見出し画像

自分の常識は非常識なのかもしれない

情報処理技術者試験では、問題文の区切りに読点(、)ではなくカンマ(,)を使用して記載されているのをご存知ですか。
自分の知識や経験が常に正しいとは限らないということを理解していても、普段見慣れないものや自分の知らないことに出会った時に、「自分が正しい=相手が間違っている」という前提で物事を見てしまいがちになってしまっていたなぁと感じた出来事を書かせていただきます。

応用情報技術者試験_クロップ

私にとっての常識

書籍、Web記事、ビジネス文書など普段目にする文書では読点を使っているものが多く、ましてや、小学校の国語で句点(。)と読点(、)を文章の区切り文字として習って以降、日本語の文章は句読点で区切る。というのが私にとっての常識になっていたようです。
そのため、当時システムエンジニアだった私が情報処理技術者試験を受けた際に、問題文がカンマで区切られていることが妙に気になり、試験中ににもかかわらず、
「出題者の好みなのか?」、「カンマの方が見やすいのか?」、「問題文が横書きだから、英文にならって、カンマ(,)を使用している?ならば、文末がピリオド(.)でないのは何故。」など考えていました。
試験終了後すぐに調べていれば、google先生が理由を教えてくれていたかもしれませんが、試験時間の終了とともに試験中の出来事をスッカリ忘れて放置してしまいました。

私の思い込み

数年が経ち、たまたま情報処理技術者試験の過去問を使用した教材を制作する業務に携わった時に、教材で取り上げた過去問の文字区切りがカンマになっていることに気づきました。
カンマの存在を忘れていたため、本来読点で書かれているはずだという私の思い込みが先行し、制作過程で混入した不備だと判断してしまいました。タイプミスやスキャンした際のOCRソフトの変換ミスを疑ったのですが、過去問の原本を確認したところ、カンマが使用されており、「なぜ国家試験で読点が使われていないのだろう」と不思議に感じたところで、試験中に気になっていたことを思い出しました。

編集者にとっての常識

国家試験での記載なのだから何かしら理由があるはずだと冷静になって考え直し、そこで初めて理由を調べてみようと思いました。
同僚の書棚にあった、エディターのための原稿編集のルールを纏めた本を確認したところ、横書きの公用文ではカンマを使用する旨が記載されていました。あっさりと私の常識は覆されたわけですが、根拠は、昭和27(西暦1952)年に『公用文作成の要領』で横書きでの句読点は「,」および「。」を用いると通達されたためだそうです。
ルールブックを保持していた方は、長年教材開発に携わっていらっしゃり、カンマについて伺ってみたところ、その方にとっては常識だったようです。
だいぶ話を引っ張った割に、公用文に馴染みのある方にとっては、冒頭の疑問に対する答えが浅くて申し訳ないのですが、カンマが使用されるようになった経緯や歴史的背景は、他に譲りたいと思います。Wikipediaなどを参照ください。

診断士にとっては常識?

システムエンジニア時代は公用文に馴染みがなく、横書きのカンマに、このような根拠があるということすらも知りませんでした。しかし、教材制作を行ってきた編集者にとっては、割と当たり前のことでした。
では、公用文に携わることの多い中小企業診断士の方々や、世間一般の方にとっては、どの程度当たり前のことなのだろうか。という疑問も湧いてきます。アンケートを取るわけではないので答えはでませんが、ところ変われば非常識(常識)ということはよくある話です。

さいごに

普段見慣れないものや自分の知らないことに出会った時、判断基準は自分の経験や知識になるので、先ずは自分が正しいという立場に立って考えることは、必ずしも誤りではいないと思っています。ただし、固定観念に囚われすぎて自身の無知による恥をさらさないように気をつけたいなと感じた出来事でした。余談ですが中小企業診断士試験では、カンマを使用せず読点を使って記載されているので集中して試験に取り組めます。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?