ウルトラマンリーズ 第十話「居場所めぐり」

第十話 居場所めぐり
火山怪鳥 バードン
暴君怪獣 タイラント 登場

登場人物

新田 光一(22)…保護対象
ルパーツ星人イナムラ…男、センター代表
ペロリンガ星人モギ…男、医者
マノン星人ジョウガサキ…女、戦闘・監視員
ブラック星人シライ…男、分析・開発担当
スチール星人ウエノ…男、戦闘員
ツルク星人ヤマオカ…女、孤児の世話係
グローザ星系人クボ…男、オペレーター
ガルメス人ハイダ…男、諜報
ゴールド星人カワシマ…若い女、雑用
ゾベタイ星人ユリ…若い男、雑用
孤児たち
TVアナウンサー
新田母(声)
ウルトラマンリーズ
バードン
タイラント

◯文化交流センタービル・医務室
カーテンの閉まった部屋。ベッドで横になる新田、目を覚ます。こちらを覗きこむペロリンガ星人モギとマノン星人ジョウガサキが視界に入る。

新田「うおおっ、ちょっ」

モギ「あっ、大丈夫そうですね」

ジョウガサキ、机上の固定電話を取る。

ジョウガサキ「パルパル、カザ、ケルルーモ。ウィエ。ウィエ、ウドースツ、セゲッゾ」

T「もしもし、今起きました、はい、はい、分かりました、失礼します」

新田「あの……」

モギ「あっ、ごめんなさいビックリしました? でも家ん中ぐらい本当の姿でリラックスしてたいですよね、正味、ここにいる誰だって」

新田「いやそうじゃなくてあの」

モギ「え? ああ、我々別に怪しいモンじゃなくて……えーと……」

新田「いやそうじゃなくてあの」

モギ「え? じゃあ何すか」

新田「ここどこですか」

ジョウガサキ「(電話を切る)ここは墨田区ですよ」

新田「墨田区のどこですか」

ジョウガサキ「文化交流センタービルです」

新田「……あなた達、文明がよその文明に手を貸す事を許さないっていう人達でしょう、俺を捕虜にでもしたつもりですか」

モギ「アハハハ……あいつらも名を揚げたなぁ、いい迷惑だ、あのね、僕達は」

ジョウガサキ「あーいいですいいですモギさん、イナムラさんのとこ連れてきますから」

モギ「あほんと、じゃお願い」

ジョウガサキ「はーい、じゃ、新田さん、行きましょうか、付いてきてください」

ジョウガサキ、退室。
新田、後をノロノロ追う。

◯同・オフィス

ジョウガサキ・新田入室。
一番奥の社長イスに座るルパーツ星人イナムラ。その手前でデスクワークをするブラック星人シライ、スチール星人ウエノ、ツルク星人ヤマオカ、グローザ星系人クボ、ガルメス人ハイダ、ゴールド星人カワシマ、ゾベタイ星人ユリ。
ジョウガサキ、まっすぐイナムラの前まで行く。後に続く新田。

ジョウガサキ「代表、こちらが」

イナムラ「ほぉー君が! 写真で見るよりおっきいねぇ」

新田「……」

イナムラ「あっごめんね、私はこの文化交流センターの代表でイナムラといいます。君が倒れてたんで保護させました」

新田「保護したのは僕だけですか」

イナムラ「いや、モブの職員さん達もみんなここに。モブはもう無くなったから」

新田「無くなった?」

イナムラ「というか吸収したと言うか戻ったと言うか」

新田「何でそういう事をする」

イナムラ「いやね、モブに宇宙人や怪獣の情報とか兵器の技術とかあげたの我々なのよ。中原さんが人類の手で地球を守りたいって言うから……でも彼らは失敗した。どうせ無理だから僕が無理言って君をあそこに入れさせたけどそれでも駄目だった。だからこれからは我々が地球を守る。それが我々の仕事です」

新田「じゃあ隊の皆さんは今は」

イナムラ「皆元気してるよ。隊長さんと目のちっちゃい兄ちゃんは結構ひどい状態だったけど、我々なら生きてる限りは元通りに治せるからね。まあこれからも怪獣退治を続けるかどうかってのはそれとは別問題だけどね、彼らは地球人だから……」

