中世ヨーロッパ食事異端審問官現る
中世でフォークが使われておらず、手づかみで食べていたのは事実であるが、何故か拡大解釈が行われ、皿も食器もスプーンも無かったことにされるらしい。上級国民はともかく下級は粥と汁しか食い物ないからスプーンが無いと餓死するのに。一体誰が言い始めたのやら。逆にスプーンを使って居たから手づかみではないに居たっては何がいいたいのだ。この手の輩を最近は逆張りマウンティングゴリラなど呼んでいる。特に、12世紀以降、貴族だけのマナーが徐々に洗練されていったことには留意しないといけない。庶民は18世紀に入っても手づかみだった。そもそも食事マナー自体が上級国民がお上品マウント取る為のものだから庶民と同じではダメなのだ。上級国民にとって庶民の食べ方は獣の食べ方だから。
※ 上級国民とかくのは北イタリアに居るのが貴族か商人か聖職者かよくわからん連中ばかりだから。
現実に手づかみで食べるのは宜しくないのはいつになったかと言えば実はパスツール以降である。19世紀にパスツールが細菌を発見した後の上級国民の清潔マウントの話を中世に持ってくるな。
上記は、19世紀のナポリでパスタを食べている写真である。これが手づかみでなければ何が手づかみなのだろう。この時期には観光地化していたから、わざとやっている気もするし、そもそもが産業革命後の貧困労働層だし、そもそも中世にこのタイプのパスタは存在しない。しかし、中世ヨーロッパで手づかみで食べていなかった訳でないだろう。もともと手づかみ文化があったのだろう。さらに、手づかみで食べるのにマナーがあることを持って手づかみがないとするのは暴論だし、恐らく手づかみが野蛮だと勘違いしているからこんな事が言えるのだろう。日本人が箸を使うのは、手にべたつくものが多く洗ったぐらいでは綺麗ならないから手食に向いていないからだろうし、韓国が匙文化なのは粟粥が主食で箸でつまめないからだろう、食器のチョイスは食べ物の影響が大きいのにねぇ。ちなみにこの時代のパスタはチーズを絡めたぐらいの代物で手づかみするとベタ付くソースパスタなど存在しない。
中世ヨーロッパのおよそ1000年において基本的な食器はスプーンと皿ぐらいで、ナイフは各自用意する必要が有ったとされる。これは大皿に塊肉をのせて食べる分だけ切りながら食べるのがゲルマン式サーブだったからだと考える。
スプーンは木匙が使われていたが12世紀となるごろに銀のスプーンが現れるらしい。イギリスやフランスあたりだと11世紀頃まで主人と下人は同じ部屋で食事していた。これが11-12世紀頃に入ると主人と下人の部屋が分離し食事も別々になった影響があったのかも知れない。なお、スプーンは共有されることが多く、一人一本と言うことはなかった。16世紀の失礼クリエーターことロッテルダムのエラスムスもスプーンを使ったらナプキンで拭いて戻すべきとかいている。
上級国民は指三本のみを使い綺麗に食べるべきと言うのは14世紀後半のジェフリー・チョーサーがロンドンで書き残している。上級国民は庶民と違った食べ方をしなければならないから庶民の様に五本指を使ってはいけないと言う話なのだろう。
フォークに関しては11世紀のヴェネツィアが初出で、東ローマからもたらされたとされている。ただこのフォークはナイフの補助具だったという説がある。そしてイタリアでフォークを使い始めるのがいつ頃か調べると、実はよく分かっていないらしい。14世紀に商人達の間で広がった説がある。それはともかくこの新しい食器に対し聖職者達は議論を始めたらしい。結果的にフォークは悪趣味で手づかみが最高と位置づけた。そのため中世ヨーロッパではフォークの使用は広まらなかった。しかし、当時の食事は大皿料理を食べる分だけ取りわけて食べる方式だから、脂ギッシュなキモいおっさんが手づかみした料理を食べたくない女性を中心にフォークの使用が広がったらしい。
なおイタリアのフォークは一度失われたものでポンペイの遺跡から見つかっているため古代ローマには有ったとされる。とはいえ、ローマの上級国民は寝たまま手づかみで食べるのが基本的なマナーで、カジュアルに食べたい時や庶民が使っていたのだろうか。スプーンやナイフとともに食事の補助具として使っていたのかもしなれない。
フォークを使ったマナーは1530年ロッテルダムのエラスムスのDe Civilitate Morum Pueriliumに出てくるらしい(なおこの情報は怪しいサイトから拾ってきたので鵜呑みすることを禁じる)。つまり現代マナーは中世に存在しない(当時ネーデルラントは、ハプスブルク家領なので新しい文化はフランスより早く入ってきたのだろう。それ以前から西欧の先端地域だけど)
他にはマルティン・ルターとロッテルダムのエラスムスの二大失礼クリエーターがフォークの存在を容認したから普及した説があった。
