ストーブ
「人間と同じように、物にも心が宿っている」
いつだったか、どこかでこんな言葉と出会った記憶がある。
思い出したきっかけは、家の洗面所に置いてある電気ストーブだ。
これはもともと父が山から拾ってきた古い物というのもあるのだけど、寒いからこそ使いたいのに寒すぎるとなぜか動いてくれない。
ピィーッピィーッと、かすかな甲高い抗議のような音を鳴らして一向に作動しない。
まるでこんな寒い日に働かせるな、とストライキを起こしてるみたいだ。
だから通常は一度暖かい別の部屋に移動させて、少し温めて機嫌を取ってから使用する、という面倒くさいことをしていたのだけど、ある朝、思い立ってストーブをぎゅっと抱きしめてみた。
すると3秒後、ストーブは突然「ピッ」と音を立て点灯し、暖まり始めたのだ。本当のことだ。
驚きすぎて思わず、おぉっと声が漏れたし一瞬背中がのけぞった。
それからというもの、いつもより特に寒い朝はストーブに手を触れたり声を掛けたりしながら電源ボタンをオンにしている。
時々駄々をこねることもあるけれど、それをすると動きが断然に違うのだ。
もう一度言う。
これは本当に本当の話なのだ。
身の回りに最近くたびれて調子の悪い機械や家電のある方は、ぜひ一度、ハグしたり話しかけたりしてみることをおすすめしたい。