キーワード選集_知識構成型ジグソー法

短い時間で、濃く学ぶ主体的学習を促す【知識構成型ジグソー法】とは?

こんにちは、ミテモの小林です。
私と眞蔵修平さんの2人でお届けする「5分で学ぶ!人材育成のキーワード選集」。第三回の今回は【知識構成型ジグソー法】をご紹介します。

学習というと、個人でやる勉強や講義型の受動的なものをイメージしてしまいがちです。しかし過去の多くの研究が主体的に学ぶほうが学習効果が高いことを示しています。今回ご紹介する「知識構成型ジグソー法」は、主体的な学習を促すための一つの学習手法です。

一人でやるのでも、誰かの話を聞くのでもなく、みんなで主体的に学ぶにはどうしたらいいのか。一つの参考として、漫画とともに今日も人材育成に携わる人ならば知っておきたいキーワードを解説します。ぜひご活用ください!

eラーニングを用いた学習は、映像を見たり、テストやアンケートに取り組んだりと、個人で行う作業が中心となるため、受動的な学びになってしまいがちです。しかし「何かを学ぶ」には、自分の言葉で説明をする、わからないことを調べる、周囲の人と意見交換を行うといった、主体的な行動が重要だということがわかっています。

そこで、本日は主体的な学びを促進する方法「知識構成型ジグソー法」をご紹介します。まずは集合研修などで活用される通常の進め方について説明し、その後eラーニングを活用した応用的な進め方を紹介します。

知識構成型ジグソー法とは 

「知識構成型ジグソー法」は、東京大学の三宅なほみ名誉教授が、心理学者エリオット・アロンソンのジグソー法をもとに提唱した教育手法です。受講者同士の話し合いを重視しており、全員が主体的に参加することが求められるため、当社のワークショップでもこの手法をベースにすることがあります。

集合研修での進め方 

1.問いの設定
まず講師が「問い」を設定します。この時、問いの答えにたどり着くためのキーワードを4個用意しておき、必要であれば関連資料などを準備します。

2.グループ分け
次に受講者を、用意したキーワードの数だけ、グループに分けます。

3.対話・理解(エキスパート活動)
1グループに対し1キーワード(A~D)を与え、そのキーワードの内容や意味について、グループ内で調べたり話し合うことで理解を深めていきます。この過程で、グループのメンバーにはそのキーワードのエキスパートになってもらいます。

4.説明・解説
一通り理解を深めた後に、それぞれのグループから1人ずつが集まった新しいグループを作ります。そしてそれぞれが、エキスパート活動で理解した内容を説明・解説し合います。このステップを通して、他のキーワードのエキスパートから新たに得た知識と、自分が担当したキーワードとの関連を考えることで、さらに理解を深めることができます。

5.答えの作成(ジグソー活動)
お互いのキーワードについての知識を共有し、理解が深まったところで、提示された問いへの答えを考えていきます。

6.発表(クロストーク活動)
5で考えた答えとその根拠を他グループに発表します。互いの答えと根拠を共有し、その違いを知ることで、新たな気付きを得ることができます。

1~6の流れを通して実施することで、1回の研修で様々な分野を学び、領域を跨いだ議論を行うことができます。また、人は学んだことを誰かに説明するときに、最もその内容が定着すると言われています。ただ調べるだけでなく、その分野について他の人に説明し、その知識に基づいて議論を行うことで、深い理解を得ることができるのです。

それでは次に、この手法をeラーニングに応用する方法をご紹介します。

知識構成型ジグソー法をeラーニングに応用する方法 

eラーニングでこの手法を応用する場合、二つの方法が考えられます。

一つは、先のパートでご紹介した集合研修での進め方の「3.対話・理解」の部分で、知識を得るための手段としてeラーニングを用いる方法です。この場合は、1~6までの手順をそのまま実施することができます。

そこで下記では、もう一つの方法として「いつでも・どこでも学べる」というeラーニングのメリットを残したまま本手法を取り入れる方法を紹介します。受講者の主体的な参加が求められる設計になりますので、全社員向けではなく、意欲のある管理職や学習テーマに該当する部署向けの研修におすすめの内容です。

1.問いの設定・グループ分け
まず受講者に対し、取り組むべき問いを与えます。その後、答えに結び付きそうな教材を洗い出し、それぞれに4~5人ほどの受講者を割り当てます。この際、関連資料などがあれば合わせて提示します。例えば、「CS(顧客満足度)向上のためにできることは何か」という問いを与え、「組織的なCS対応」「クレーム対応」「ケースで考えるCS向上」「電話応対」などの映像を用意します。

2.対話・理解
受講者はそれぞれの映像を視聴し、学んだことや考えたことをアンケートに答える形で共有します。同じ映像を視聴した受講者間で、感想や気づきを共有することで、自分だけでは得られなかった知見を得ることができます。

3.説明・解説
次にそれぞれの項目について一人ずつ集まったグループを作成し、理解した内容を説明・解説し合います。「2.対話・理解」で行ったようなアンケートを用いることも可能ですが、このステップではオンライン会議システムなどを用い、できるだけ対話を行うようにします。受講者は自分がしっかり理解していなければ、グループ全体の理解も停滞するので、高い意識を維持しながら学習することができます。

4.答えの作成・発表
それぞれの知識を組み合わせ、話し合いながら問いの答えを作り、共有します。最後に講師が、出てきた答えを取りまとめ受講者全体に共有します。

いかがでしたでしょうか。
この手法を用いれば、個人での学習になりがちなeラーニングを協同的な学びの時間に変えることができます。


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