フランスにフォークが入って来る時期も中世は既に終わっていた。フランス王妃になったフィレンツェのカトリーヌ・ド・メディシスが持ち込んだとされているが、普及するのはルイ14世紀の時代で、17世紀の話になる。つまりオランダより遅い。ルイ14世がフランス貴族の手食文化の最後の世代になる。それまでは手づかみが最上のマナーだった。1560年頃にフランスでフォークが使われている記録を見つけたが国王はまだ手で食べていた。ルイ14世以降はフォークを使うマナーが普及する。失礼クリエーターの大暴れに太陽王も抵抗できなかった。孫がフォークを使うのを見て近頃の若い者はと言っていたらしいがソースが見つからなかった。
当時の貴族フィリップ・エマニュエル・ド・クーランジュ侯爵が残した詩に上記のものがある。要約すると「失礼クリエーターふざけるな」だ。今も昔もかわらないですな。
フランス料理は大皿に盛られて出されており、スープはおのおのがスプーンをすくって飲んでいたようだ。汚れたスプーンはその辺の料理で拭いていたし、残ったソースは指で拭って舐めてた。しかし、フォークが普及し、料理は小皿で一人分ずつ出てくるようになった。フランスに於けるこの変化は、ロシア式サーブの影響とされる。ピョートル大帝が持ち込んだかはよく分からないが、寒いロシアにおいて大皿で料理を出すとすぐ冷めてしまうためこのような方法を取っていたらしい。それがフランスで取り入れられた訳だ。つまりフランスでは17世紀までは大皿料理をナイフで切って手づかみで食べていた訳だ。しかしこれは上級国民の話、庶民はこの時期でも手づかみだった。18世紀にナポリ王が宮廷でパスタを食べるために開発されたのがパスタフォークになる。庶民はパスタを手づかみで食べていたから宮廷で出すために新たな食器が必要になったのだ。このころになると上級国民は手づかみははしたないと考えられていたと考えられる。ルイ14世は嘆いているだろうが。18世紀半ばのフランドル(ベルギー)でも普段は手づかみで、特別な時だけフォークを使って居たと言う記録がある。
庶民にフォークが行き渡るのは産業革命後になる。そうして庶民に上級国民のマナーが普及すると上級国民のマナーはそれより洗練されなければならないと言う失礼クリエイトのループが延々と続くのだった。
中世末期のマナー
あちこちから集めて来たから時代も場所もぐちゃぐちゃだが、成文化されたものは12世紀頃以降が多い。そういえばそれ以前の貴族は読み書き自体が怪しかったわ。読み書きも現地語ではなくラテン語だからラテン語が分かる聖職者を書記として雇っていたぐらいだし。
食事は大皿に入れて出す(皿に近いほど上級)
上級様より先に食べては行けない
食事前に手を洗う、爪を切る、(場合により身体も洗う)
椅子に座る前に食べない
クチャラー厳禁
テーブルクロスや衣服で口や手を拭かない。ナプキンを使う
ナイフを持参すること
スプーンは盗んでいけない(スプーンはホストが用意)
スプーンを皿の上に置いてはいけない
スープはスプーンですくい皿を持ってはいけない
肉片は丁度良く切らないといけない
自分の皿を他人にあたえる場合は許可を得ること
勝手に皿の一番良い部分を取らないこと
食べ物を口に含んだまま飲み物をのまない
食べ物を口に含んだまましゃべらない
ソースに指を突っ込んではいけない(ナイフを使うこと)
指を口に突っ込んではいけない
指を塩やマスタードに突っ込んではいけない
どか食い禁止(嘘だろコレ)
食べ物を食いちぎらない
パンの二度漬け禁止
肉を塩皿にぶちこんでは行けない
ナイフで歯を漉いてはいけない
食事中に犬や猫を撫でてはいけない
テーブルクロスや客に唾を吐いてはいけない(テーブルに向かわなければ大丈夫)
テーブルでげっぷをしない
テーブルを傷付けてはいけない
食べ物や食器に息を吹きかけてはいけない(口臭が臭いから)
肘をテーブルにつけてはいけない
トレンチャー(皿代わりの固いパン)は食べてはいけない
コップは両手で持つこと(回し飲みしていたため)
共用のコップを飲む時はナプキンで口を拭くこと
テーブルで鼻をかまない
口で音を立てない
飲みながらコップを見ない
飲んでいるときに飲み物をこぼしてはいけない
豚のように口を動かさない
皿に顔を置かない
服の下に手を入れたり、胸や頭や鼻の上に手を置いたりしてはいけない(ノミが居るから)
食事を食べる前にパンを食べては行けない@ドイツ
食事中に咳払いをしてはいけない@ドイツ
パンを切るときは腹や胸におしつけては行けない@ドイツ
同伴者が右側に座っている場合は左手を使う@ドイツ
どうでも良いことで明記してあるのは実際にやるヤツが居たってことだよな。皿の上に顔置いて豚のマネするヤツとか。聖職者の真似かな?
この辺りから分かることは、北アフリカやインドで見られる、食事に右手を使わないと行けないルールがヨーロッパに存在していない点(どちらを使うかはシチュエーションで変わる)酒は大きな容器で回し飲みすることが多くそれも両手で持たないとこぼしてしまうぐらいでかいコップだった。パンが固すぎて、押しつけないと切れなかったとか(これはドイツか)顔にふれては行けないのはノミだらけだったとか、口臭が臭かったとか、床にツバ吐きながら食べていたとか、そんなところかな?後、昭和の日本以上に上下関係が厳しい。