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「はじめまして! イラストレーター・絵本作家のニシハマカオリです」 物語をさがして vol.01

はじめまして。はるのまいさんより、テーマ「創」を引き継いで記事を担当することになりました イラストレーター・絵本作家のニシハマカオリです。これから、どうぞよろしくお願いします!

今の心境は・・・自分のブログやサイトで書くこととはまた違う緊張感でハラハラドキドキしておりますが、こういった機会を持つことができ、いろんな方に記事をお届けできる嬉しさでいっぱいです。

前回クリエイターインタビューで取り上げていただきましたように、私もはるのさんと同じく、元教員で教壇に立っていました。はるのさんは中学の美術の先生、私は小学校で、国語が専門です。

「えー、イラストレーターなのに、美術じゃないんですね、国語なんですか!」

とよく驚かれます。そうなんです。美術や音楽も好きでしたが、大学入試の時、好きな科目で受験したのではなく、得意な科目で受験しました。芸術系大学の受験は何かと大変そうに思え、国語の成績がほかに比べてよかったのでそれを利用しようと思ったのです。

国語の成績が良かったから、国語科を受験する。なんとシンプルなアイデアでしょう。
自分の長所を生かして進学することに誰も異議を唱えないと思われましたが、そのとき、ひとり副担任の古典の先生がこんなことを言っていました。

「へー、好きなことより、出来ることをやるんだ~。ふーん。」

ちょっと批判的なニュアンスのその言葉にはちっとも心を動かさなかった私。

なぜならば、漢文のノートをとるのに、大学ノートを横置きにして縦書きにするのが面倒で、そのまま横罫に漢文の返り点を書く方法を編み出したと思って喜んでいたのにきつく叱られましたからね。その恨みです。愚かな高校生の私。

でも、こうしてなんとなくずっと胸にしまうことになったその言葉をくれた先生にはちょっと感謝しています。なんでもかんでも「そうだね」と肯定されるばかりだと、その時はいいけれど立ち止まって考える機会を失うものだと思います。子育てでも対人関係でも、恐れず(少々は)波風を立てていこうではありませんか。

そして、時を経てみると、出来ること・やれることもやっぱり好きなことにつながっているような気がします。お話や絵本に夢中だった子供のころの自分はそのまま大きくなって、今はこうして絵を描いたり、お話を作ったりすることを仕事にしているわけですから。

それに、教員時代に育ててもらったこと、学んだことはかけがえのない経験でした。教育実践のほかにも学んだこと。例えば、パソコン、事務処理、会計、園芸に飼育に放送機器・・・。(学校ってなんでも屋さんですよね!)もう一度過去に戻っても似た選択をするでしょう。

ただし、私は、教壇からは去りましたが、ご依頼の絵が教科書、児童書、参考書などが多くて、こんどは子供たちの机上に小さな挿絵の描き手としてちゃっかり舞い戻っているなあ、なんてことを思っています。


「物語をさがして」というタイトルについて


さて、「物語をさがして」とタイトルに掲げましたように、本連載では、「物語」をテーマに取り上げてみようと思います。

世の中には、古今東西いろいろな物語があります。「竹取物語」「指輪物語」「南極物語」「探偵物語」!?いずれにしても、遠い国や見知らぬ人から伝わってきた一つの物語に心を動かされ、時空を超えたところで勇気や力を得る。とても素敵なことだと思いませんか?

しかしながら、物語は遠いところにあるものばかりではありません。ベストセラーばっかりでもありません。私たちが住んでいる地域に伝わる物語、中には古びた書物の中にあったり、一部の人しか知らなかったりしてひっそりと忘れ去られそうになっている物語もあるでしょう。もっと近寄ると家庭の中や心の中にも、素敵な物語がかくれているかもしれせん

そういった身近な物語を探す取材、物語の書き手への取材、また、書籍を出版、販売するなどして物語を広げる役割を担っている会社や店舗などのご紹介、物語につながるいろいろな面白そうなことに目を向けて、みたすくらす「創」~物語をさがして~の記事を書いていくつもりです。ひいては自分の制作のネタ探しに・・・いえ、豊かな創作力の源とできたらと考えています。

まだ(予定)ではありますが、こんな記事を書いていきたいです。

・地域に伝わる昔話について
・地域にゆかりのある画家・作家など著者について
・書店・出版社の活動や紹介
・そのほか物語に関する興味深い事象


地域にまつわる物語を読む「紙芝居」


私は日進市在住です。絵本やイラストを発表しているので、時折、地域のイベントで、紙芝居を読ませてもらう機会があります。そこでは地域にちなんだ昔話や創作を制作し、発表しています。

