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東京23区の名前の由来を探る - 区名に隠された物語

東京23区の地名は、地域の歴史や文化、地理的特徴を反映しており、ひとつひとつが興味深い物語を秘めています。本記事では、東京に住む人や訪れる人がふと気になる「地名の由来」をテーマに、23区それぞれの名前に込められた意味や背景を紐解きます。歴史的エピソードや現代のランドマークも交えながら、東京の新たな魅力を発見してみましょう。


千代田区

皇居、東京駅丸の内駅舎、国会議事堂

由来

かつての江戸城(現在の皇居)の別名「千代田城」に由来します。千代田とは「末永く栄える土地」を意味し、江戸城が長く繁栄するよう願いが込められています。1947年(昭和22年)、麹町区と神田区が合併して新たな区を設立する際に命名されました。

歴史的エピソード

  • 江戸時代には「江戸城下」として城の周囲に武家屋敷が広がり、中心地として栄えました。

  • 明治時代には皇居を中心に行政機関や重要な施設が集まり、現在も日本の政治・経済の中心です。

ランドマーク

  • 皇居: 江戸城の名残を留める象徴的な場所。

  • 国会議事堂: 日本の政治の中心地。

  • 丸の内エリア: 日本経済を牽引するオフィス街。

中央区

日本橋、銀座

由来

中央区の「中央」は、旧東京市の中心に位置することに由来します。また、1947年に京橋区と日本橋区が合併して誕生した区で、「東京の中心地」を象徴する名前として「中央区」が選ばれました。

歴史的エピソード

  • 江戸時代には日本橋を中心とする商業地として発展し、日本橋は五街道の起点として全国に知られていました。

  • 明治以降も商業の中心地としての役割を引き継いでいます。

ランドマーク

  • 日本橋: 五街道の起点であり、商業の象徴。

  • 築地市場跡地: かつての日本の台所として栄えた場所。

  • 銀座: 高級ブランドショップが立ち並ぶ、日本を代表する繁華街。

文京区

東京大学、東京ドーム

由来

1947年(昭和22年)に旧小石川区と旧本郷区が合併した際、両区の特徴である「学問の府」というイメージを反映して名付けられました。旧小石川区役所の職員からの提案と、旧本郷区役所の委員からの提案が一致し、両区の統合交渉委員会で正式に決定されました。

歴史的エピソード

  • 江戸時代、現在の東京大学本郷キャンパスは加賀前田家の江戸屋敷があった場所です。前田家の屋敷は大規模で「加賀百万石」の象徴として知られました。

  • 湯島聖堂は江戸幕府が1690年に創建した学問所で、後の昌平坂学問所の前身。

  • 江戸時代から学問と文化の地として知られ、明治以降も東京大学を中心に教育機関や研究施設が集積しています。

ランドマーク

  • 東京大学本郷キャンパス: 加賀前田家の屋敷跡に位置し、日本を代表する大学。

  • 東京ドーム: 野球やコンサートなどで賑わう日本を代表するイベント施設。

  • 湯島天満宮: 学問の神様として受験生や学生に親しまれる神社。

新宿区

東京都庁、歌舞伎町、ヨドバシカメラ本店

由来

江戸時代に設けられた「内藤新宿」に由来します。元禄11年(1698年)、甲州街道の日本橋から最初の宿場である高井戸までの距離が長く、旅人にとって不便であったため、信州高遠藩主・内藤氏が幕府に返上した屋敷地に新たな宿場が設けられました。これが「内藤新宿」と呼ばれ、「新しい宿」を意味しています。1947年に旧牛込区、旧四谷区、旧淀橋区が合併した際に新宿御苑や新宿駅として知名度のある新宿の名称が採用されました。

歴史的エピソード

  • 江戸時代、甲州街道の宿場町として発展。

  • 明治以降、鉄道の発展により交通の要所として栄える。

ランドマーク

  • 新宿御苑: 内藤家の庭園跡地を基に整備された大規模な庭園。

  • 東京都庁: かつて東京の水供給を担った淀橋浄水場跡地に建設された東京の行政中枢。

  • 新宿駅: 世界有数の利用者数を誇るターミナル駅。

  • 歌舞伎町: 日本最大級の歓楽街。

台東区

上野公園、浅草寺

由来

1947年に旧浅草区、旧下谷区が合併して誕生しました。「台」は上野(下谷区)の高台を、「東」はその東に位置する浅草(浅草区)を指し、区の地勢を表しています。

歴史的エピソード

  • 浅草は江戸時代から商業と娯楽の中心地として栄え、浅草寺をはじめとする名所が多数存在します。

  • 一方、下谷は職人や庶民の町として発展し、寛永寺や上野恩賜公園などの文化施設が集積しています。

ランドマーク

  • 浅草寺: 628年創建の東京都内最古のお寺で、雷門や仲見世通りが有名です。

  • 寛永寺: 1625年創建。徳川将軍家の菩提寺として知られ、上野の文化を象徴します。

  • 上野恩賜公園: 広大な敷地に美術館や動物園があり、桜の名所としても人気です。

  • 東京国立博物館: 日本最古の博物館で、多数の国宝や重要文化財を所蔵しています。

世田谷区

等々力渓谷、二子玉川ライズ、砧公園

由来

世田谷区の名前は、古くからこの地に存在した「世田谷村」に由来します。「瀬戸」からなまった「瀬田→勢田」となり、勢田郷の谷地を区別するため「せたかい」と呼ばれていたものが「世田谷」と表記されるようになったと考えられています。