新田「ここにいる方々は擬態しとらんのでしょう? あんたやそこの何人かだって人間じゃないのか(カワシマとユリを見て)」

イナムラ「あの子達も私も地球人じゃないよ、でもこれが普通の姿なんだ、そういうの偏見って言うんだよ」

新田「でもじゃあだって何でこういう事すんのさ、あれだけ文明に干渉しないとか言ってたのに急にさ」

イナムラ「……何、何か話噛み合わないと思ったら君もしかして我々を星人の主張と勘違いしてんの?」

新田「何だよ星人の主張って」

イナムラ「だから君が言ってる文明が文明に関わっちゃダメよっていう。あんなアホアホな弱小団体と一緒にしないでよね」

新田「あっ……」

イナムラ「あいつらもホント鬱陶しくてさー、しょっちゅう邪魔してくんのウチらを。何ならウチの職員一人死んでるからね」

新田「あのそれってもしかして」

イナムラ「あーそうそうそうだよ君が世間の味方だって世の中に手っ取り早く教えてやるためにウルトラマンって名前付きで動画を流しちゃえって僕が指示したんだけどさ、そん時の担当者だった。もしかして君、会ったことあった?」

新田「はい……」

イナムラ「そうか……いや、彼には申し訳ない事をしたと思うよ。あいつら、結局他人の邪魔する事しか考えてないからな。彼が亡くなって、流石に潰してやろうかって話になったけどこっちも元々秘密裏にやってた事だから動きづらいし実際問題なかなか忙しくて……そうこうしてる内に我々が手を下すまでも無くなったっていうのはまぁ、結果オーライかも知んないけど」

新田「それってどういう事ですか」

イナムラ「こないだの怪獣大量発生で本部が壊滅したんだよ。いやぁーいい気味だよね」

新田「それはたまたまですか」

イナムラ「もちろん。あ、まだ聞いてない? 結構被害デカかったんだから。それでモブもダメになったんだよ。日本はまだマシだったけどね、君がいたから」

新田「……僕だけじゃなんも出来なかったと思いますよ」

イナムラ「かも知れないですね、当時は。でもここから先は我々がやるから、君ははゆっくり休んでって下さい」

新田「……俺に手伝えって言わないんですか」

イナムラ「うん言わない。我々とは関係がないから。君がモブに配属される以前のように無償で勝手に戦うなら止めはしないけど……」

新田「分かりました。もう帰ります。ありがとうございました」

イナムラ「あでも君家どこだっけ? 立川だったよね?」

新田「……ハイ」

イナムラ「あの辺はもうまるっきりダメだよ」

◯東京都立川市

破壊された市街地。

◯文化交流センタービル・オフィス

イナムラ「ここの部屋貸してあげるよ。別にここの皆はこれまで地球を守ってきた君の事を快くは思ってるしさ、僕も含めてね。あっあと食事もつけるよ、うちの食堂のでよければ。あとシャワーも」

新田「トイレは……」

イナムラ「トイレもあるよ」

◯同・個室(昼→夜→朝)→個室前廊下(朝)

ジョウガサキに案内されて入室する新田。窓から光が射している。

ジョウガサキ「すいません、狭い部屋で」

新田「いえ、そんな、全然、はい」

ジョウガサキ「じゃああの、何かあったらそこの電話でフロントにご連絡下さい」

新田「はい……あ、テレビ見ていいすか」

ジョウガサキ「いいですけど……あ」

新田、テレビをつける。真っ青の画面。ザッピングしているとようやく一局映るチャンネルを見つける。

TVアナウンサー「先週、十日の日本時間朝五時から正午までに地球上に出現した怪獣は現在までに確認されているだけで八十一ヶ国でのべ百十体、うち国内には三体が出現しています。この三体を含むほとんどの怪獣が各国の軍・準軍事組織・市民等により駆除されましたが、被害は甚大で……」

ジョウガサキ「海外はここより大変な事になってますよ。怪獣一体倒すのに大量の犠牲が出て。中枢をやられて機能しなくなった国もいっぱいあります。無事だった国がそういうダメになった国を吸収し始めてます。世の中が変わっていきます」

数分後、ベッドに座る新田。ジョウガサキは退室している。テレビ消えている。新田、腕に装着したプランジコンバーターを眺める。

新田「……ねぇ」

沈黙。
固定電話をチラ見、受話器を取ろうとしてやっぱやめる。しばらくボーッとしているがハッとしてポケットを探る。ケータイを出して画面を表示する。電源が残り五%になっている。新田母からの着信履歴が大量にある。

