こどもは高いところが好き

最近のことは、ちっとも頭の記憶に残らなくなってきたけれど、こどもの頃の感覚は、それとは反比例に鮮明に思い出せたりする。

突如思い出した、ままごと遊びの思い出。

私が小学生の頃、近所に住む1つ下の女の子と2つ下の女の子と三人でよく遊んだ。
ままごと遊びやお店やさんごっこは、女の子の遊びとしては定番で、庭の土や石、取り放題の草花、ままごと用のお椀にみずをいれ、春ならフキの茎を5センチくらいに切って、両方の端にカミソリで切り込みを十字に入れて、クルンと丸まるので、それを麺に見立てたりするなど、お料理の真似事をしていた。

そういうとき、庭の一角でやることも多かったけれど、特別感を感じるのは、ちょっと高いところにある場所だった。

ゆりちゃん(仮名)の家には、庭先に門柱が建っていて、大人の胸くらいの高さで、四角い石を積み上げたような作りだった。
その繋ぎ目の目地の凹みに靴の先を突っ込んで、何とかよじ登って天辺に正座して、取ってきた葉っぱや石などを陳列して、2人向き合って、『いらっしゃいませ~』とお店を広げたものだった。

お金はその辺の植木からちぎった葉っぱだった。高いところに座って、ちょっとした店主になったようで、なかなか気分のよいものだった。

かなちゃん(これまた仮名)のおうちは当時温泉も営んでいて、掘削記念の石碑が建っていた。子どもにも手が届く高さの台座だったので、そこに手を掛け、よじ登って、皆で狭いところを恐る恐るひとまわりしたものだった。

あれはできなかできないか、ちょっとしたチャレンジで、落ちるかもしれないという恐怖心と、高いところに登った爽快感が入り交じった感覚だった。

塀の上にも、登れそうと思ったら、取り敢えず登っていた小学生の頃。

手を掛けた時の石の温かなザラザラ感とわいわいこどもらだけで遊んでいた頃をふと思い出す。


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