オペラハウス Opera/House
目の前にして出なかった言葉たち
今になって溢れ出しては、 彷徨う亡霊のよう
目が合えば心がギュッとして
この世界を善と見る
亡霊たちが悪さをして
凍りつく脳みそ
スクリーンの前にひとり、ふたり
少女と肩並べて
エンディングへ向かう
横目に僕はいるのかい
不思議な力を持つ少女と
凍りついた少年
嫌な音がして割れても
液体となって空へ飛ぶ
亡霊たちは行き場を探して
少年の脳みそを徘徊する
いまじゃない
そうじゃない
つまらない言葉並べて自閉自尊
少女の背中で反省会ばっか開いて
スクリーンの前にひとり、ふたり
エンドロールの文字を追って
ラストシーンのその先へ
君はいるだろうか
あの子と座った
映画の椅子には
亡霊たちを誘う
消え方を探している
その日はきっと眠れなくて
少女の力で凍りつく
このストーリーの中に
少女と少年
あの子にオファーを出して
返事はどうだろう
オープニングを待つ
亡霊たちは消えていた
物語はオープニングからエンディングへ決まって進む。ラストシーンの後はクレジットの文字が上から下へと 流れていく。ある作品にはその後も少しだけ物語があったりするし なかったりもする。エンドロールで劇場を発つ者もいれば、 まだかまだか とエンディングの先を待っている人もいる。
もちろん劇場の中にも物語はあるし、外にだって物語で溢れ出ている。
きっと亡霊にように。
亡霊は実体の持たないものだと想定するとして それは言葉であると想像する。消化できる言葉もあれば、言い出せずに終わる言葉もある。言葉には、その人自身の想いであり、魂のようなものに近い。 勝手に土に還るはずもなく、 朽ちる方法を探し始める。
ああすれば、こうすればの脳内討論会で物語を理想に 書き換える。実際にその脚本にその子名前があるかど うかなんてわからない。
ページをめくって
劇場の席に着いて
エンドロールに流れる文字を最後まで追って
背表紙までたどり着いて
非常灯の灯りが点いて
初めて知る。
結局あの子は映っていなかったかもしれないし いたとしても、エンディングには姿が見えないかもしれない。はたまた、少女は主演で踊っているだろうね。
亡霊たちはいなくなる。その少女がもつ不思議な力によって。不思議な力は、少年の脳みそをいつだって凍らせるし、溶かす時もある。
少女と会えれば溶かされ話せたら蒸発する。反対に、うまくいかなかったら凍りつき、しまいにはヒビ入って粉々になる。それでもまたいつか溶かされれば、 個体となって回復する。
少年にとって少女は、不思議な力を持っている。