新田「うわっ」

新田、とりあえずメールを送る。ドアをノックする音。

シライ(声)「失礼しますー」

新田「はいー」

シライ、食事の乗ったお盆を持って入室。

シライ「お食事お持ちしましたー」

新田「あ、そういえばなんも食べてないわ、ありがとうございます」

シライ、お盆をテーブルに置く。

シライ「あ、あとワタクシブラック星人のシライと申します、宜しくお願いいたします」

新田「あ、どうも」

シライ「ではあの、失礼しますー、あっ、お食べになったら外に出しといて下さい回収するんで」

新田「あ、どうも」

シライ退室。
夜。
食器が回収されている。新田、ベッドではなく床に寝転がっている。テーブル上にマジックで「文セン」と書かれた充電器に繋がっているケータイをチラ見する。

ウエノ(声)「失礼しますー」

新田「はいー」

ウエノ(声)「夕食お持ちしましたー」

新田「はーい」

ウエノ、食事の乗ったお盆を持って入室。

新田「どうもー」

ウエノ「あの、ワタクシ、スチール星人のウエノと申します宜しくお願いいたしますー」

新田「あどうもー、ええと、ウエノさん?」

ウエノ「はい」

新田「あなた達のその名前はさ、こっちでの名前なんでしょ?」

ウエノ「はいー、こちらで生活するため」

新田「じゃあホントの名前は別にあるんだ?」

ウエノ「ここの職員の多くはそうでございますー。それか名前という概念自体が無いか」

一時間後、ウエノ退室している。食器が回収されている。

新田「そういえば俺あの人の名前も知らないわ……」

ヤマオカ(声)「失礼します」

新田「はーい」

ヤマオカ(声)「お布団敷きにあがりました」

新田「はーい」

ヤマオカ、ドアを開ける。廊下に布団等が乗ったワゴンが停めてある。ヤマオカ、布団を部屋に運ぶ。しばし沈黙。

新田「あのすいません」

ヤマオカ「はい?」

新田「これは当番制か何かなんですか」

ヤマオカ「職員全体でローテする予定です」

新田「あ、そうですか……あの、次から自分でやるんで、調理場とリネン室的な所と洗濯スペースだけ教えて貰っていいですか」

ヤマオカ「いえ、我々でやります。そういう事になってるんで。それから明日の朝食は一階大ホールになるんで、七時半から九時の間に来て下さい。では失礼します」

ヤマオカ退室。
翌朝。起床した新田、廊下に出る。部屋のドアノブに『部屋を出るときはこれを裏返して下さい。お布団をお畳みします』と汚い字で書かれた札が掛かっている。新田、凝視。

◯同・食堂

食事する多くの宇宙人。イナムラはいない。

新田「大ホールって……食堂じゃん」

新田、宇宙人の中に混じって人間の子供が何人かいるのを不思議そうに見る。
振り返って食券の券売機を見るとボタンが全て宇宙語になっていて読めない。
モギ、食堂に入り立ち尽くす新田をスルーして食券を買ってから新田を見る。

モギ「……読めないの?」

新田、頷く。

モギ「今は……(ボタンを指差しながら)サバの塩焼き定食と豚汁定食とざるうどんと玉子サンドな。あ、うどんはあんま美味しくないよ」

新田「……どうも」

一分後、サバの塩焼き定食を買った新田、モギが座っているテーブルの向かいに座る。

モギ「おっ、ごめんね、ここ一応公用語は日本語なんだけどさ、今のアレみたいに今一徹底されてなくてさ」

新田「いえ……あの」

モギ「何」

新田「あの偉い感じの人はどちらに」

モギ「ああ……イナムラさんはこの時間はあんまりこっちいないよ、営業やってるから」

新田「はあ……ここの人はどれくらいご存知ですか、ウルトラマンのこと」

モギ「(新田を見て)誰も当事者よりは知らんよ」

新田「俺あの人の事何も知らないんです」

◯同・医務室

頭に電極を付け、ベッドに横になる新田、その横でパソコンを操作するモギ。

モギ「俺が見た限り君は君一人だ。他の意識が眠ってるって事は無いね」

新田「あの人は何だったんでしょうか」

モギ「何だったってどういう意味」

新田「何者だったのかっていう」

モギ「君がどこまで知ってるのか知らないから俺が知ってる事を全部言うと、あれはリーズ星に生息してる不定形憑依生命体だよ。そのままじゃ煮物にするくらいしか使い道が無いが、他の生き物に取り憑くとその力を何倍にも増幅させる効果がある。まあストレスに弱くてすぐ死んじゃうから向こうから来ない限りは軍事利用もできないがね……て言うか君に取り憑いたんだよな?」

