「アドリアン・イングリッシュ」シリーズという海外BL小説が面白すぎる

ここの記事に本来載せるものだったのだが、あまりにも面白くドハマりしてしまったので、単体で記事を書くことにする。

どれくらい面白いかって読書は月に1~2冊ペースのわたしがシリーズ5巻+番外編1巻を半月で読み終えたくらいに面白い。記憶なくしてもう1回読みたい。まっさらな状態でこれを読める人が本当に羨ましい。それくらい最高のシリーズ。最高。

概要

LAでミステリ専門の書店を営みながら小説を書くアドリアン・イングリッシュの元をふたりの刑事が訪れる。
従業員であり友人のロバートが惨殺されたのだ。
前日レストランで口論して別れたアドリアンに、殺人課の刑事・リオーダンは疑いの眼差しを向ける。
調査に乗り出したアドリアンだったが、犯人の深い憎悪と狂気はやがてアドリアンに向かう。

この作品は「ゲイミステリ」というジャンルの作品だそう。あらすじからしてもわかるけれど、BLとミステリーが融合した話になっている。

この作品を刊行しているモノクローム・ロマンス文庫のラインナップを見ればわかるが、海外BLだと警察ものとかFBIとかはかなり王道のジャンルっぽい。そして作者であるジョシュ・ラニヨン先生はアドリアン・イングリッシュシリーズの他にも警察・FBIものを手掛けている。他にもまだ読む本があるってことは最高だ!

元々日本の商業BLでもミステリ要素が強いものを手に取りがちで、大学生の頃はブロマンスな海外ドラマや海外映画にドハマりしていたこともあるため、あまりにもわたし向けだった。あらすじ読んだだけで絶対好きなのわかるわと思って手に取ったら見事にハマった。


この作品の魅力は何といっても、BL要素もミステリ要素もしっかりしているところだ。どちらもおざなりになっていない最高のバランスで存在している。「BL要素いらないじゃん」「ミステリ要素いらないじゃん」ということが全くないのでどちらの要素にもハラハラしながら読み進めることができる。

とはいえミステリの部分もトリックや犯人当てを楽しむというよりは、事件に巻き込まれるアドリアンをハラハラしながら見守るという感じなので、純粋にミステリを求める人には向かない。そんなに凝ったトリックなどはなく、大抵1番怪しい人が犯人だし、仮に犯人をネタバレで知ってしまったとしても面白さにさほど影響しないタイプの話である。

とりあえず言いたいことは1巻は導入だし恋愛要素はかなり薄いので、買うなら2巻までまとめて買ってほしいということだ。


キャラクター

・アドリアン・イングリッシュ(受)

主人公。表紙左の黒髪の人。物語はアドリアンの一人称で進む。

黒髪碧眼、182cm。書店を経営しながらミステリ小説を書いている。オープンゲイ。実家はお金持ち。学生時代にした病気のせいで心臓に疾患を抱えている。とにかくゲストキャラクターたちにモテまくる。

ここまで羅列してみるととにかく盛りすぎなことがわかる。属性盛りすぎて鼻につくと思われる人もいるかもしれない。

でも読んでみると全然そんなことはない。本当に!なぜならこの作品の面白さを支えるポイントとして、アドリアンの皮肉が面白すぎるという点が大きくあるからだ。一人称で大正解。

儚げでいかにも受け受けしい感じだが、常にシニカルで口が達者で気が強く頑固。一度言いだしたら聞かない性格。でもって息をするように皮肉を言うし、海外作品特有の言い回しが面白くて仕方ない。こういうキャラってやっぱり欧米だからこそだなぁと思う。

作中だとモンゴメリー・クリフトやマット・ボマーに似ていると言われているが、個人的にイメージするのはベン・ウィショー一択。


・ジェイク・リオーダン(攻)

表紙右側の金髪の人。190cm。刑事。

アドリアンがオープンゲイなのに対して、ジェイクはゲイでありながら自分がゲイであることを受け入れられないというなかなか難儀な男だ。ホモフォビア的なところもある。もちろん周囲にゲイであることは隠しているし、ストレートとして異性と結婚して家庭を持ちたいと思っている。

なのでアドリアンとジェイクの関係は常に危うさをはらんでいる。ゲイだとバレたくないので、アドリアンと関係を持った後も、周囲の目があるところではアドリアンに必要以上に近づきもしないし、スキンシップも取らない。友人関係を装っている。辛い。

3巻とか4巻あたりは読者全員がジェイクにキレ倒してると思う。わたしも「お前なんなん!?」「アドリアン、ガイ(※大学教授)にしとけ!!!!」と思いながら読んでいた。

こういう辛いところがあるからこそ、2人が真に結ばれたときが最高~~!!!!!となるのでめげずに読んでほしい。


まとめ

キャラクター造形からしてわかる通り、ゲイに対する社会の目をすごくリアルに描いている。ジェイクのようなキャラクター、日本のBLではほとんど見かけない気がする。

そんなわけなので、2人の仲も本当に本当に一筋縄ではいかない。両想いであることは間違いない。けれど、アドリアンはジェイクのストレートとして生きたい気持ちを知っているのでこの関係はいつか終わってしまうと思っているし、ジェイクもアドリアンに惹かれながら、自分の性的指向を受け入れられず、ストレートとして生きる道を捨てられない。

このシリーズを一言で言うと「人生」なのだ。5巻まで読み終わったときそう思った。病弱で死が近い人生を生きてきたアドリアンが一生を添い遂げたい相手を見つけ、ジェイクが自分の性的指向を受け入れ、周囲に嘘をつくのをやめ、本当に好きな人と添い遂げることを決める、そんな2人の人生の変遷を描いた作品だと思う。

人生を描いている作品だからこそ、BL要素もミステリ要素も突出しすぎることなく調和しているのではないかと思う。人生は恋愛だけでも事件に巻き込まれることだけでもなくて、多くの要素が絡み合ったものだからだ。

セックスシーンももちろんあるのだけど(ちゃんとあるよ!)、さあさあメインディッシュですよ!という雰囲気はまるでなく、日常のワンシーンとしての意味合いをむちゃくちゃ感じる。まあそりゃそうだ。


そんなわけでとにかく読みごたえは抜群だし、ページをめくる手が止まらなくなるほど本当に面白い。しんどい、重い、辛いシーンはありすぎるほどあるのだが、アドリアンの皮肉交じりの軽快な語りできっとすいすい読めてしまうと思う。とにかく最高で面白いので読んでほしい。


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