創作に侯爵を使うべきではないと考える理由
3つある
中世ヨーロッパに侯爵は存在しない爵位だから。近世ヨーロッパで生まれた爵位になる。フランスとイギリスの侯爵は実は辺境伯(Marquis, Markgraf) なのである。ドイツの侯爵(Fürst)は、元々諸侯、つまり封建貴族全体を指す語である。ドイツの侯爵は、封建貴族に含まれない法服貴族をルーツとするものが多いようだ。
音読したとき、公爵と侯爵の読みが同じ「こうしゃく」になるから
文脈でどちらか区別できないから
「りひてんしゅたいんこうしゃく」はどう綴るのが正解だろうか?実はリヒテンシュタイン公爵、リヒテンシュタイン侯爵、どちらも正解なのである。つまり公爵と侯爵の区別は文脈でも理解不可能なのである。ドイツ語でリヒテンシュタイン公爵はFürst von Liechtensteinと書く。Fürstはドイツ語で侯爵を意味する単語である。ところが英語に訳すとPrince of Liechtensteinになるのである。この場合、princeは王子ではなく元首と言う意味を持つ。FürstはMarquessではなくprinceと訳されるのだ。このprinceは、日本語では大公もしくは公爵と訳すのが通例になる。つまりこのケースでは大公でも公爵でも侯爵でも正解になるのだ。要するに文脈でも判断出来ないのである。外務省が邦訳をリヒテンシュタイン公国としているので公爵と訳すのが妥当だろうがどちらも間違いではないのである。
これは、ヨーロッパの貴族制度を中国西周の五等爵に無理矢理訳したために生じたバグなのだ。さらに公爵をdukeとprinceの両方を公爵と訳したためにこのようなおかしな現象が生じている。さらにグレートブリテンにおけるprinceはdukeより上位にあるため、ドイツと順番すら逆転する。
このように侯爵を取り入れることにより、侯爵に起因するややこしさも取り込んでしまう。ゆえに使うべきでは無いと考えるのである。要するに侯爵と公爵を書き間違えても間違いとはいえないと言う現象が起きてしまうのが最大の問題なのでなる。