【ネタバレあり】お笑いオタクによるこたけ正義感さんの『弁論』の感想と考察みたいなもの

1.はじめに

いろんな人がおすすめしていたこたけ正義感さんの『弁論』を駆け込みで見た。
YouTubeのタイトルはこたけ正義感『弁論』ではなく、こたけ正義感の『弁論』なので『弁論』というのは、単独ライブの名前ではなくこたけ正義感の所有物なんだなと思う。(この「の」は所有の「の」だと思った)

漫談だと思っていた。
お笑い芸人さんによる漫談は、独自の解釈から生まれる偏見だったり、針小棒大で話すイメージがあったが、「弁論」にはそれがあまりなかったように思う。

このnoteでこたけ正義感さんのことを何と読んだらいいのかわからないので、以下「彼」とする。

YouTubeの『弁論』のアフタートーク(と呼んでいいのか分からないが)で彼がnoteに長文の考察を書いたら喜ぶと言っていたので、それを真に受けてこのnoteを書いている。
私もいろんな人の考察に目を通したが、リーガルチェックをしていたり法律的な立場からの考察だった。以下、お笑いオタクの私の感想とちょっとした考察。

2.本人登場まで

この『弁論』は、青年が弁護士法第一条を読むところから始まる。
本編では後ろにスクリーンを投影することもあったので、投影や本人朗読でもいいのにと思った。特に彼はお笑いで遊ぶタイプの人間ではないので、この演出が意外だったがきちんと伏線回収されていた。
読んでいる青年も暗転するまで顔を上げ、顔が見られる時間を長くしてくれている。(普通は読み終わったらすぐはける)
文字をスクリーンを投影しなかったのはスクリーンを見ていたから青年の顔を覚えていないという言い訳を排除するためだろう。だいたい1分ぐらい。私は顔も内容も覚えていなかった。ごめんね、青年。

3.登場と肖像権の話

こたけ正義感の漫談ライブ『弁論』が正式名称らしい。漫談(ただただ喋る)というカテゴリーの『弁論』、前言撤回。
「(お客さんの肖像権について)今日は話し合っておきたくて」と言い、お客さんのところへ行きしゃがみこむところが、2023年の令和ロマンのM-1の決勝の「みんなで話し合いたくて(曖昧)」のパロデイっぽかった。エンタメ開始の合図?

まず最初にお客さんに話しかけ、更に「一人目が同意したら次の人が拒否しにくい」など共感を持たせてお客さんとの心理的距離を近づけている。賢く見られたいお客さんに対する話の持っていき方が上手い。あなたたちは違いますけど、知ってるかもしれませんが、とか枕詞を使用したり敬意を表してくれている。

肖像権の話をしながらも、時折映るお客さんの顔がぼかされているのが弁護士らしいのか優しいのか。

4.弁護士だと知られたときあるある

「(さっきの自分の話で)弁護士が言うから執行猶予つくんやろうなと半分思ってるでしょ」で共感の笑いをとるとともに(この半分というのがミソでお客さんも半分なら自分はアホではないと思える)他人事じゃないよというメッセージにもなっている。ちなみに不動産屋さんの役の時は左を向き、自分が話す時は右を向いていた(友達の時は逆だった)。トルコアイス屋さんの店員さんは弁護士バッジが分かるのだろうか。私は分からない。

5.勉強の話

「ルールの使い方を学ぶのが法律の勉強」という話、わかりやすかった。
ここで彼のwikipediaを見ると、彼の人生が私の人生と少しニアミスしていることが分かり
にやけた。

6.一般人の法律知識

弁護士界の話をしたときに「僕ら」を「僕ね」と言い直していた。言い直す前の「僕ら」は、自分と弁護士たちを表していたのか、自分と弁護士全員を表していたのかはわからない。もし僕ら=自分と弁護士ならお客さんは僕らの外にいることになる。私もたまにライブで推しが「僕ら」と言ったとき「僕ら」の中に私が入っていないことを突き付けられて悲しくなることがあるから、この感覚を持っているのはすごい。言い換えることで僕ら=僕+お客さんが成立している可能性を残してくれている。
特殊な人のエピソードトークをしつつも、きちんと法律の概念についても話していた。

7.パートナーとの喧嘩解決のコツ

話の持って生き方が上手い。喧嘩解決の手順「時に証拠を持ち、順番に論点を整理していく」、ためになる。そして、感情の解決の仕方が満点すぎる。もはや感情の解決だけでいい。それまでのクールモードからの急なかわいさ、緊張と緩和、すごい。

8.袴田事件

何も知らないので、純粋に話が面白くて興味がわいた。広報として完璧すぎる。一切、茶化さない。一方的に誰かを叩かないし、強い肩入れもない。

9.冤罪

「記憶力は曖昧」なことを笑いを交えつつお客さんに実感してもらっていた。恥ずかしさではなく笑いに変えていたのがさすが。笑いに留めず、冤罪について見つめ直した人も多そう。

10.被疑者・被告人は犯人じゃない

お客さんに被疑者、被告人の意味を紹介した後に検察庁の子供向けのページを紹介。きちんとフリが効いててウケていた。ウケるということは、被疑者・被告人の意味がお客さんにも伝わったということなので、それだけでも大成功だと思う。

11.オチ 名誉棄損になりかねないですよ

弁護士やなぁ~と芸人やなぁ~の両方を揃えた完璧なオチ。

12.アフタートーク

「エンタメですから、全部」がよすぎる。
全部事実の弁護士の『弁論』ではなく、芸人の『弁論』である。

最後に

①お客さんを置いていかない
法律という難しい話題なのでお客さんが離れてしまうとウケなくなる。お客さんに質問し、お客さんの中でイメージを膨らませてから本筋に入っていた。

②事実を笑いにする
誰かを下げて笑いをとるのではなく事実(発言)やツッコミで笑いを取っていた。他の芸人さんと面白いというポイントが全然違う。袴田事件では茶化すことなく血液型コンプリートなどシリアスを笑いに変えている。

③フリがしつこくなく丁寧
フリがめっちゃ効いているから面白い。

④法律について自分ごととして捉えられる
ただ法律について学ぶだけではなく、その背景も理解できるし自分も気をつけようと思える。


以上。

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