"病は氣から"を微生物学で証明した科学者-Chapter.1(前編)
はい、世紀の大天才、アントワーヌ・ベシャン博士の研究の集大成についての記事です
ベシャン博士の経歴に関しては、同じBea;champの仲間である変態紳士氏がこちらの記事を投稿してくださっているので参照ください
海外情報をうまくまとめてくださっています
本記事では、こちらのベシャン博士の研究の全貌が記された、唯一の著書
"The Blood and its third element"(血とその第三要素)を満を持して取り上げたいと思います
全8章構成の内、第1章部分の要約です
生物学を根底から書き換えるような内容となっておりますので、気になる方は是非ポチしてくださいませ😋
ーその前にー
19世紀に巻き起こった、微生物に纏わる論争
そこには、「人間は何故病気になるのか」という素朴な疑問に関する、二つの理論がありました
方や、ルイ・パスツールの提唱する「細菌理論(Germ Theory)」
方や、アントワーヌ・ベシャンの提唱する「細胞理論(Terrain Theory)」
現代医学を見ればお分かりの通り、今の科学は前者の細菌理論を採用しています
両者を比べてみましょう
パスツールのWikipediaにも記載があることですが、彼はこの理論を証明したわけではありません
が、今流行りの感染症騒ぎの対策は、一重にこの理論に基づいています
ですので、ウィルスが身体に入ってこないように防御態勢を敷こう、という「考え」になるのですが、そもそもこの理論は正しいのか?という指摘があるわけです
この理論がそもそも怪しいことの説明は、こちらの記事を参照ください
ということで、一部の界隈で、ベシャン博士の細胞理論こそが真の科学であるとの声があがっています
実は当時から細菌理論への反対者は沢山いました
それをまとめているWikiページもあったりします
Antoine Béchamp/Henry G. Bieler/Alfredo Bowman/Hereward Carrington/Norman Chevers/Charles Creighton/Walter Hadwen/Julius Hensel/E. Douglas Hume/James Hervey Johnson/James Tyler Kent/Ben Klassen/Henry Valentine Knaggs/Montague Leverson/Benedict Lust/Charles Edward Page/B. J. Palmer/Daniel David Palmer/Max Joseph von Pettenkofer/Félix Archimède Pouchet/Herbert Snow/Rudolf Virchow
どの方も、食事療法・漢方医・衛生学者...と代替療法を主軸とされる方が多いですね
※そしてほとんどquackery(インチキ)呼ばわりされております
では、そのベシャン博士の業績とはどういったものなのか
当時の科学界の背景も交えつつ、参りましょう
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まず、ベシャン博士の研究は、血液凝固を担うフィブリンの性質に注目するところから始まります
現代科学は、この物質を肝臓由来のタンパク質の一種と見做しています
フィブリン:
線維素。血液凝固の際,血漿中のフィブリノーゲンがトロンビンの作用で分解され,重合してできる不溶性蛋白質。凝血の中では網状につながって赤血球や白血球を包んでいる。採血直後の血液を棒でかき回し,からまって出てきたものを水洗すれば,塊状のフィブリンが得られる。血漿から取出した海綿状フィブリンを手術痕の充填物として使うことがある
トロンビン:
蛋白質分解酵素の一つであるプロテアーゼの一種。血液の中にはプロトロンビンとして存在しており,活性化してトロンビンとなる。血液凝固の際に水溶性のフィブリノーゲンを不溶性のフィブリンとする作用をもっている
フィブリノーゲン:
線維素原。血漿蛋白でグロブリンに属し,血液凝固の役割を果している。分子量約 40万。血液凝固のとき,トロンビンの作用によりケラチン型の硬蛋白質であるフィブリンと非蛋白質フィブリノペプチドに加水分解され,フィブリンゲルの塊ができる。脊椎動物の血漿やリンパ中に存在する。肝臓で生成されるため,実質性肝障害があると血中濃度が低下する
"高校生物基礎「実験 血液凝固の観察」〜実際に血餅を作りました!〜 blood clot"より
①フィブリノーゲン(フィブリンの前駆物質)が、肝臓で生成
②どこかからやってきたトロンビンなる酵素の働きが①を分解
③②の作用で①がフィブリンに変化して凝固反応が起こる
というメカニズムらしいですが。
よくわからんのですよこれ
・トロンビンはどっからくるの
・傷が出来た時、それを塞ごうって誰が指示するの?全部脳?
・脳から肝臓に指示だして、そこから外傷箇所に凝固物質輸送ってメチャクチャ効率悪くね?
