向日葵の花言葉《③》
目が覚めた瞬間目には乾ききらない涙の跡とほのかな彼の気配が残っていた。急いで飛び起き彼を探した。あの時話していたことはなんだったの?本当に死んでしまったの?聞きたいことが溢れて無我夢中で彼を探し続けても彼の姿はどこにもなかった。目から涙が溢れる中久しぶりに感じた彼の声、彼の顔、彼の気配。あの日、急に私の目の前から消えてしまった悲しみから私は動くことも受け入れることもせず、彼の死を拒絶しそのせいで夢にさえ会いに来てくれないのだと思っていた。そんな事は私が勝手に思ってしまっていたことで彼の思いではない事なんてとっくに気付いていた。彼は全力で私を愛し見ていてくれた。私が抱いていた不安なんて比じゃないほどの大きな愛に気づいた瞬間私の中のぽっかり空いた穴に一つのピースが埋まると息もできないほど声をあげ泣いた。
次の日目を覚ますと久しぶりの爽快感を少し感じながら起きた。
何がどう自分の中で変わってきたのかはわからないが今まで止まっていた時間が少しずつ動こうとしていた。とりあえず手始めに部屋の片づけからすることにした。久しぶりの掃除に元々得意ではないお蔭で時間がかかってしまい気付けば夕方になっていた。ある場所以外の掃除は終わったがあるところだけは手付かずだった。
彼の部屋にはあの日以来どうしても入ることが出来ずにいたが思い切って入ることにした。彼の部屋のドアノブに手をかけゆっくりと深呼吸をしドアを開けた。久しぶりのに入る彼の部屋は彼で満ち溢れていた。懐かしく落ち着く匂いにここだけ時間が止まって主人の帰りを待っているかのように私の胸を締め付けた。ほんの少し前までは当たり前の様にそばで感じていたものなのに今はもう過去の産物に変わってしまった。ゆっくりと部屋に入り部屋の窓を開けると一気に勢い良く心地いい風が吹き込み彼の香りごと窓の外に出ていってしまった。余韻に浸りたい気持ちを押し殺し彼の部屋を見渡す。彼は男のクセにわりと綺麗好きで私より掃除が得意で綺麗に整理整頓されていた。特に目に入ったのは本棚でたくさんの本が並んでいた。私の部屋にも仕事関係で多少本はあるが片手で済んでしまうほどで彼の様に本棚にぎっしりと並ぶほどではない。そのほとんどが仕事関係と思われるものばかりでその中で一冊だけ少し違和感のある本を見つけた。引き抜いてみると花言葉辞典だった。なぜこんなものがあるのかと手に取ってみるとあるページに付箋がしてあった。そのページを開いてみるとページ一面に咲き誇るひまわり畑の写真があった。その場所は知る人ぞ知る有名な観光名所でそこはある事が有名で年間多くの人が訪れるという。そしてその付箋には『私をこの場所に必ず連れていく!』というメモ書きが書き込んであり、なぜ彼が急にこの場所に行こうと言ったのか。あの夢で最後に言った彼の言葉がこれを聞いていたのだと『向日葵』という名前の下に書かれていた花言葉でさらに私は彼の思いに触れ言葉を飲み込み泣き崩れた。
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