歴史的エピソード

  • 江戸時代、この地は多摩川の水運を利用した農産物の集積地として栄えました。

  • また、江戸城を防衛するための砦が置かれたこともあり、戦略的にも重要な場所でした。

  • 高度経済成長期に住宅地として急速に開発され、現在ではファミリー層に人気のエリアとなっています。

ランドマーク

  • 砧公園: 緑豊かな大型公園で、広場や散策路があり、地元の人々に親しまれています。

  • 成城学園: 高級住宅地として知られる成城エリアの象徴的な学園。教育と文化の中心です。

  • 二子玉川ライズ: 多摩川沿いに広がる商業施設と住環境が融合したエリアで、人気のショッピングスポット。

  • サザエさんの舞台: 漫画『サザエさん』の舞台として、世田谷区桜新町周辺が描かれています。特に「桜新町商店街」は「サザエさん通り」として知られ、ファンにとって聖地の一つとなっています。

その他の区

港区:昭和22年(1947年)に芝区、麻布区、赤坂区が合併して成立しました。区名は、東京湾に接する「港」のイメージに由来します。
墨田区:昭和22年(1947年)に本所区と向島区が合併して成立し、区名は隅田川に由来。「隅田」は古代に「隅(すみ)」の辺りの水田を意味する地名からきています。
江東区:昭和22年(1947年)に深川区と城東区が合併して成立。区名は、東京湾に面し、隅田川より東側の地域であることから名付けられました。「江」は深川、「東」は城東の意味も含んでいます。
品川区:昭和7年(1932年)に品川町、大崎町、大井町、荏原町、目黒町が合併して成立。名前の由来は旧東海道の宿場町「品川宿」にちなみます。「品川」という地名は、目黒川の古名「しなり川」という説や河川で品おろしをしていたという説などがあります。
目黒区:昭和7年(1932年)に目黒町、碑衾村が合併して成立。「目黒」という地名は、目黒不動尊(瀧泉寺)に由来するとされます。このお寺は江戸五色不動のひとつで、地域の象徴的な存在でした。
大田区:昭和22年(1947年)、旧荏原郡に属していた大森区と蒲田区が合併して誕生。「大田」という名称は、大森の「大」と蒲田の「田」から採られました。地名は旧地名を尊重し、地域の一体感を重視して決定されました。
渋谷区:渋谷川沿いに広がる地形に由来し、一説では湿地や粘土質の土地を意味する「渋」に由来するとされていますが、明確な記録は残されていません。
豊島区:古代にこの地域を支配した豊島氏に由来する。地形や土地の豊かさに由来するとも言われ、「島」は古代では集落や特定の地域を意味していたとも。この地が水源に近く、豊かな土地であったことが地名に反映されたと考えられています。
北区:北豊島郡と南豊島郡の一部が合併したことから「北」の名を冠しました。地理的にも東京市の北部に位置していたため、この名前が採用されました。
荒川区:荒川に由来。古くから使われており、「荒ぶる川」や「荒地を流れる川」を意味するともいわれています。
板橋区:石神井川に板をかけた橋「板橋」に由来します。この橋は江戸時代の中山道の重要な通過点であり、交通の要所として知られていました。
練馬区:一説には、関東ローム層の赤土を練る作業が行われた「練り場」が語源となったとも言われています。また、石神井川流域の低地に多かった「根沼(ねぬま)」が転じたとの説もあります。さらに、奈良時代にこの地域に存在した宿駅「乗潴(のりぬま)」が後に「練馬」へと変化したとの説や、中世に馬を訓練する「ねり馬」から名付けられたとの説も。
足立区:「足立郡」に由来します。「足立」という名称の語源には諸説あり、一説には「葦が茂る地」を意味する「葦立(あしだち)」が転じたものとされています。
葛飾区:古代の「葛飾郡」に由来。一説では「葛(つる性の植物)が生い茂る湿地帯」を意味する「葛篠(かずしき)」が転じたものとされています。
江戸川区:「江戸川」に由来します。この川は、江戸時代に「江戸」とその周辺地域を結ぶ重要な河川であったことから名付けられました。「江戸」は、古くからこの地域が入り江に近い湿地帯であることにちなみ、「入り江の門」の意味を持つとされています。

地名の由来には、その土地に息づく歴史や人々の願いが反映されています。東京23区の多彩な地名を通じて、私たちは地域の成り立ちや文化的な背景を感じ取ることができます。今回の記事では、区そのものの名前に焦点を当てましたが、次回以降は区内の細かな地名、例えば丸の内や大手町、三田や代々木といったエリアにも踏み込んでみる予定です。

シリーズを通じて、地域に込められた思いを探りながら、東京という都市の魅力をさらに深掘りしていきます。日常で何気なく目にする地名の奥に広がる物語に、ぜひ注目してみてください!

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