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最近読んだ本まとめ

僕らはそれに抵抗できない/アダム・オルタ― 上原裕美子(訳)

世界中が絶賛した話題の書、ついに上陸!スマホ、フェイスブック、インスタ、ネットフリックス、ゲーム、メール…。新時代の依存症「行動嗜癖」の衝撃。悪用厳禁!のめりこませる手口とその仕組みの全貌を暴く!!

普段こういう実用書って全く読まないのだけど、内容が興味深かったので買ってみた。めちゃくちゃ面白かった。マーカー引きまくった。

これまで依存症というと薬物依存、アルコール依存、ニコチン依存など物質に対する依存が思い浮かびがちだったけど、現代は「行動嗜癖」という行動に対する依存症が広がっているという話(その代表がSNSやゲーム)。

特にうわ~!となった部分を引用してみる。

「情熱を注ぐ活動をせずにいることができない。情熱のほうが主導権をもって人間を振り回す。その活動に従事することを本人の意思で制御できないため、いずれアイデンティティが呑み込まれ、生活の他の活動とのあいだで支障をきたす」
「へこたれない自分」がアイデンティティとなってしまい、それが幸せだということになっている

オタクあるあるだ~~!!!!!推しを推すことが義務感になり疲れてしまう現象の正体はこれなのでは?情熱のほうが主導権を持って人間を振り回す、という表現がしっくりきすぎる。

「それ」は現代のクラックコカイン〔結晶状のコカイン〕だ。みんな中毒になって、離脱症状も体験する。誰でもこのドラッグが欲しくてたまらなくなり、1回キメれば独特の気持ちよさに恍惚となる。
僕が言っている「それ」とは、「いいね!」のことだ。

ツイッター依存から脱却したいと思い始めている身からすると、あまりにも突き刺さる文章だった。

ブログからツイッターに移行して何に驚いたかといえば自分の投稿に対する他人の反応の速さだった。ブログは頑張って長文記事書いてもコメントも拍手もないこともザラにあった。でもそれが当たり前だったので何とも思っていなかった。それがツイッターだとブログより遥かに少ない労力(というかツイートに労力なんていらない)即いいねが飛んでくるので、あっという間に虜になってしまった記憶がある。

他にも興味深い分析がたくさんあって、本当に読みごたえがあった。これからはこういう実用書も読んでみたいなと思わされる一冊だった。


恋に至る病/斜線堂有紀

僕の恋人は、自ら手を下さず150人以上を自殺へ導いた殺人犯でした――。やがて150人以上の被害者を出し、日本中を震撼させる自殺教唆ゲーム『青い蝶』。
その主催者は誰からも好かれる女子高生・寄河景だった。
善良だったはずの彼女がいかにして化物へと姿を変えたのか――幼なじみの少年・宮嶺は、運命を狂わせた“最初の殺人”を回想し始める。
「世界が君を赦さなくても、僕だけは君の味方だから」
変わりゆく彼女に気づきながら、愛することをやめられなかった彼が辿り着く地獄とは?
斜線堂有紀が、暴走する愛と連鎖する悲劇を描く衝撃作!

最近ではなく結構前に読んだ本。感想を書くのがだいぶ遅くなってしまった……。

よくミステリー小説で「読み終わった後もう1度読みたくなる!」みたいな煽られている作品があるけれど、面白くても二度読みは面倒で大抵読まない。でもそんなわたしが読み終わって即二度読みした作品がこれ。これは話の面白さもあるが、斜線堂先生の文章と相性が良いのかとにかく読みやすく二度読みしてみようかなと思えたからというのもある。

斜線堂先生のミステリーってトリック自体は話のメインじゃなくて、登場人物ののっぴきならない関係性が主軸でありメインディッシュのイメージがあった。だから純粋にミステリーとしての面白さを追求すると、ライトすぎるような。

だけどこのトリックはめちゃくちゃ面白かった。二度読みした。ミステリーとしての面白さかと言われるとちょっと微妙だけど!でも謎の部分も個人的にはめちゃくちゃ楽しめたし、もちろん宮嶺と景の業の深い関係性もものすごくおいしかった。


リバース/麻生ミツ晃

あらすじ貼ろうとしたら、展開読めるようなこと書いてあるじゃん!と思ったので貼らないことにする。あらすじに書いてあるくらいだから、読者に対して秘密にしないといけないほどの謎ではないってことなんだろうけど……でもわたしはその謎にビックリしたから貼らないでおく。読もうと思った人はあらすじを読まずに買ってほしい。

ザックリ説明するとαの警察官・吐木と小説家の円の話。この2人は同じ施設で育っている。円は吐木と番なんだけど、フェロモン分泌量が異常で番以外の人間もフェロモンを感知してしまうし、抑制剤も聞かない謎の体質を抱えている。

これだけだと普通のオメガバースなんだけど、この作品はミステリーの要素も結構ある。元々オメガバースはあんまり好きじゃないだけど(でも地雷ってほどではない)、ミステリーなBLって面白そうだな~と思って買った。

実際BLとミステリーの要素が上手く融合していて面白かった。ミステリー部分も犯人お前かよ!?って思ったし。しかもそれがちゃんとオメガバースの世界だからこそ起こった事件だったのがすごく良かったな。もちろん吐木と円の恋愛パートも良かったし、エロもガッツリある。このエロの感じも話にちゃんと絡んでいるので本当に上手い作品だなと思った。

