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自然や環境についてのぞいてみる 〜 Re! Flower garden 活動報告
花、暮らし、私 vol.15
こんにちは。フラワーデザイナーの出水です。
今回の記事はいつもとは趣向を変えて、現在 松坂屋栄店で開催されているイベント[Re! Flower garden]で携わらせていただいた、invisible flower(廃棄花のものづくりブランド)の活動リポートをお送りしたいと思います。
Invisible flower (インビジブル フラワー)とは?
2019年より「廃棄花を人の手に届け、廃棄花をなくしていく」ことを目標にスタートしたinvisible flower。一度でも花屋に並んだ花ではなく、生産·流通段階で出荷できず弾かれてしまう花を対象とし、ものづくりを通して人の手に届ける。という活動です。
ご存知ない方も多いと思いますが、花の世界も野菜と同じで、規格外や出荷調整という、人の消費活動の中で決められた枠からこぼれ、その価値が誰かに届くことなく廃棄されてしまう存在があります。病害虫で痛んでしまう花だけではなく、美しい姿の花もたくさんあるのです。
花市場での経験を通してその存在を知った私は、なんとも言い難い気持ちを見過ごすことができず、この活動を始めました。
[ Invisible=見えない] という意味があります。意識して注意して見ないと見つけられない、でも、確かにそこに存在する命に目を向けたい。その思いから、「ロスフラワー」ではなく、生産·流通段階で捨てられてしまう花を「invisible flower」とし、そのままブランド名としました。
「ものづくりを通して」というのにも理由があります。規格外だから、廃棄だからという理由で花を安売りしてしまうと、花そのもの、ひいては花業界の価値を下げる事にも繋がるのです。規格外や廃棄してしまう花を、ちゃんと価値あるものとして、新しい形の美しさにして楽しんでもらいたい。
そんな気持ちでものづくりをスタートしました。
百貨店とのコラボ企画のはじまり
Invisible flower は、百貨店でのポップアップショップやマルシェ出店などで一般の方向けの「花和紙アイテム」や「アート作品」として販売を行なっています。
昨年、松坂屋410周年の記念イベントに参加したご縁から、また、店内で作品展示のお声がけをいただくことができました。
それが、何とも広いスペース…!!
大型作品を何枚も展示できるスペースを預かることになりました。どうやったら皆さんに楽しんでもらえるか、花に興味を持っていただけるか、試行錯誤の日々が始まりました!
今回私が担当するのは、”自然のこと、環境のこと、地球のあしたのことを考える” [ Think GREEN ]という松坂屋が定期開催している企画の中でも「花」にクローズアップした[ Re! Flower garden ]というイベントです。
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Think GREEN
https://dmdepart.jp/think_green/
Re! Flower garden
https://gentamatsu.jp/promo/page/archives/22361
Invisible flowerの考えとリンクする部分も多く、喜んでお引き受けさせていただきました。
環境のこと、花のこと、暮らしのこと、いろんなことに目も向けるきっかけに少しでも役立てば、そんなに嬉しいことはありません。
さて、どんな空間を作ろうか。
どんな作品をつくろうか。
妄想が膨らみます。
工房で。展示で。成長する作品たち。
おおよその展示の構成が決まり、いざ作品制作。
緑のたくさん茂る山をいくつか超えて、工房に向かいます。
愛知県豊田市にある工房をお借りして、数日間に渡る作品制作。
いつもお世話になっている、熟練の職人さんにサポートいただきながら、大型作品を一枚一枚丁寧に仕上げていきます。
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私は作品作りのために自分で和紙を漉きますが、それはこの職人さんのサポートあってこそ。技術も経験値も豊富な職人さんと、話し合いを重ねながらどうしたら目標とする表現ができるか、すり合わせていきます。
ときには、私が思いもつかなかった技法を「こんなこともできるよ」とアドバイスいただき、そこからインスピレーションを得て作品が進化していくことも。
こうして、少しずつ作品の表現方法が増えていき、私自身も内面の変化などで、毎回新たな作品と、私自身が出会わせてもらっています。
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仕事や私生活の面でもいつも思うのですが、今の自分のキャパ以上の状況と対面した時。それは苦しみの末に新たな何かを受け取る準備ができた時だと思うのです。
