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「あなたには理解出来ない。」映画JOKERが狂気の中に示したもの。

映画「JOKER」を見終わって出て来た言葉は、

これは、簡単には人に勧められないなぁ。だった。



主演のホアキン・フェニックス主演の「her/世界でひとつの彼女」という映画を数日前に見ていて、そのイメージが頭の中に少しある中でこの「JOKER」を見たのだけど、同じ人が演じているとは思えないほどの衝撃を覚えた。


人は、ここまで演じることが出来るのかと。

表情や声、しぐさだけじゃなく、
骨格が、身体つきが、姿勢が。

あの骨格は作り出されたものなのか、
それとも元々のものなのか。

医学を学んだ者からすれば、後天的に骨格は変えられないというのは常識のもの。
でも、もしかしたら、この骨格は映画を撮る為に作られたものなのかもしれないという考えも拭きれない。

それほどまでに演技が素晴らしかった。


内容的にはどこまでも救いのないもので、
救いとしてあげるとすれば、リー・ギル演じる「ゲイリー」くらいだろう。
「君だけは僕に優しかった。」そのセリフに尽きる。

それでも見終わった後に不思議と後味の悪さのようなものは無かった。


アメリカがざわついている


この映画の公開にあたり、
アメリカでは、映画館が「子供に「JOKER」を見せないように。」と声明を出し、(映画館が「子供に『ジョーカー』を見せないように」と警告)


アメリカ陸軍やロサンゼルス市警やニューヨーク市警がざわついているとのこと。
公開週の週末は特定の劇場で警備の数を増やすことになっているほどだ。

米国の『ジョーカー』公開週末に、特定の劇場でニューヨーク市警察による警備を行うことに
「ジョーカー」公開で警察、米陸軍が警戒態勢強化へ


実際に映画を見るまでは、
過剰な反応なんじゃないかな。なんて少し思ってたけど、
映画を観てみて納得。


この映画はそれだけの影響を与えうるものだと。

僕には、この映画を簡単に勧めることは出来ない。
今まで観て来た数多くの映画の中でも数少ない心を揺さぶられた作品であることはたしか。

普段まず書かない映画評を書こうと思ったほど心を揺さぶられた。


書かずにはいられなかったと言っても良いのかもしれない。
自分の中の狂気が顔を出してしまっているから。
書かなければ消化しきれないという気がしてならなかったから。


簡単な答えがあるべきではない

この「JOKER」という映画は、DC発祥のキャラクターであるジョーカーが如何にして生まれたのかを描いた映画だ。
そして、トッド・フィリップス監督が

「愛情の欠如や子供時代のトラウマ、思いやりの欠如がテーマ」

と語っているように、狂気の元となるものについて描いた映画でもある。

表面的に見れば、ジョーカーの狂気にあてられ、ジョーカーに共感してしまう人が出てくることは否定できない。


しかし、映画のメッセージとも言える深い場所にあるものへと目を向ければ、
希望もあるだろう。
なぜ、ジョーカーは生まれたのかを理解すれば、
どうすればジョーカーを生み出さずに済ませられるのかのヒントが得られる。


今の世の中だからこそ生まれた映画だと思うし、
これからの世の中に必要な映画なのかもしれない。


奥底に何があるのか、そこに人々を導くものは何か


映画の残酷さに目を背けるのではなく、
その奥底にあるものへと目を向けることが、
この映画を観る上で大切なのではないかと思う。


それは中々に難しいことなのかもしれない。
純粋であればあるほどに、
社会の残酷さを知らなければ知らないほどに。

だからこそ、
映画館が、異例とも言えるメッセージを発信したのだろう。


気持ちは分かる。
この映画を観て、ジョーカーに惹かれている自分がいるのも確か。

狂気は生まれたのではない。
解放されただけ。


これがなんとなく理解できるからこそ、
最後のセリフ
「あなたには理解できない。」
の怖さが分かる。


あなたには私のジョークが理解出来ない。という意味以上のものが込められている。

環境が違えば、
顔を出す狂気が自分の中にもあるから。


この映画は1人で観ない方が良いですよ。
孤独は狂気を加速させるから。


スマイル 〜本当の悪は、人間の笑顔の中にある〜

善悪を決めるのは何か?
そして、それはどこにあるのか?

本当の悪は、人々の笑顔の中にあるという強烈なメッセージを発している。「JOKER」という映画は、間違いなく映画史に名を残すことになるだろう。

きっと、記録も残すことになる。

公開初日のレイトショーでこの映画を観に行き、
市の中心部でもない映画館でほぼ満席という状況だった。
それほど注目度が高いということだろう。

この映画は子供には勧められない。
それは確かだ。

しかし、いつか知るべきことが描かれている映画でもあると思う。
僕らが生きる現実では、残酷なことが時に起きている。
そこから目を背けるのではるべきではない。

悪はどこから生まれるのか。

そのひとつの可能性を描いているこの「JOKER」という作品。
世の中のことを考えている人は一見の価値があるだろう。

狂気を知ることに価値がある。

時に共感し、
時に哀れみ、
時に嫌悪し、
時に魅せられる。

自分と重なる部分と決して重ならない部分、
その両側を見つめながらこの作品を観ると良いだろう。

主演のホアキン・フェニックスの鬼気迫る演技、
そして、ジョーカーの要と言えるあの笑い声。
それを観るだけでもこの映画を観る価値があるのかもしれない。

狂気に震えてみるのも良いだろう。
自分の中の本質、狂気を揺さぶられる作品。
こんな作品はそうそう無い。


「JOKER」
映画館でこそ観たい作品。
劇中の楽曲がジョーカーへの変容を上手く引き出していて、
IMAXで観るべき作品なのかもしれない。

fin.

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