかった。だから無視できるならそうするのが1番いいと思う。」とも伝えておいた。

ナイフの子はナイフなのだ。
ちょっとづついろんなものを切りながら、研ぎ澄まされたカッコいいナイフ。

しっかりたたんで隠しといておきながら、危険になったら開いて使えるようになるといい。

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稲橋 閃
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