・ただの物質が、何の「意思」もなく凝固を始めるの?
全部化学反応で説明するの?
という感じで、初見でもそう思うわけですが、このフィブリンの本当の性質こそ、博士の理論の根幹を担うものです
本記事は、そこに至るまでのプロローグになります
全ては微生物の発見から
事の発端は、17世紀に一介の商人が、独自に高精度な顕微鏡を開発して細菌・赤血球などの微小な世界を観察したことを報告したことから始まります
生命の自然発生説
そして、レーウェンフックの発見は、アリストテレスからずっと続いてきた生命の自然発生説に結び付けられます
ざっくりと要約すると、生物は基本的に生殖行為を通して生まれる、要は全ての生物には必ず「親」がいますが、「親がいなくても」自然に生物は生まれることがあるという説です
この説はうんたらかんたら様々な科学者達に真剣に議論されてきました
食べ物を放置したら蛆が湧いてきますが、当時は生命力とかなんやら神秘的なものの存在を想定していた時代ですので、こういう現象から、何もない所から生命が勝手に降臨することがあると思われてきた...のでしょう(史実を見る限り、多分もうちょっと理論的だったかと思いますが)
現代の主流-スパランツァーニ & パスツール実験 -
現代科学は、自然発生なんてするわけねぇだろという見解に落ち着いています
それは↓の有名なルイ・パスツールの実験、「白鳥の首実験」で決着が着いたとされています
確かにほぼ真空ともいえる環境下では微生物は発生しないでしょう
パスツールのこの実験は、「実験室環境」という特定条件下での自然発生を否定したかもしれません
ですので、加熱して完全に密閉することで、缶詰として長期保存ができたりします。この実験が、一部現代に恩恵をもたらしていることは確かです。
ですが、「自然界」のどこに真空環境など存在するでしょうか?
この辺の詳細な反論は、千島学説で有名な千島喜久男先生も触れております
本記事では詳細は省きますが、一言で反論すると
「この実験結果を一般法則に昇華させるのは無理がある」です
生命は、空気・栄養・季節による温度変化等々、自然界の様々な影響を受けています。上記の実験のような人工的な条件の話を、生物界全体に昇華させるのは確かに無理があります
要は、
「空気を奪われたら生物は繁殖しない
だからと言って自然界のどこかで生物が自然発生していないとは言えない」
ということです
ここまでを要約しておくと
・1600年代に微生物が発見された
・微生物達は何もない所に突然生まれるかもと騒がれた
・現時点で、取り敢えず「真空状態」では発生しないとはいえる
さてさて、小難しい話が続きましたが、こっからが本題です
サトウキビ糖の転化反応
話が一気に変わるやないかいと言われそうですが、実は関わってくるんですねぇ...
19世紀の欧州、どうやら砂糖の量産がしたかった時代背景があるようです
「砂糖の歴史」という本を紹介してくださっているブログがありました
サトウキビの性質はこのように説明されていました。
"人々は最初のうちは、切り取った茎を噛んだり吸ったりして、サトウキビの汁を飲んだ。しかし、サトウキビは一度切り取ってしまうと、短い時間でも保存したり蓄えたりすることが難しい。
切り取るとすぐに劣化し、茶色くドロドロになってしまうのだ。サトウキビから汁を搾り出すことはできるが、汁は空気に触れたとたんに醗酵しはじめる。"
簡単にお酒がつくれそうですが、甘味を保存したいのです
茶色くドロドロ、このサトウキビ糖の変化は何故起こるのか?が当時の論争の的でした
「酵素」という考えのない時代
この発酵(茶色くドロドロ)という現象には微生物が関与している、とは現代では常識になっていますが、当時はそんなこと分かりません
当時の人達は、
"水・空気・エネルギーがあれば、全ての物質は自然と変化する"
考えていました
これは牛乳を放置したら勝手に固まったぞ、という極論から始まった説ですが、ここでようやく登場ベシャン博士、ここに異を唱えます
サトウキビ糖の転化反応(ドロドロ反応)とは、強酸の影響下で起こるものだからです
※これは当時Biotという化学者が実験で証明していました
つまりそこには塩酸・硫酸etcの酸性物質が存在しないといけない
また、当時は相手にされていませんでしたが、シュワン※という人物が
「全ての有機物の変化には微生物が関与する」という説も展開していました
※超有名人物ですね、代謝・細胞説・シュワン細胞等、業績が山程あります
そんなこんなでサトウキビ糖が何もなく自然に変化することはないはずだと考えました
