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Chapter7. 微小発酵体理論:その反響③(了)

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ある体液を組織と認定するには、その体液に有形成分が存在するだけでは不十分だと述べた。ビシャの元組織構想に準ずれば、先ず解剖学元素と想定される有形成分(…即ち特定の形態を持つ)が事実として生きていると証明せねばならない。私が真先に着手したことだが、まだ不十分である。限りなく近接するこれら有形成分が細胞・顆粒間液物質により相互に隔てられつつも連結し、複合組織の最小単位に存在すると証明せねばならない。

仮に血液が均質な液体であり、微小発酵体をフィブリンと隔離状態…即ち裸構造…で血球と共に懸濁状態で保持するなら、液体部分が微小発酵体より低密度である以上、宛ら河川の水流に逆らって粘土質が沈殿する如く、微小発酵体は血流と無関係に分離し、沈殿することだろう。

だが血液は微小発酵体を裸構造のまま保持しておらず、特殊なアルブミノイド物質の雰囲気に包容して保持する。畢竟、血液には微小発酵体分子顆粒が存在する。粘質性かつヒアリン性の膨潤したアルブミノイド雰囲気はこれら顆粒の密度を高め、顆粒同士を繋ぐ間液物質と同程度の密度となる。その結果、分子顆粒は血球と共に血液全域に渡り分布する。

血液性微小発酵体分子顆粒の構造こそ当に、血球と並び血液組織…流体組織…の形成に不可欠である。その粘質雰囲気が持つ膨大な膨張性により、血液中の血球と細胞・顆粒間液物質の薄層を除く空間全域に渡り、無数の微小発酵体分子顆粒が占拠している。その特殊な粘性と機械的妨害により、血管外での凝血形成中に血球が均一に分散し、沈殿することはない。一方、凝血形成中に血球が沈殿する単蹄動物(例:馬)の血液の特殊例では、血球密度と相対的に低密度な顆粒間液、粘質雰囲気が持つ特異性の点で多大な相違がある。

血液は流体組織であり、この教義は三種の解剖学元素と生物種に固有の間液物質との関係性から導き出される。其処に如何なる仮説も存在しない。

だが組織である以上、血液は、血液自体をその内容物とする器官による特殊な解剖学的体系に属している。そして、微小発酵体が形態と構造で区別される如く、各々の解剖学的体系が微小発酵体で区別されるとすれば、循環系もまた然りではないか?事実その通りである。

血管系の微小発酵体:他の解剖学的体系との相違

私は動物組織の微小発酵体による過酸化水素水分解能の比較研究で以てこの命題を証明した後、この研究を植物組織へ応用した。

結果は以下の表の通りであり、実験手順は次の通りである。
①目盛り付きの管…ユードメーター…に過酸化水素水数cm³を入れる
②管を上下逆様にして水銀槽に浸し、シルク紙に包んだ微小発酵体1㎝³を注入する
③この時、過酸化水素水3~5体積比で放出酸素量が10~12体積となるよう調整する
④24時間での酸素の発生速度および放出量を記録する
尚、水銀自体が過酸化水素水から酸素を放出する為、対照群に同体積量の過酸化水素水を入れた管を用意する。更にもう一つ、同様の構造の管に微小発酵体と同じ投入法で実験室の埃を注入し、影響を比較する。

3つの表の比較結果は非常に示唆的である。

動物組織に関連する表1表2を比較すると、尿を含めた循環器系の微小発酵体が過酸化水素水の分解に最大のエネルギー量で以て最大の酸素表出量を誇ること、同時に、血液微小発酵体や、循環器系と最も直接的に関係する二大器官こと肺と肝臓微小発酵体が最も活性が高いことが分かる。これは、循環器系がその微小発酵体の非常に特異な機能の点で他の解剖学的体系と一線を画すことを明示する為にも強調しておきたい事実である。その特異性から、他の組織が持つ類似機能はその場に血液微小発酵体が存在する為だと想像される程である。だがこれはあり得ない。肝臓微小発酵体を徹底的に水洗浄すると、その活性は血液微小発酵体に比肩する為である。表2の結果が殊に重要であるのは、卵黄や、まして唾液や尿に血液微小発酵体が存在する結論になり得ない為である。疑念は表3の結果で払拭される。アーモンドとビール酵母其々の微小発酵体の性質に鑑みれば、これは同一種内にも植物組織固有の微小発酵体機能により相違がある証拠である。

従って血管系の微小発酵体は、過酸化水素水分解能の観点で、容器と内容物共に他の解剖学的体系のそれと区別される。これは、先述したテナールの観察を正確に解釈した場合にも言えることである。人間と動物の諸々の解剖学的体系に備わる生理的機能を比較研究すると、この相違が更に巨大だと判明する。

例えば、犬や反芻動物の膵臓および胃腺の消化機能には同様の特性が備わるが、人間の唾液腺および耳下腺の機能は犬や馬のそれとは異なる。人間の唾液腺および耳下腺微小発酵体は馬鈴薯澱粉に強力な液化・糖化作用を発揮する。犬や馬の場合、緩慢な液化作用はあるが、糖化作用は全くない。従って同じ腺の微小発酵体由来のザイマス機能にも、人間と人外の動物種では本質的な相違がある。即ち、形態学的同一性を示すこれら微小発酵体は機能的相違を示す。私は、血液の分子顆粒と血球其々の微小発酵体機能が生物種ごとに異なる理由が、私が血液性微小発酵体分子顆粒を区別した如く、研究の進展と共に解明されると確信している。

そして、生体組織の微小発酵体理論はその理由に解答する。生物種ごとの微小発酵体がその内部における自律的存在であり、その始原から在るべき姿をしており、その生物種が自らの繁殖、成長、保存という目的の為、そして死後は酸化により、微小発酵体を除く全ての物質を鉱物質にまで還元する完全破壊を遂げる目的の為の最適な姿へと変化する為である。解剖学的に自律的存在でなければ、生物種や解剖学的体系ごとの相違性や機能的多様性は如何にして発生するのか?この疑問には回答済みであり、ただ否定するのみである。コルニル氏やネンキ氏の主義主張に未だ混迷を極める科学を説得するには、新たな考察様式が必要である。

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