今回の展示のご依頼はまさにその状況でした。
大きな空間を埋める作品群。
たくさんの人が行き交う場所。
どうしたら人の心に届く作品になるのか、どうしたら想いが伝わるのか、花の鮮度はどうか、乾燥具合は?色はしっかり出てくれるか…
大手百貨店の看板を背負ったプレッシャーと、生物を扱った作品という特性もあり、時間との戦いに。この時は気が気じゃありませんでした。
ただ、その苦しみを超えて出来上がった作品はこれまでにはない表情を見せてくれました。
展示のたびに、作品が進化していくのを感じました。
花にスポットを当てた [ Re! Flowwer garden ]
役目が終わると廃棄されていた百貨店のショーウィンドウ装飾に、もう一度スポットを当てる。そんな想いから企画されたこのイベント。期間中は、ペーパーフラワー、ドライフラワー、生花で店内が彩られます。
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廃棄される花を使用したinvisible flowerの作品展示と、お隣にはアロマショップ、キャンドルショップが花で彩られた商品をたくさん揃えて場を彩ってくれています。
また、今回はinvisible flowerとのコラボ企画として、金山駅にある書店「TOUTEN BOOKSTORE」の選書と花和紙アイテムのセット販売などもしています。
TOUTEN BOOKSTORE
https://touten-bookstore.net/
2021年1月に愛知·名古屋にて開業。金山駅南口より徒歩7分、コーヒーやビールが飲める新刊書店。2階にはギャラリーとゆっくりできるカフェスペースもあります。読書会ほか、さまざまなイベントも開催。
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TOUTEN BOOKSTORE店主が選ぶ、花や植物·環境についての本はどれも初めて見る素敵なものばかりでした!何冊か、サンプルで展示会場においてありますので、ぜひ手にとってご覧ください。ゆっくりと本の世界に入っていただけるよう、小さなボックス状のベンチもご用意いたしました。
私が環境のことに興味を持ったのも、はるか昔に読んだ一冊の本から。
この本との出会いがなければ、invisible flowerも生まれていなかったかもしれません。
誰かにとっての、大切な価値観と出会う、そんなふとしたきっかけになったら嬉しいです。
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一緒につくる。考える。そこから大きな場が生まれる。
今回の作品制作は、いつもと大きく違う点がありました。
それは、担当のディレクターさんとしっかりじっくりやりとりができたこと。
おかげでいつも納品日·設営日ギリギリに作業完了する私が、余裕を持って制作·納品することができたのです。いつもは一人で考え、一人でつくり、一人で抱える不安やストレス。それがかなり軽減されたこともあり、安心して作品制作だけに力を注ぎ込めました。
私は普段から仕事で空間デザインをしていますが、いざ自分の空間を作るとなると難しいものです。作品を作る脳と、空間を組み立てたり、プロジェクトを進行していく脳が違いすぎて、その両方を同時には進められないということを実感しました。
誰かの力を借りるからこそ、より良い空間や作品が生まれていく。そんな体感をさせてもらえました。
そして、松坂屋のスタッフさん、設営当日の職人さんにも作品の保管や取り付け方法などとても助けてもらいました。
ものすごく素敵な人たちが集まって、今回のこの展示が出来上がったのだと感じています。
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視点の先に見えてくるもの
今回の作品は、「のぞいてみる」をキーワードとして組み立てました。
「のぞいてみる」という行為は視点を変えることにつながります。視点を変えることで、人生にも多様性が生まれると思うのです。その多様性が、いつか、地球を思う優しさに繋がったら良いな、なんて期待を込めて。
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展示は残り数日ですが、もしお時間がある方は一度のぞいて見てください。
ふわりと風にそよぐ花和紙たちが、お待ちしています。
※invisible flowerの作品展示は31日で終了となります
Re! Flower garden
https://gentamatsu.jp/promo/page/archives/22361
5月18日〜6月19日
※invisible flowerの作品展示は31日で終了となります
松坂屋南館1階 北入口イベントスペース
Invisible flowerを使った花和紙商品やグッズなどの販売会
5月28日、29日 10時〜18時
展示スペースすぐ横
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