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ニワトリ石の声をもとめて
物語をさがして vol.16
物語の題材を求めて昔話を読むと「石」をモチーフにした話が実に多い。これまでに取り上げた近くの石は「猪の姿の猪子石」「長久手の床机石」・・・
気になりだしたら今度は石の話を探し、石のことばかり考えているイシハマカオリです。
そういえば小学校の頃、同級生にイシハマさんがいたっけ。発音がよく似ているのでよく聞き違えられましたが、あの歌の上手だったイシハマさんはお元気でしょうか。と、意識があちこち飛び石状態ですが、今日は豊田の田籾町に「鶏石」なる石があるというので見に行ってみました。
はじめに、豊田市に伝わるニワトリ石の昔話をこままんがでご紹介いたします。
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石が毎朝、鶏のように泣くというのは面白い言い伝えですよね。
人を恨むでもなく災いを呼ぶでもなく、朝を告げて人々を起こしたとは。
その土地に住むものを守ってくれているようで頼もしい存在です。
そのニワトリ石(鶏石)は、今も愛知県豊田市田籾町鶏石にあります。地名がそのまま「鶏石」になっていますね。県道58号線、愛知豊田線の道沿いです。
県道58号線はトラックや車が行き交い交通量が多いので、ゆっくり脇を見ている暇はありませんから、ほとんどの人が気づかず通り過ぎてしまうと思いますが、ガードレールのすぐ脇に鎮座しておられます。知っていれば通りすがりにちらりと見えるでしょう。なにせ大きいので!
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写真右がニワトリ石です。お地蔵様、不動明王様とともにお祀りされています。
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かなりの巨石。ニワトリというからもっと小さいものだと思っていました。
家康の腰かけた床机石【家康の腰かけた石をたずねて】に負けない大きさです。そもそも、この大きな石をいったい何の目的でここに運んできたのでしょうか。
『愛知発巨石信仰』(中根洋治著 愛知磐座研究会)によるとこの石は花崗岩だそうです。
同書では、家康の腰かけた床机石の方はホルンフェルス。日進市岩崎の菊水の滝【菊水の滝とどろぼう】のところにあった石と同じです。ごつごつ感が確かに似ていました、ぱっと見て岩石の種類が分かるようになればもっと楽しいでしょうね。
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石は正面から見ると丸いフォルムのようですが、回り込むと背が細くなっていて、ニワトリというより牛の背中のようです。牛よりももっと大きい。2頭分くらい。
もしかしてと思いましたが残念ながら鳴き声を聞くことはできませんでした。
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石碑にも示されていますが、地域にはこんな民謡が残されています。
ここが田籾か ニワトリ石か
鳥はいないに 時つくる(ザンザ節)
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田籾町はその名の通り今も田がたくさん広がっていました。
取材に行った折にはちょうど色づきかけた稲の穂を見ることができました。
今は長い沈黙の中にいるニワトリ石がまた気が向いて声を聞かせてくれることがあれば面白いですよね。
皆さんのお住いの周りにも気になる石、ありませんか。
参考
『三河の民話』寺沢正美編 未來社
『愛知県伝説集』福田祥男 名古屋泰文堂
『ふるさとお話の旅7 愛知・奥三河』野村純一 監修 杉浦邦子 編 星の環会
『愛知発巨石信仰』中根洋治 著 愛知磐座研究会
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