せっかくそんな機会があるのならば、紙芝居のスタンドも欲しいと思ったのですが、買うのもなかなか値が張ります。借りると壊しそうでびくびくしてしまうので・・・オリジナル紙芝居スタンドを作ることにしました。お借りした本格的な紙芝居スタンドをモデルに、寸法をとって夫に木材をカットしてもらいペイント・組み立てしました。

こうしてりっぱなスタンドはできあがりましたが、紙芝居の上演はなかなかにむずかしいものです。軽い気持ちで取り組んではみたものの、絵本の読み聞かせとは、なにかがちょっと違うのです。以前、別の企画で一緒に紙芝居を制作した劇団三文芝居の柳澤二郎さんは、さすがに読むのがとてもお上手で、コツをお尋ねしたところ、

「釣り人の心境だ」

とおっしゃっていました。一体どういうことなのでしょう。
動く絵を眺める点では動画の視聴とも似ているけれど、紙芝居では聞き手と読み手が対面している臨場感がありますよね。場の雰囲気や様子を体感しつつ、感動を引き上げていくようなニュアンスなのでしょうか。スタンドの形のように、紙芝居は小劇場ととらえるとよいのかもしれません。
描くこともそうですが、読みの練習もまだまだ必要!というわけです。


紙芝居の内容をちょっとだけご紹介


最後に、これまでに制作・上演した「にっしんのむかしばなし紙芝居」から2話。資料をもとに8場面くらいのお話にして、紙芝居として絵を描いたものから抜粋し、あらすじとともにご紹介いたします。

紙芝居その1 「きゅうてんときつね」

出典:『きつねのおっぽ』尾張東部地区広域行政圏協議会民話集/『岩崎誌』岩崎誌編纂委員会

日進市岩崎町神明にある大応寺が舞台のお話。

大応寺の小僧「きゅうてん」がお寺に出没するいたずらぎつねをわなにかけようとしますが、きつねのほうが一枚上手。

わなにかかるどころか、「きゅうてんかかった きゅうてんかかった」と何度もきゅうてんをからかうような声が。きゅうてんはさぞかしくやしかったことでしょう。

大応寺は車通りの多い県道57号線からほど近く、坂を上った高台にあり、雑木林に囲まれた静かな場所です。鳥の声が聞こえ、ガサゴソと生き物の気配がしていて、なるほど、きつね伝説にもうなずいてしまいました。

大応寺の住職に、きつねのお話について聞いてみました。それは「白ぎつね」の話で、かつては上・下巻の本がお寺にあったそうです。長いお話だったのかもしれません。出典の民話集には「白ぎつね」とはありませんし、ごくごく短いストーリーなのですが、その本にはどんなお話が書かれていたのか・・・とても気になって仕方がありません。


紙芝居その2 「ほうろくいど」

出典:『やすらひめ』愛知県小中学校校長会

日進市折戸町宝泉寺が舞台のお話。

飲み水にも農作業にも苦労する水事情の中、苦労して井戸が掘られました。「宝楽井戸」と喜びに満ちた名前のついているこの井戸、お話では和尚さんが「ええ ほうろく ええ ほうろく」と、掘り進める場所を示す声を聞いたとされています。「ほうろく」は素焼きの土器ですから、五穀豊穣を示唆するシンボルということでしょうか。井戸掘りに疲れ果てた和尚さんにとっても、折戸の人々にとっても神の声だったにちがいありません。

この井戸は今も残っているのでしょうか。宝泉寺の住職にお話を聞いてみました。

残念ながら現在はその姿は見られないのですが、駐車場のアスファルトの下に静かに眠っているようです。

こちらが井戸のあった場所です。いかにも、なにか下にありそうな感じがしませんか?

ちょうど光がさしている場所が、井戸のあった辺りです。

井戸は直径が1.2メートル、深さ17メートルほど。湧き出る水の深さは3メートルほどあり、つるべで汲み上げていたのだとか。


「通常は深さ10メートルを超えると酸欠になってしまい、作業は難しいとされているので大変な工事だったのではないか。井戸は構造上もすぐれていて、記録に“こんこんと湧き出た”と記されたほどなので、そのようなお話になって伝えられているのだろう」と、住職は話しておられました。



日進市のむかしばなし2話のご紹介でした。いかがでしたでしょうか。
今後もあれこれと「身近な物語の話題」をお届けしていきたいと思います。

今後ともお付き合いのほどよろしくお願い申し上げます!