新田「……そうなんですけど、俺はあの姿しか見た事ないです。そういえば元々別の人に憑いてたみたいな事言ってました」

モギ「ああ、そうなんだ二重に……でもじゃあこないだの時は君一人で?」

新田「はい、力を俺にくれました。でも俺はあの人に言われて戦いに協力してただけなんです。これから俺は……」

モギ「イナムラさんに言われなかったか? 地球防衛の役目は我々が引き継いだ。嫌なら何もしなければいい」

ビル内に小さめの音量で警報が鳴る。

クボ(声)「シブヤクェヌォ、メースト、ヌバーイェデデ!」

新田「何ですか」

モギ「『渋谷区に怪獣二体出現』。一般人は避難してな」

新田、退室。

◯同・オフィス

パソコンを操作するシライ、クボ、ハイダ、カワシマ、ユリ。入り口付近でボーッと立つ新田。ホワイトボードにプロジェクターで投影されたモニターに映る、渋谷で暴れるバードンとタイラント。

クボ「(インカムに)バードン、タイラントは共に中野・杉並区方面に進行中」

イナムラ入室。

イナムラ「遅くなった。ウエノ君とジョウガサキ君は?」

ハイダ「あと十秒で接触します」

イナムラ「やっぱり余波もデカいな……あっ新田君、来てたんだね。避難してても良かったのに」

新田「……」

イナムラ「まあ正直ここはそこらの避難所よりよっぽど安全だけどね、せっかくだからここで見て行きな。我々全然強いから」

◯渋谷区・市街地

上空で今まで透明だった宇宙船『エンモタケナワ』がカモフラージュを解除して可視化。
中から巨大化したウエノとジョウガサキが地上に降り立ちバードン、タイラントと戦闘開始。
ウエノ、バードンの嘴を押さえ付けて至近距離でベルトから光線発射、直撃。ジョウガサキ、タイラントが射出した鞭をキャッチして引きちぎり、振り回して頭部に当てる。

◯文化交流センター・オフィス

イナムラ「一匹ずつやれ、その方が早いから」

◯渋谷区・市街地

ウエノ、バードンを蹴って距離を取り、頭部から光線発射。火炎で相殺されるがジョウガサキが光弾で加勢、押し勝つ。バードン爆散。ウエノとジョウガサキ、タイラントの方に振り向く。

◯文化交流センター・オフィス→廊下

戦闘を見ていた新田、廊下に飛び出る。イナムラ、チラ見する。廊下に出た新田、窓を開けて変身。光になって窓から飛んでいく。

◯渋谷区・市街地

タイラントに詰め寄るウエノとジョウガサキ。両者の間に割って入るように降り立つウルトラマンリーズ。

ジョウガサキ「何しに来たんですか? 仕事の邪魔になります。帰って下さい」

リーズ、新田の声で話す(以後常に)。

リーズ「あなた方宇宙人が仕事で地球を守ってるのに俺が何もしないでいるのは許されないんですよ。俺はウルトラマンで、地球人なんだ!」

リーズ、タイラントに光弾発射。腹で吸収され、代わりに冷気を噴射される。直撃。仰向けに倒れる。

ジョウガサキ「手伝いましょうか?」

リーズ「結構です」

リーズ、起き上がってタイラントに突撃、光る拳骨で頭を殴り、両腕を押さえ付けて頭に頭突き。タイラント倒れる。

◯文化交流センタービル・オフィス

イナムラ「君はこれからはどうすんの」

新田「もう少しここに居さして下さい、仕事手伝うんで。お願いします」

イナムラ「それはいい。じゃあ怪獣が出たら?」

新田「俺を使って下さい」

イナムラ「……いいよ、分かった」

◯同・個室

新田、新田母に電話している。

新田「うん、そう、こないだのアレで何ともなかったこっちに色々仕事が押し付けられてきてさー、うんだからすげぇ忙しかったんだって。うん。こっちはホント何ともなかったから。うん、はいごめんごめん、じゃ切るよ」

新田母(声)「ちょい待ち、たまには帰ってきなさい。お父さんも喜ぶよ多分」

新田「あー、はい、じゃ」

新田、電話切る。

(続く)

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