でも死体はそこそこエグい。ストロベリーナイトとかでありそう。死体こそ凄惨なものの(でも内臓ぐちゃとか欠損系ではない)、死体がパッと映るだけで殺害シーンなどは出てこないので、そこまで人を選ぶものではない。

ドラマCD化が決まったそうなのだけど、マジで早くキャストを教えてほしい。最近気が付くとそのことばかり考えている。早く知りたい。多分キャストが誰であれ買うので……。個人的には主役2人より犯人役のキャストの方が気になる。


消えた初恋/原作:ひねくれ渡 作画:アルコ

「青木…そんなに俺のことを──…」
青木は、隣の席の橋下さんに片想い中。しかし橋下さんの消しゴムを借りたら、同じクラスの男子・井田の名前が…(涙)。しかも、その消しゴムを持っている所を井田に見られてしまい…まさかの勘違いを!?
ちょっとおバカで、最高に一生懸命な初恋ものがたり、始まります。

こだ×むろのべしゃりLOVERSという番組で児玉卓也さんがオススメしていたことから気になって買ってみた。

マーガレットコミックスだし作画のアルコ先生は俺物語の人だし、間違いなく少女漫画なのだけど、男の子同士の恋愛がメインになっていて、めちゃくちゃ令和を感じた。1巻は最後にアッと驚くような結末が待っているので興味がある人はぜひ下調べせずに買ってほしい。「えぇーーー!?!?」ってなる。

男同士の恋愛も男女の恋愛もどちらもまっすぐ爽やかに描いていて心がすごく温まるし(このあたりBL漫画じゃなくて少女漫画だからこそできることだと思う)、キャラクターたちみんな可愛くて応援したくなる。嫌味な奴も出てこないのでストレスフリーに読める。

3巻まで刊行中だけど2巻がめちゃくちゃ好き。橋下さんと相多がめちゃくちゃ良い。2巻の相多の「じゃあその普通が間違ってるだろ」はめっちゃグッときた。相多がこの発言をするきっかけとなった橋下さんのビンタもめちゃくちゃ良いんだ……。


楽園とは探偵の不在なり/斜線堂有紀

二人以上殺した者は“天使”によって即座に地獄に堕とされるようになった世界。探偵・青岸焦は「天国が存在するか知りたくないか」という大富豪・常木王凱に誘われ、常世島を訪れる。そこで彼を待っていたのは、起きるはずのない連続殺人事件だった。『私が大好きな小説家を殺すまで』『恋に至る病』の俊英が挑む、渾身の本格ミステリ。

斜線堂先生新作の度にミステリ要素が面白くなってない!?

斜線堂先生お得意ののっぴきならないな関係性はこの作品だと影を潜めていて、特殊設定とミステリで読ませる作品だった。とにかくこの世界のギミックが面白い。

2人以上殺したら地獄行きになるので殺人が減るのかと思いきや、逆に1人なら殺してもいいんじゃないか、どうせ2人以上殺したら地獄行きならたくさんの人を殺してしまおうと思う人間が増えて別に平和にはなっていなかったり。あとは善意で起こした行動がたまたま人を殺してしまったとしても、とにかく地獄行き。首謀者と実行犯が分かれている場合は実行犯が地獄行きで首謀者はおとがめなし。

このルールで困ったのが料理人(知らずに毒入り料理を提供してしまったら…)と医者(医療ミスは殺人になるのか)というのも面白い。あと死刑制度も撤廃されている。死刑にする必要がないのと、死刑執行人が地獄行きになってしまうからだ。

世界観だけでワクワクが広がる設定ですごいなあと思った。トリックの部分ももちろん面白い。2人以上は殺せない世界観なので、ハウダニットが面白い。ちゃんとこの世界観だからこそこのやり方で殺人が起こったということが描けていたと思う。

斜線堂先生のこれからの作品が楽しみになるような1冊だったな~!


五匹の子豚/アガサ・クリスティ

16年前、高名な画家だった父を毒殺した容疑で裁判にかけられ、獄中で亡くなった母。でも母は無実だったのです―娘の依頼に心を動かされたポアロは、事件の再調査に着手する。当時の関係者の証言を丹念に集める調査の末に、ポアロが探り当てる事件の真相とは?

久々のクリスティ作品。やっぱりクリスティに外れはないなと思わされた。

16年前に起こった事件について、5人の関係者の手記をもとに謎を紐解いていくという構成の作品。

思い切り騙された。犯人お前なのーーー!?!?となった。16年前の事件をそれぞれの主観で語らせるというのがポイントで、犯人だけが嘘をついているわけではなく、犯人以外も嘘をついていたり、思い違いをしていたり、出来事を断片的にしか見ていないので実際とは違う意味に捉えてしまったり、キャラクターたちの描写が本当にすごい。「〇〇だと思い込んでいたけれど、実は××だった」の連続で謎解き部分は読んでいて爽快さがあった。


noteを持て余していたが、結局当初考えていた読書記録用として活用しようと思う。紹介した本以外にも「アドリアン・イングリッシュ」というヤバいくらいに面白い作品があるのだが、それについては別で記事を書く。

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