27時間テレビ カギダンススタジアムでのダンスへの取り組みを見て考えたこと

な粗品ゲームに引き続き、カギダンススタジアムも見た。

カギダンススタジアムのTVerはこちら
【全編】

【後編】

1.カギダンススタジアムとは

27時間テレビのラストを飾るのは日本一たのしいダンス決定戦! 全国の応募から厳選された7チームの高校生たちが生放送でダンスを披露 各チームに新しいカギメンバーが合流し、本気のダンスに挑戦 審査基準は「観ている人を笑顔にできるか?」 果たして日本一たのしいダンスを踊り優勝するのはどのチームなのか!?

TVerの紹介文より引用

霜降り明星のせいやさんがラジオで、カギダンススタジアムはダンスと笑いの融合でダンスの中に「笑い」を取り入れるのが難しいと語っていた。27時間テレビ放送終了後に自身のYouTubeチャンネルで自分は「笑い」に比重を置きすぎた、全チーム「笑い」が主軸とは言えず、情報共有が不十分ではなかった、と振り返っている。

カギダンススタジアムで感じたダンスへの向き合い方の違いを主観を抜かずに書きたい。
決してチームや個人の批判ではない。
いろんな取り組み方、向き合い方があると感じただけである。

2.岩手県 花巻東高等学校×岡部大(ハナコ)

テーマ:アニソン
指導者 :熱血スパルタ
雰囲気:指導者との主従関係
特徴:開部して2年も経っていない。
カギメンバー(岡部さん)のスタンス:生徒の1人

スパルタコーチ、これぞ私のイメージしていたダンス部そのものである。
ASAYANのアイドルオーディションのダンス練習を彷彿とさせる雰囲気。
平成時代に高校生だった私の高校のダンス部も厳しい先生だったので、これがダンス部だと思っていた。まさにトップバッターにふさわしい。
水休憩があるものの水分補給が終わったら走ってコーチの元へ集合。
体育会系である。

コーチが「岡部さんが一人で自主練しているのに、部員は誰もしてない」と叱咤するシーンがあり、岡部さんが「コーチ、それ以上言わないで。みんなごめん」と言っていた。岡部さんも完全に生徒の1人になっていた。

3. 三重県 三重高等学校×秋山寛貴(ハナコ)

テーマ:家族
指導者 :優しいパパ
雰囲気:和気あいあい
特徴:地域の人たちにダンスを披露したり一緒に踊ったりしている
カギメンバー(秋山さん)のスタンス:違和感なく溶け込める真面目なお兄さん

指導者がロングコートダディの堂前さんに似ている。長く見ているとスマイルの瀬戸さんにも似ている。満面の笑みで踊る姿ができないくらい穏やかな雰囲気の方。

このダンス部は地域へのイベントにも積極的に参加していて、年間100ステージくらい行っているらしい。そのイベントで5歳くらいの子供が踊っている様子が映し出されていたがその曲がCreepy NutsのBling bang bang bornだった。(私のnoteを見てもらえれば分かるが私はCreepy Nutsファンだ)。高校生や小さい子どもまでもがCreepy Nutsの踊るなんて、と感慨深い気持ちになった。

番組側が意図しているのか分からないが、指導者よりも生徒を映す回数の方が多かった。ある生徒が「秋山さんがこれだけ頑張っているのだから私達も頑張らなきゃ」と発言をしていた。花巻東高校と違い、生徒側からそんな発言が出て、それを聞いた他のチームメートは泣きそうになっていた。
自主性の尊重、令和のダンス部。

秋山さんが自主する隣で生徒が応援したり、コツを教えたり、秋山さんができるようになって自分のことのように喜んでいた。秋山さんは友達感覚で部員たちとご飯を食べていたし、同じ机の島に指導者もいて、学生たちも自然体でなんだか平和だった。秋山さんも言っていたけど、本当にいい雰囲気なのが伝わる。多くの部員たちが家族への感謝も伝えていた。そして秋山さん自身も岡山の家族に会いに行っていた。

本番のダンスでは、指導者が怒る演技をしたり(全然怖くない)、小道具も大きく作られていたり、分かりやすいストーリー性で誰もがストーリーを理解できる、感動するダンスだった。

4.神奈川県 KADOKAWA DREAMS YOUTH×せいや(霜降り明星)

テーマ:モノマネ
指導者 :プロ(プロとして通用するための技術を教える)
雰囲気:プロを目指す、落ち着いている
特徴:高校の部活ではなくプロのダンス集団
カギメンバー(せいやさん)のスタンス:プロ

