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文藝春秋9月号『私たちの「自民党改革試案」』雑感【三世議員のゆる政治エッセイ Vol.7】

4回生(2012年12月初当選組)による改革試案

 安倍総理銃撃後の統一教会の話から、清和会の裏金まで自民党が揺れに揺れた。私は自民党の末端の構成員で、地域の人からよくご意見をいただいたが、党内にいるとその対応については大組織だけにどこか他人事で、本心は「どーせ上が決めることだろ」、「なるようにしかならねーよ」という感じだった。国会議員と話しても若手の間では同じ空気感なんだろうと感じることが多かった。だから中堅と言われる世代の国会議員が党行く先を考えて、改革案を内外に向けて発表することは、あぁ、そういう雰囲気があったのかと安心するとともに、外野を含めて議論するのはいい方向だと思う。

 文藝春秋9月号に掲載された『私たちの「自民党改革試案」』発案者の福田達夫さん、大野敬太郎さん、小倉将信さん3人は自民党の国会議員4回生で、この期は2012年12月の選挙、つまり安倍総裁の下で自民党が政権を奪還する選挙での初当選組だ。現在4回生は60人以上いて、自民党国会議員のボリュームゾーンでもある。その中で、親父も祖父も総理だった福田達夫さんは4回生の筆頭格(のひとり)とも聞いている。
 今回の改革試案は、スキャンダル時の党の調査の権限や、説明のあり方の方針、クオーター制、派閥にかわる政策集団の話などが提案されている。派閥については麻生派以外の派閥は実際に解散されたので、試案ならずとも、今後の対応を決めなければならない。

人事評価に組み込まれていた派閥をどうするか

 試案では、派閥が担っていた政策形成と、議員養成機能について言及されている。派閥が大臣などの政府・党のポストを総理に推薦していた話は有名だが、それだけではなく、自民党の派閥は議員の人事評価を担っていた一面がある。
 自民党の派閥は、他に例えようがないが、しいて言うなら会社組織の課みたいなもんで、「あの人、よく知ってるよ」、「一緒に仕事しているよ」という人間関係を構築できる機関だった。大企業だと、課をまたぐと「存在は知ってるけど、よくは知らない」となるが、自民党も同じで、党は一緒でも派閥が異なると、県が同じとか、委員会やら議連やら、党や政府の役職で一緒に仕事する関係にならない限り、あまり接点はなく、詳しくは知る機会がない。
 一方で、派閥が同じだと、国会会期中は週一回全員でミーティングをして、定期的にメンバーで飯を食って語らい、補欠選挙やパーティーや議連活動で協力をしあったりする。ようは顔をよく合わせ、頼り、頼られたりする。それが何年も何年も続いていくと、何となく「コイツはすごい」、「アイツは、うーん」みたいな評価が形成されてくる。そこに年に一回派閥のパー券のノルマが課せられて、ノルマ以上に売る人はいよいよ「あの人は面倒見がいい」、「しっかり汗をかいている」という評価を得られる機関でもあった。
 こうして人望を勝ち得てくると、政策面を含めて「あの人の声掛けだから」、「誰々さんが言うんじゃ、しょうがないな」と発言力を持ち、議会人として重みが増してくる。派閥で汗をかいたら党・議会・政府のポストも推薦される(もちろんその就いた役職での評価も重要)。こうした人事評価の一面を担っていた派閥を解消したので、今後は別の評価方法が必要になる。

「誰とやるか」より「何をやるか」の改革試案

 前述のように、政策には人間関係が影響を及ぼしている。アベノミクスも中川秀直さんが「上げ潮」派なんて言われて率いてた時の人気はイマイチだったけど、安倍総理が推進したらイケイケドンドンになった。
 いうなれば政策は中身を「何をやるか」ではなく「誰とやるか」ということだが、改革試案では「影の内閣」、「未来の内閣」、党政調会機能の増強をすることで、党の政策能力の強化を提言している。こうした新しい政策機関で、政策形成をすると同時に、議員の評価がなされるといいなと思う。

 ひごろ、同世代の自民党の地方議員の仲間たちと話をしていると、今の自民党に危機感を持っていて、中長期で物事を考えてくれるリーダーを求めている。若手の地方議員は比較的選挙は強いケースが多いので、間近の選挙のことより、20年30年先まで所属できる政党、足腰の強い政党を作ってくれそうな人に関心がある。若手・中堅といわれている国会議員の中からそういう問題意識をもった総裁候補が出てきたら、若手の地方議員はみんな応援するんじゃないかな。

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