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写真集を作るということ 2

 「路上の温度計」は何故に縦位置だけなのかということですが、実は2005年の新宿ニコンサロンでの展示の際には当時の最新デジタル一眼レフで撮った横位置の写真も多数展示しています。一方でこのリバーサルフイルム、645カメラ(富士GA645W、プロニカRF 645)による縦位置の写真も同じように100点以上展示しました。

 もともと、縦位置を好んで撮っていたわけでもなく、週刊誌や月刊誌の仕事もしていなかった私としては、やはり横位置がメインでした。しかし、645レンジファインダーのファインダーをのぞくとそのまま縦位置がフレームとして提示されていますので、そのまま素直に撮ると縦位置になってしまうのです。カメラを縦にするとファインダー内は横位置になるのがちょっと面倒。という軽いノリで撮り始めたものです。

 カメラについてはいずれまた話をするとして、写真集制作の経過に話を戻しましょう。

 ポジフイルムを仔細に見直し、とりあえず150点の写真を新たに選び並べました。本来ならば、ここに「プリント」があればよいのですが、撮影当時はこのポジのままアサヒカメラや日本カメラの編集部に預けページを組んでいただくというのが普通でした。したがってこの「路上の温度計」には小さな見本プリントが存在しません。(展示プリントはそのままある友人の会社の倉庫にパネルになったまま眠っているはずです) したがって、今回はこの選び出した小さな粗い画像をデザイナーの方に見せるということになりました。このコロナ禍ですから、もちろんメールなどで送り、好きなようにさらに写真を選んでいただき、仮のレイアウトへと進んでいきました。確か11月あたりだったと思います。

スクリーンショット 2021-03-01 10.10.43

 そして、若干の入れ替えはありましたが昨年12月には107点ほどの写真が決まりました。それらをまず印刷原稿用に分解 (スキャニング)しデーター化します。それらは印刷会社のお仕事となります。同時に早速印刷用紙との適合などのために「テスト画像」を印刷してもらいます。いわゆるテスト色校正です。これらの作業は1月の正月過ぎに慌ただしく行われました。

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 デザイナー、そして私の観点からそれぞれの画像について一枚づつ詳細に色校正として補正などを指示します。 (上の写真は私の指示です)今回写真展もありますので、この時点で私はプリント用のRGBデーターを24点印刷会社からいただきました。それを再度私のPC上でプリントに最適な状態に補正します。私の方はここでプリント出力に集中します。今回はかなりの枚数を出力し個々の調子にこだわっています。

 さて、いつだったか、やっと待望の表紙のデザインもでました。今回は禅フォトギャラリーのシリーズ写真集の一巻ですから、これまでのデザインの流れが色濃く反映されています。このあたりも、どうなるのか楽しみでした。書き忘れていますが、アートディレクションとデザイナーは柿沼充弘さんです。テキスト原稿などもここで再確認。

PRRGBのコピー

 これまでの私の本にはないような斬新でドキドキするような表紙になりました!

 そして1月末のレイアウト入稿、色校正、そして2月に入り今回は「出張校正」という印刷会社・東京印書館のスペシャリストのご意見を仰ぐといった特別な時間が待ち受けていました。これがとても面白い、私にははじめての経験だったのです !   

                                                                                                               つづく


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大西みつぐ / 写真家
古くから様々な読者に支持されてきた「アサヒカメラ」も2020年休刊となり、カメラ(機材)はともかくとして、写真にまつわる話を書ける媒体が少なくなっています。写真は面白いですし、いいものです。撮る側として、あるいは見る側にもまわり、写真を考えていきたいと思っています。