これを確かめるべく1854年から1887年にかけて、一連の大実験の計画を立てる
それが博士の有名なBeacon Experimentです
Beacon Experiment-転化とは何か-
フラスコにサトウキビ糖と水だけを入れて、あらゆる実験を試みます
1.空気の量を制限
1-a)真空
1-b)微量な空気との暴露+少量の防腐剤
この条件下で反応を見た所、どちらもフラスコ内に変化はありませんでした
つまり、ドロドロ化には、空気中にある別の要因が絡んでいることは間違いありません
2.空気に触れさせる
そこで蓋を開けて空気に触れさせたところ
ドロドロ化が発生し
カビが出現しました
このことから、
・サトウキビ糖のドロドロ化は空気との接触がカギであり
・空気中から侵入した微生物が繁殖して生まれるものがカビ
だといえます
3.カビの正体
1,2より、結論として
カビは、ドロドロ化を引き起こす犯人がうじゃうじゃ集まったものであるといえます
4.防腐剤でできること
空気と接触した液体は、防腐剤を含ませているものもありました
それにも関わらず変化したということは
防腐剤は、カビの発生は抑止するが
発達したカビの起こすドロドロ化は防がない
以上のことを発見します
導かれる仮説
ここで前述の自然発生説の話に繋がります
真空状態では微生物は発生しない
逆に言えば、空気に暴露すれば微生物は発生する
そして、その微生物が物質を変化させる
導かれる仮説は、「空気中の微生物の侵入」です
この仮説が正しければ、実験で証明された
・防腐剤+空気量の制限でドロドロ化が防げたこと
・一度発生した微生物によるドロドロ化は防げないこと
このフラスコ内での現象が説明できます
見事に証明できたように思えますが、
じゃあ牛乳の突然変化はどう説明するん?と真実を探求するベシャン博士は気になって仕方ありません
あの実験は何だったんだと追従実験に取り掛かります
生物の体液を使用した実験
現代科学でも、牛乳は乳糖・カゼインetcで構成される物質とされていますが、本当にただの物質だとするなら、サトウキビ糖と条件は同じで、
・搾乳された瞬間に防腐加工し
=微生物の侵入を阻止
・空気を遮断すれば
=微生物が繁殖しないようにすれば
変性は起こらないはずです
しかし…?
牛乳の性質
サトウキビ糖実験では、
1)空気中の微生物が侵入し
2)内部で繁殖してカビが出現し
3)このカビが分泌する酵素でドロドロ反応は起こりました
一方、牛乳に関しては
・空気と接触していようが
・防腐の有「無」に関わらず
カビの出現は見られません
しかし酸性・凝固化等の変性が発生した
そして同時に、これは牛乳変性の第一段階であることを発見します
続く第二段階では、内部にバクテリアが自然発生することを発見します
牛乳はただの物質ではない
前述のサトウキビ糖の実験では
・ただの物質が勝手に変化することはない
・その変化は空気中の微生物が侵入して起こす
という結論でした
もし牛乳がただの物質であるとするなら、防腐加工をして微生物の繁殖を制限時点でサトウキビ糖と条件は同じはずです
しかしそんなことはない、防腐の有無・空気の制限に依らず、牛乳は勝手に変性した
外部からの微生物の侵入を阻止したにも関わらず変性が起こったということは、微生物は最初から内部に存在していることになる
従って、牛乳はただの物質ではない
という結論に辿り着き、サトウキビ糖とは条件が全く異なることに辿り着きます
このことが、彼の"第三の解剖学的要素"
即ち、マイクロザイマスの発見に繋がります
二つの実験の相違
マイクロザイマス(=微小発酵体)の存在を前提として博士は
1)フラスコ内でのサトウキビ糖のドロドロ現象
2)牛乳の自然変性
この二つを明確に区別します
前者(1)は
・サトウキビ糖という物質に
・空気中の微生物が侵入することで
・微生物の分泌する酵素が促進する「化学的反応」
後者(2)は
・牛乳の内部に最初から存在していた
・内部の発酵体が起こす「生理学的反応」
と仮説を立てました
その後の博士の研究
自然の産物である牛乳の変性が内部の発酵体によるものだとするならば、これは牛乳だけに起こるレアケースと捉えず
自然の産物全てに汎化可能だと捉えるべきだ
と考えます
非常に筋の通った仮説ではありますが、このままでは、実験結果からマイクロザイマスの存在を示唆しただけに留まります
その可能性を考慮した博士は、
・マイクロザイマスの単離
および
・生物の血液研究
に踏み込んでいきます
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