お金の話〜未来からタイムスリップしてきた自分に説教された件〜
私はお金の話がきらいだ。
お金なんかいらない。
面白い芸人さんがちゃんとその才能を認められて売れてくれたらそれでいい。人生最高。才能ある人が解散して辞めていくのを何もできずに見てるのだけは絶対にいやだ。
それにお金を手に入れたところでどうしようもないとも思っている。
どんだけお金を積んでも人の心は買えないし、最新の医療や科学でもどうにもならないことはまだたくさんある。別に実家が金持ちとかではなく極めて平民だったけど、お金ではどうにもならない絶望がたくさんあった。
容姿だって、今は整形で金かければどうにでもなるやん、と簡単に言う人がいるが、それはブスの気持ちを何もわかっていない。
お金のことでは親とも昔から散々言い合ってきた。
「好きなことやれたらそれでいいんや!金なんかいらんのじゃ!」と言う私に対して母は、「金がなかったらどうやって生きてくんな!草食べていくんか!」といつも怒っていた。
友達夫婦でも、裕福ではないけど郊外の狭いアパートに住んで、子供育てながら楽しそうに暮らしてる人もいる。大学の友達の生活レベルからしたら考えられないと言うけど、私はそれの何がいけないのと思っている。
タワマンに住んでハリーの指輪もらって毎日高級化粧品を使うことだけが幸せだなんて、誰が決めたんだよと思う。
もちろん裕福な生活ができるに越したことはないけど、それよりも手が届かない、大事なものがある。
そんな私だと知るはずもないおばあさんから、先日、公園で突然話しかけられて、将来困るからお金は稼いでおけと説教された。
お金なんかいらないと思ってるでしょ、とも言われた。
突然すぎるし図星すぎて、ちょっと笑いながら会話してしまった。失礼だったかもしれない。
まじで未来から来た自分に言われているみたいだった。
20年後、いや30年後40年後のことを想像すると確かに恐ろしい。
年老いた女にお笑いの仕事なんかあるのか。
ひとりで路頭に迷って頭おかしくなって、KOCの予選会場からぶつぶつひとりごとを言いながら出てきて気持ち悪がられるような老人になったりするのかもしれない。
いや…
お金がないとKOCの1回戦すら見に行けないのか…
確かに生きるためにお金は必要だった。
そもそもこんな悠長なことを言えているのも、実家暮らしで、公務員の時に貯めたわずかな貯金があるからだ。
私も口座が0円で明日のお金がなかった時は、貧乏にしか目が行かなくてこんなこと言ってなかったかもしれない。
それと、お笑いの世界に作家として戻ってきて半年以上が経ち、いろんな先輩と出会った。
大人な先輩方は口を揃えて、お金は大事、儲けなきゃプロじゃない、そんなギャラ安いの受けたらダメだよ、交渉しなきゃ、ナメられてるよ、と言う。
とりわけ誰がとかじゃなくて、売れて生き残ってる先輩方はだいたいそう言って聞かせてくれた。
すごく耳が痛くて嫌だった。
でも確かにプロとして、それ以前に大人として、好きなことだけやれてればいいというのは考えが甘く幼稚すぎるのだと思った。
たまに同級生とごはんに行くと、みんなバリバリ仕事もしながら子育ても頑張っていて、自分は実家暮らしでこんなギャラしかもらってないのに"仕事"と呼んでることがとても恥ずかしくなる。
それを稼げない情けない自虐としてツイートしていたけど、よく考えたら一緒にやってくれている社員さんたちに申し訳ないなと思ってやめた。
ギャラをできるだけ払おうとしてくれる社員さんもいるけど、お笑いライブの商業規模自体が小さいから限界がある。
そしてびーちぶでライブを打たせてもらうようになって、こんどは自分が出演者にたくさんギャラを払えないということも経験した。出てくれた面白い先輩や同期たちにもっとふさわしい額のギャラを渡したかった。
やっぱりお金は必要なんだとわかった。
自分が育ててもらった地下に対して恩返しがしたいからずっと地下にいたいと思っていたけど、自分まで地下に埋もれたら押し上げることもできないのだと痛感した。
権力的にも、もし局員になっていたら、代理店に就職していたら、少なくとも今の自分より助けれることは多かったはずだ。
いまだに作家というものがよくわからず、毎日反省を繰り返しているけど、できるだけ地上を目指して、みんなの役に立つために自分に何ができるか考えて頑張ります。
(作家としてダメなんですが、SNSが苦手で、140文字からいろんな誤解を生んでいるかもしれないと思い、こちらで2000文字使って書きました。
Twitterやめようかなともたまに考えるのですが、ライブを作る以上せめて告知くらいは協力した方がいいと思って残しています。)
おわり