グリム童話本当に怖いのか(4)―― ブレーメンの音楽隊
「ブレーメンの音楽隊」は、「さるかに合戦」の類型とされているが大間違いである。
グリム童話に於ける「さるかに合戦」の類型は「コルベスさま」なのである。
「ブレーメンの音楽隊」は、ATU 130 (The Animals in Night Quarters)に分類されているが、「コルベスさま」は ATU 210(The Traveling Animals and the Wicked Man) で分類が異なり、 ATU 210には「さるかに合戦」が含まれている(初版グリム童話集2の数字は間違い)
External Examples
Story ATU Origin Author Year Source
De haan en het hennetje 210 Netherlands 2001 Nederlandse VolksverhalenBank
De wereld wil vergaan 210 Netherlands 1896 Nederlandse VolksverhalenBank
Haneneefje en hennenichtje 210 Netherlands 1970 Nederlandse VolksverhalenBank
Hannenèfken en Hennenichjen 210 Netherlands 1907 Nederlandse VolksverhalenBank
Herr Korbes 210 German Internet Archive
Janmainje mit wortelkoar. (fragment) 210 Netherlands 1873 Nederlandse VolksverhalenBank
Little Hen and Little Cock 210 German Internet Archive
Monkey and the Pheasant 210 Japanesse Internet Archive
The Pack of Scoundrels 210 German Internet Archive
The Tale of Nung-kua-ma 210 Chinese Internet Archive
The Tale of Nung-kua-ma 210 Chinese Internet Archive
Van Katje-matje. 210 Netherlands 1893 Nederlandse VolksverhalenBank
この中で一番出版年代が古いのは恐らく1720年代に発売されたとされている「さるかに合戦」になる。中国に類型があることからインド・ペルシアにオリジナルがあるのではないかと思われ、どうもインドの「パンチャタントラ」(西暦200年頃に成立)に類似の話があるようである。
しかし、グリム童話における「コルベスさま」の最も恐ろしいところは、コルベスさまは、殴りこみをしてきた動物たちに、いきなり殺されることである。
そう、「さるかに合戦」が復讐劇なのに対し、「コルベスさま」は単なる押し込み強盗なのである。
コルベスさまの登場人物
めんどり、おんどり、ねずみ、猫、石臼、卵、鴨、留め針、縫い針、コルベスさま
さるかに合戦の登場人物
カニ、蛇、荒布(あらめ。海藻のこと)、杵、臼、卵、包丁、蜂、サル(バリエーションによって変わる)
トドメを差すのがどちらも臼であるところにこの話の類似性がある。「コルベスさま」は、コルベスさまどういう人物か説明している部分が欠落したので単なる押し込み強盗の話になったのではないかと思われる。一方、日本の「さるかに合戦」はバリエーションが多すぎてなんとも言えない。
「ブレーメンの音楽隊」の話に戻ると、この話は「ハーメルンの笛吹き」と同じ背景を持っていそうな気がする。つまり東方移民がモチーフになっているのではないか?
中世ゲルマン人は食べられる土地を求めてポーランド方面に移住をしていた、その時代が背景にある話。ブレーメンの音楽隊も途中の家を乗っ取っただけで、ブレーメンに辿り着いていない。目的は、食べられる土地を得ることであっブレーメンに行く事ではないからだ。