赤い天使 赤い衝撃
「何じゃこれ⁈」と描いた画面に驚く。カエルの卵か⁈文具店のペンの試し書きか⁈
自分の絵に青い画面が増えたせいで、ピカソの青の時代を思い出し、薔薇色の時代に変えようと描いてみたら…こんな画面が…ボツにしようと思ったが、この赤で衝撃的な映画を思い出した。
『赤い天使』増村保造監督 若尾文子ヒロイン役。1966年製作。
増村保造監督と言えば、TVドラマ、山口百恵さんの”赤いシリーズ”や堀ちえみさんの”スチワーデス物語”の脚本演出。また、統制厳しい戦中にありながら人間味溢れる行為をする、勝新太郎さんと田村高廣さん共演『兵隊やくざ』も監督されていたとのこと。『赤い天使』を見てから知ったこととは言え、この監督作品は全部好きかも…と想像してしまった。
若尾文子さんと言えば、ソフトバンクのCMで白戸家のおばあちゃん役で、今も健在なお姿を拝見できる。50歳年下の彼氏(松田翔太さん役)と結婚された役どころ。役中でも可愛くファンタスティック。
『赤い天使』の衝撃…主人公は前線の従軍看護婦。就任直後から患者達に輪姦される。婦長も事実を知っていて「またか。」と苦々しい顔をするだけ。
驚きの始まりだが、それは序章に過ぎず、野戦病院らしく、次々に生と性が生々しく描かれている。戦争の痛ましい現実。幾つもの大きなバケツに無造作に投げ込まれた手足。薬も不足する中で負傷した手足は切り落とすのが兵士を生かす道と、毎日毎日切り落とされる手足。処置をする軍医は心を病み、麻薬漬け、そしてED。その軍医に恋する主人公。戦争は救った命をまた、戦地に送り出し、前線では雨霰のような砲撃で兵士達は皆死に行く。
設定だけでも、目がくらくらした。白黒映画なのに、血のドロドロとした色や生温かさが人間の汗と混じり合う匂いまで感じさせる。
主人公は人の痛みを和らげようと尽くす天使なんだけど…良くこんな汚れ役を引き受けたものだと思うほど性的な役柄だ。そして、彼女は生きる。どんなことがあっても生き抜くだろうと想像させる画像で映画は終わる。
この映画を見て若尾文子さんを大好きになった。可愛い容姿で汚れ役をサラリとこなしながらも、しなやかに力強い。彼女の此れらの特性を発揮している作品をその後見た。
『華岡青洲の妻』『清作の妻』『女系家族』など。どれも私には衝撃的だった。時代が違えば多少世襲も違う。立場も違えば考え方も違うし、自分や自分の守りたいものの為に対立するし、相手によっては、そこ意地の悪い方々も依然として存在する。此れら映画では、イジメ的な状況をただ耐え忍ぶのではない強さや、意地の張り方が描かれていた。とにかく芯の強さを感じさせる若尾文子さんの魅力に圧倒される。
表紙絵で思い出したのは、『赤い天使』の野戦病院のバケツの中身だ!私たちが普段は実感していない、生身の人間の血。そう思えば怖い表紙絵かも知れない。