特筆すべきは、せいやさんが1人のプレイヤーで終わらず、他のメンバーに指示を出したり意見を言っていたことだ。
せいやさんがチームを引っ張っていたし、ダメなところもきちんと指摘していた。
せいやさんは高校生としてではなく、プロとしてチームの生徒たちを見ていた。せいやさんの頭の中が「ダンスを使ったネタ」をプロのダンス集団と一緒に作る、というモードだった。
チームの生徒たちもせいやさんのお笑いに対する熱意に共鳴し、ダンスへのモチベーションを上げていた。切磋琢磨していた。

ダンスとお笑いの融合がテーマで、誰ともかぶらない武田鉄矢のモノマネをダンスに選ぶところにせいやさんのプライドと他のカギメンバーへの優しさを感じた。高校生がプロということもあり魅せ方について自分の意見を言い、改善していく、妥協しなかった。

しもふりチューブでも言っていたが、せいやさんは笑いに振り切ったので本番前にメンバーに優勝はないと謝っていたらしい。プロの芸人としての経験と経験からくる落ち着き、メンバーの優勝できなかったらどうしようという不安を本番前に取っ払う優しい行動だ。

5.東京都 宝仙学園高等学校女子部×長田庄平(チョコレートプラネット)

テーマ:平成のギャル
指導者 :あまり前に出てこない
雰囲気:楽しみながら真摯に向き合っている
特徴:唯一の女子高
カギメンバー(せいやさん)のスタンス:エンターテイナー

小道具へのこだわり、ダンスで上下の動きが少ないという長田さんの指摘から、長田さんはエンターテイメントとしてダンスに取り組んでいた。
せいやさんは自分が面白くてお客さんも面白いと思うダンスをしていたが、長田さんは自分よりもお客さんが面白いと思うダンスを作り上げていたように思う。
長田さんが「めちゃくちゃ楽しいダンスショーにしたい」と言っていた。
根詰めて取り組むのではなく、自分も楽しんでいて、最年長としての余裕や余白を感じた。

小道具もたくさん使っていた。
私にとって小道具は出オチの飛び道具に過ぎなかった。しかしこのダンスでは小道具があることでより濃度の濃い世界観になっていた。めっちゃすごい小道具なのに、小道具が1番印象に残らない。

さすがコント師、長田さん演じる中年教師の悲壮感がたまらなかった。あの先生がダンスをするなら、そりゃあの顔だろう。うん。
行き過ぎていない、人間性を感じられる表情だった。

お笑いとしてのオチをきちんとつけ、顔芸で締めていて「お笑い」が本筋にあった。

ネタバレになるが、優勝しなかった。長田さんは泣いていた。これも優勝できないと悟って舞台に上がったせいやさんとは対照的だった。そしてせいやさんが一番最初に声をかけていた。人の痛みが分かる男や。
これぞエンターテイメント。


6.埼玉県 武南高等学校×松尾駿(チョコレートプラネット)

テーマ:夏祭り
指導者 :いない
雰囲気:自主性
特徴:ダンスの構成、音響など全部生徒たちで行っている
カギメンバー(松尾さん)のスタンス:理想を現実にする

顧問の先生はいるけど、ダンス未経験で実質生徒たちで全部やっているチーム。
松尾さんは大のテレビっ子ということで、27時間テレビも大好きだったらしく、ナイナイ岡村さんの話をしていた。確かにカギメンバーだと、松尾さんが岡村さんのポジションになるので、岡村さんに自分を投影していたのだと思う。

この高校のダンス部は10ジャンルのダンスがあるのだが、松尾さんが全部踊り、ずっと出続けると宣言した。ダンスの練習中、辛そうな表情も多く、休憩時間を1人で過ごす中、ムードメーカーの女の子が「覚えることより楽しみませんか?」と言っていた。
指導者、芸人さんがこの言葉を言うパターンはあったが、生徒の方から言うのは初のパターンだ。そこで松尾さんのダンスへの向き合い方が変わった。
私がダンス部だとして、いきなりやってきた芸人さんが全部のダンスを踊ると宣言し、踊れなくて落ち込んでいるのを見て、こんな声かけはできない。さすがだ。

せいやさんは芸人、長田さんはエンターテイメント、松尾さんは27時間テレビ内での位置づけ、あるいは理想像に比重を置いていた。松尾さんは「カギダンススタジアム」の位置づけを、高校生にも伝えていた。番組サイドの考え方だ。

