鉛筆で書いた谷川さんの電話番号
「地球へのピクニック」の最後のページに
鉛筆で小さく書いた
名前と文字がある
杉並区成田東……
谷川俊太郎
03-….-….
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Windows98が発売されてすぐのころだった。
子育てに奮闘しながら作っていた公開前のホームページ。
プロフィールには
love「花」と「バイク」と「谷川俊太郎」と書いてある。
「生きる」を掲載したいと思った。
だけど、、
素人が勝手に掲載してもいいのだろうか?
パソコンが一般家庭に出回り始めた時代に、
私が考えたことは、
「出版社に電話して聞く」の一択だった。
なぜかというと、
演劇の世界から離れてすぐ、
an・anに載っていた新しい女性の仕事
「フラワーコーディネーター」という記事を見て心惹かれた私がとった方法が、
集英社に電話だったからだ。
雑誌に載っていた方の連絡先を教えてもらい、
会いに行き、アドバイスをもらえた(のちに花屋になった私もananで何度か花仕事をした)
「地球へのピクニック」
出版社に電話した。
「インターネットね~」
「う~ん、商用じゃないのはわかりましたが、お答えしかねますので本人に聞いてくれますか?」
「えっ!はい!!!!」
「住所は、、メモいいですか?」「はっ!!!はい!!!」
時代だったんだと思います。
心臓をバクバクさせながら電話。
「はい。谷川です」
「○○と申しますが、谷川俊太郎さんいらっしゃいますか」
「家内ですが、いま留守にしております」
個人のホームページということ、
自分と「生きる」の出会いなど、なるべく簡潔にお話しした。
奥様は「谷川には私から伝えておきますね」と穏やかに快く了解くださり、
「ありがとうございます」とまで言っていただけた。
メモした紙から、興奮を落ち着かせ、
「地球へのピクニック」の最後のページに、
住所と名前と電話番号を鉛筆で小さく書いた。
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ひねくれ、ネガティブな自分が、
夢を思いブランコに乗りながら口にした「生きる」
デザインに惑わされながら、
そのセンスと美に頭を叩かれた「ひとり」
恋に迷い、
揺れ動いた「女へ」
愛しい娘たちと、
パジャマではしゃいだ「もこもこもこ」
母と女の狭間で、
苦しんだ「真っ白でいるよりも」
年齢を重ね、
読み返す「谷川俊太郎質問箱」
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花屋だから
自分のために
花は飾らない
ただただ
花を求める人の
笑顔が見たいだけだから
だけど
今日は
花を飾ろう
花屋だからね
選び放題
ひねくれた私の心を
いつも側で包んでくれた
谷川さんに
花を
花を飾るんだ