本番、ダンスを踊るまでのVTRで相方の長田さんがずっと唇を嚙みしめていて、ダンスが終わってようやく口を開いて笑顔になっていた熱い場面もあった。

宣言通り全部踊り切って好成績を残した。
生徒へのインタビューで、インタビューされた生徒が自分の事ではなく松尾さんの事ばかり話していた。

岡村さんが必死にダンスを覚えているのを見ていた松尾さんが岡村さんになろうと決意し、自分も必死になって岡村さんを越えなければという重圧があっただろう。生徒たちにカギダンススタジアムの重みを語って良い恰好をしていたのに自分が一番足を引っ張っていることへの立場のなさや情けなさなど他のカギメンバーとは違うプレッシャーもあったと思う。
全力で取り組み、全力で楽しんでいた。

7.福岡県 北九州市立高等学校×丸山礼

テーマ:恋愛(丸山が出会ったクズ男編)
指導者 :冷静
雰囲気:女子
特徴:リーダー立候補制
カギメンバー(丸山さん)のスタンス:感情がそのまま顔に出る

ダンス部も女性が多く、ザ・女子高生という雰囲気だった。

丸山さんもまた女子だった。
プレッシャーを抱え、最後に爆発。
教えてくれるメンバーの声掛けにも応じられないほどだった。

丸山さんが本音を言わないからチームメートも本音で向き合えずに、気を遣う。

男性と同じ土俵で弱みを見せずに1人でお笑いという世界と戦ってきた丸山さん(私の想像)が、同性と同じチーム、しかも完全な味方。仲間でありライバルという芸能界の厳しい環境ではなく、助けてくれる仲間がいるのだ。どうしたらいいのか分からない部分もあったと思う。

丸山さんが泣き言を言っているVTR後の本番での堂々としたパフォーマンス。
プロ。

ただ丸山さんが序盤で顔で笑わせていた意図がいまいちわからなかった。男性に振られる1人の女性を描くならば、最初にあのキャラにしてしまったらもったいない。せめて振られたけど今は幸せだということを表現するために結末に持ってきた方がよかった気がする。ツカミとして必要なのか。

過去の男たちを見返すために踊っていたからなのか、ダンス後チームメイトへの言及が少なかったし、2位だと分かって「いい思い出になりました」とすぱっと切っていたのが印象的だった。まだ踏ん切りがつかないメンバーもいるだろうに、結果が出たからそれで終わり、ダンスは過去のもの(思い出=過去ととらえる私が一般的ではないかもしれないが)と言っているように感じた。

同性同士(男性部員もいるが)だからこそ感じることもたくさんあったんだと思うし、男性陣とは違うプライドや女性特有の何かがあっただろつ。丸山さんはモノマネをしているので観察力や洞察力もあるからより敏感に感じる部分も多かったと思う。

令和にする発言じゃないかもしれないが、男性が多いチーム、あるいはチームではなく自分のためだけに頑張る環境(丸山さん自身もカギダンススタジアムのオーディションメンバーになる)だったらまた違った丸山さんが見れたかもしれない。

8.韓国 1MILLION×菊田竜大(ハナコ)

テーマ:ゾンビ
指導者 :有名振付師。勝ちにこだわる。
雰囲気:韓国のアイドル練習生
特徴:途中でテーマ変更あり
カギメンバー(丸山さん)のスタンス:みんなを信じる

韓国からの参戦。
外国ということもあり、菊田さんがメンバーと直接練習する回数は少なそうだったし、ダンステーマ変更も菊田さんへは事後報告だった。

他のチームの場合、テーマはカギメンバーも一緒に考えていたが、このチームは指導者が決定、メンバーが変更を申し出るという特殊ケースだった。

素晴らしい感動的なショーで、素人目でもダンスも飛びぬけて上手なように見えた。けれども、点数は芳しくなかった。そこに「楽しい」が入っていなかったからだと思う。

もし違うカギメンバーが参加していたら、テーマはどうなっていたのだろう。

他のチームでもチーム同士、あるいはチームメンバーと芸人さん同士の励まし合いがあったが、このチームでは少なかったように見えた。個人主義に近かった。ある審査員も他のチームのコメントで信頼関係がないとできないダンスだと発言していたが、日本のダンスの目的にはダンスそのものではなく、協調性やチームワークの育成も入っているのか。

本筋には全然関係ないが、外国人の吹き替えはなぜ綺麗な声なのか。地声に近い人がやればいいし、字幕でもいい。このダンスプロダクション(?)に所属している白人の女性のインタビューの吹き替え声は高く、黒人の女性の声は低かった。地声まではきっちり確認できなかったが、もしその吹替を当事者が見たらどう思うのか。

9.最後に

ダンスはただ踊るだけではなく、ダンスへの向き合い方、チームメンバーとのコミュニケーション、魅せ方など全体を考えないといけない
私が中学生だったらダンス部に憧れたかもしれないし、
本気が伝わる心に残る企画だった。

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